03 学校にも通わせてもらえず勉強道具も買ってもらえなかった子供に向ける言葉じゃないと思う
ティファも持っているがな、シンプルなパンはなかったので胃がもたれてしまうだろうと言いながら、出してくれた。ありがとうと受け取った。
パンはこの世界と比べるとあまりにも違う。柔らかさだとか。おいしさも。まんぷくになったので彼と共に自宅へ。
水責めをいつしようか、どうしようか。あー、楽しみだ。ずっとずっとじわじわ、いきたい。そもそも平民のくせに愛人ってなに?
しかも、引き取るって。赤ん坊のときのことは覚えてないけど、引き取って、ハッピーエンドになるわけないよね。呆れるにも程がある。引き取っておいて、無碍にするという矛盾。
「どこに行っていたの」
家に入るとティファに話しかけて来たのはこの家の本妻の娘。名前は、えーと、思い出せない。呼んだことがないせいだ。
ロゼロとは会話出来る。テレパシー方法で以心伝心可能だから、喋らずともいける。
((先輩……この女が私の血縁者で半分血のつながっている姉です))
((この女、魂汚れてるにも程があるだろ))
「私にも見える……」
小声でボソッと言い、姉に儀式をしてきたのだと必要最低限のことを言う。言わずにいたら蹴られるだろうし。
「ああ、今日がその日だったの」
令嬢でもない家庭なのでおほほ、とも言わないどこにでもいそうな絵に描いたような人。でも、嫌悪だけはご丁寧に向けてくる。
「ということは、あんた。大人になったの?」
「恐らく」
「そんなことも分かんないの?馬鹿だわ」
学校にも通わせてもらえず勉強道具も買ってもらえなかった子供に向ける言葉じゃないと思うけど。呆れるし、怒りも湧く。
((先輩、先ずは手始めにこの人をやります))
先輩は頷く。
「ID確認。対象者は目の前の女。ステータス改変」
ティファの目にはこの姉のステータスが現れて編集ボタンが付いている。編集項目があるってことは、変更出来るということ。口元をグッと上げ、ボタン操作する。
その間、姉はなにも言わなくなったティファの横を通り過ぎて居なくなる。彼女が居なくなったところで、このステータスは消滅しない。手元に残り続けている。
「この世界、まだ妖精とか居たんですね?」
「魔力があるなら生まれる可能性は高い種族だからな」
「もしかして、愛し子っていますかね」
「いるらしい」
ロゼロはなにか薄いものを手に読み耽っている。この世界の攻略本というか、説明書、徹底大解剖といった類の読み物らしい。
「どこにあったのですか?」
「管理者権限の亜空間」
「いけたんですか?居ないから鍵あけっぱなしだったとか」
流石に廃れすぎているような。
「途中で飽きて投げ捨てたって雰囲気がしたぞ。お前も後々連れてってやる」
「廃れていたら、それは廃墟というものに該当してるんじゃ」
オンボロを想像して身震い。しかし、ちょくちょく掃除しているらしく綺麗になりつつあるとのこと。
聞いてみてみれば、どうやら彼が掃除をしているのではなく、違う手伝い代行者を呼んでやってもらっているらしい。そんな代行、あったなぁ。
ティファはそもそもあまり、家に無頓着で、全く手入れをしなかった。今なら帰って絶対に、将来にかけて大切にする。その自信がある。
愛おしんで、家でしっかり暮らす。ただ、下から上に戻るのは苦難が付きまとうもの。特にロゼロが居なければ可能性はゼロだったろう。
姉のステータスをどう編集するのかというと、ステータス欄に【転びやすくなる】【不運】【不幸】などといった祝福を増やす。上位世界では、基本的にこんなことをしたことはないが、ここでは手出しできるみたい。
多分、管理者が居ないのが原因だ。セキュリティアップデートも、随分されてないだろうから。
「ガタガタだな。で、守備は」
「ばっちりです」
編集完了。
「これで、バットステータスができるということが分かりました。やはり、余裕ですね」
「一安心だな。お前もこれからやれる計画をちゃんと練ろよ。そういうきちんとしたことがあってこそ、出世できるんだからな」
「私に出世の芽とかあるんですか?」
社員ID、生きてるだろと言われて頷くが、どうやって出世するんだろう。ロゼロとて、出世しているのをみているが、ここからでは無理なんじゃないかなぁ。
「そも、出世して何かメリット、特典、あるんですか?」
「そこも、あやふやなんだ」
「なのに先輩は、出世オファー受けてるんですね!?」
あやふやなのに上に上がっていくのは、怖くないか?全く興味なかったから、出世する必要性を殆ど感じない。
「私も出世できるのかな?できないような……」
「いいじゃねェか。時々送られてくる温泉チケットが4回分あるから使えるぞ」
チケットも特典なんだ。聞いていると、受け取れるものは毎回違う。
「結構もらってますね」
「お前が出社してると思ったらついついおれも出社しちまうから、なかなか消費できん」
「釣られて行っちゃうことありますよねぇ。私も女の先輩に買うからって言われて、同じ雑誌とか買っちゃいます」
「ちょっと違うがな」
「え?どこら辺がです?」
「おれはお前がヘマしないか気になってきてた。でも、結局なにも出来ずに終わったけどな」
寂しそうな瞳で告げられて、ウッとなる。
「ほんとすみません。これからは好きなだけ居てください」
そう言った瞬間、男の顔が見たことのない表情をし、笑った。
「その言葉、忘れるなよ」
「はい。それはもう」
「まぁ、赤い糸のアイテムもこうして使ったからな」
「そうですね。擬似夫婦ですね」
「なんでもいい、肩書きなんて。それに、赤い糸をつけていれば身内枠になるから温泉チケット使えるぞ。適用範囲内になる」
「えっ、まじですか。そのチケット高級なとこなんですか」
「いや、知らん」
先輩がチケットを取り出す。




