第117話 選んだ未来
金属の擦れる音が聞こえた直後、野営地の奥にいた男が剣を抜いた。
「もういい! やっちまえ!」
男が怒鳴ると、近くにいた数人も武器を構えた。ダリオが何かを叫んでいたけれど、すでに興奮した男たちの耳には届いていないらしい。
「……仕方ないな」
隣でタクマが小さく呟いた。
次の瞬間、正面から斬りかかってきた男の剣が弾き飛ばされ、その身体が地面に転がった。
「ぐあっ!」
タクマは倒れた男の腕を押さえて動きを封じると、すぐに次の相手へ向き直った。横から飛びかかってきた男の攻撃をかわし、足を払って地面に倒す。そのまま背中を押さえつけられた男は、情けない声を上げた。
「いでででっ! 腕が折れる!」
「だったら暴れるなよ」
……あれ?
私は思わずタクマを見た。
別に、彼が乱暴なことをしているわけではない。相手が武器を抜いた以上、抵抗できないように取り押さえるのは当然だし、どちらの男にも大きな怪我はなさそうだった。
ただ、何というか、いつもより少しだけ容赦がない気がする。
「リカ、右!」
「……あ、うん!」
タクマの声で我に返ると、右側から回り込もうとしていた男たちへ手を向けた。足元の地面から蔦を伸ばして二人まとめて拘束すると、男たちは驚いた声を上げながら転倒した。
「な、何だこりゃ!」
「動かないでね。抵抗しなければ怪我はしないから」
そう告げながら、別の方向へ視線を向ける。
シエラは野営地の奥から飛び出してきた男をあっさり取り押さえていたし、コンラートは警備隊員たちと連携し、逃げ道を塞ぎながら残りの男たちを制圧していた。
ヴィクターも剣を抜いていたけれど、無闇に斬りつけることはせず、相手の武器を落として拘束するよう指示を出している。
戦いと呼ぶには、あまりにも一方的だった。
私たちはこれまで、魔物の群れや軍の精鋭部隊を相手にしてきた。タクマに至っては、つい先日まで戦争に関わる依頼をこなしていたのだ。森に潜んでいた武装集団が相手では、実力の差が大きすぎる。
やがて、最後まで抵抗していた男がコンラートに武器を叩き落とされ、地面に膝をついた。
「……全員、武器を捨てろ。これ以上の抵抗は無意味だ」
コンラートの声が野営地に響く。
男たちは周囲を見回し、次々と武器を手放した。
始まってから、ほんの数分だったと思う。
私は拘束した男たちを警備隊へ引き渡しながら、改めて周囲を確認した。幸い、こちらに怪我人はいないようだった。
……それにしても。
私はタクマへ目を向けた。
彼は最後に倒した男の腕を押さえたまま、警備隊員が来るのを待っている。
普段なら、もう少し相手に声をかける気がするのだけれど。
何だか今日は、少しだけ機嫌が悪そうだった。
*
「……くそっ!」
戦闘が終わりかけた頃、ダリオは部下たちを置いて野営地の奥へ逃げ出そうとしていた。
けれど、すぐにタクマが気づいた。
「……おい、待てよ」
タクマは拘束した男を警備隊員へ任せると、ダリオの後を追った。
ダリオは振り返り、腰の短剣へ手を伸ばしたが、それを抜くより先にタクマが距離を詰めた。手首を押さえられ、身体をひねられたダリオは、そのまま地面に押し倒される。
「ぐあっ! おい、痛えだろ!」
「暴れるからだろ」
「離せ! くそっ、離しやがれ!」
「離したら逃げるだろ」
タクマは淡々と答えながら、ダリオの腕を背中側へ回して押さえつけた。
私は少し離れた場所から、その様子を見ていた。
ダリオが抵抗するたびに、タクマは必要なだけ力を加えて動きを封じている。無茶なことはしていないけれど、相手の文句を聞いてやるつもりもないらしい。
「……てめえ、何なんだよ!」
「さっき名乗っただろ。タクマだよ」
「そういうことじゃねえ!」
ダリオは地面に頬を押しつけられたまま、怒鳴った。
「……何だよ。昔の男がそんなに気に入らねえのか?」
その言葉に、私は思わず息を呑んだ。
タクマは一瞬だけ動きを止めたけれど、すぐにダリオの腕を押さえ直した。
「……まあ、気に入る理由はないな」
「……何?」
「リカが信用してたのに、それを裏切ったんだろ。俺がいい顔すると思うか?」
ダリオは何か言い返そうとしたが、タクマはそれ以上取り合わなかった。
「ほら、もう抵抗するな。怪我するぞ」
「……くそっ!」
やがて警備隊員が駆けつけ、ダリオの両手を拘束した。
タクマは彼を引き渡すと、何事もなかったようにこちらへ戻ってきた。
「……リカ、大丈夫か?」
「……うん」
私は頷いた。
けれど、何だか胸の奥が落ち着かなかった。
タクマがダリオに腹を立てていたことは、さっきの言葉で分かった。
彼は、私が昔ダリオと付き合っていたことを責めたことなんて一度もない。むしろ、初めて話したときも、私が思っていた以上にあっさり受け止めてくれた。
それなのに、実際に本人を目の前にすると、少しだけ違ったらしい。
……何だろう。
嬉しいと思ってしまうのは、ちょっと意地悪なのだろうか。
*
野営地の制圧が終わると、ヴィクターとコンラートを中心に捜索が始まった。
小屋や天幕の中からは、食料や日用品に混じって、工具や金属製の部品がいくつも見つかった。中には、開拓地へ運ぶ予定だった物資と同じ種類のものもある。
「……これですね」
ヴィクターが木箱の一つを指さした。
箱には輸送時の識別印が残っており、積荷の記録とも一致していた。
さらに、捕らえられた男たちへの聞き取りを進めると、四日前の補給便襲撃に参加した者がいることも分かった。
最初は誰も口を開こうとしなかったが、奪った物資が見つかってしまった以上、言い逃れは難しかったらしい。
「……頭領に言われて、荷車を止めただけだ」
男の一人が、観念したように答えた。
「道に木を倒して、護衛が混乱したところを襲った。俺たちは、荷物を運んだだけだ」
「……おい! 余計なこと言うんじゃねえ!」
少し離れた場所で拘束されていたダリオが怒鳴った。
けれど、男はもう彼の方を見ようとしなかった。
ヴィクターは男の証言を記録させ、ほかの構成員にも順番に事情を確認していく。
どうやら、ダリオたちはこの森を通る荷車を狙い、食料や道具を奪って暮らしていたらしい。開拓地への補給便も、その標的になったのだろう。
私は、積み上げられた工具箱を眺めた。
これらは、開拓地で働く人たちが使うはずだったものだ。
建物を建て、道を整え、畑を作るために必要な道具。それを奪われたことで、作業が止まってしまった場所もある。
しかも、護衛の人たちは怪我をしていた。
単なる物盗りでは済まされない。
「……捕縛した者たちは、開拓地へ連行します」
ヴィクターが私たちへ説明した。
「物資も回収し、オリヴァー様とローレンス様へ報告します。その後、ハーグレイヴ領へ移送する手配を進めることになるでしょう」
「……分かったわ」
私は頷いた。
ダリオはまだ何かを叫んでいたけれど、もう聞く気にはならなかった。
五年前、私は彼に謝ってほしかった。
自分が悪かったと認めてほしかったし、どうして私を騙したのか、ちゃんと説明してほしかった。
でも、今はもう、その答えを求めていない。
昔、彼を好きだったことは事実だ。
その気持ちまで否定するつもりはないし、あの頃の自分を馬鹿だったと思いたくもない。
けれど、今の彼が何をしたのかは、きちんと裁かれなければならない。
それは私との関係とは別の話だった。
「……リカ」
タクマが隣へ来た。
「大丈夫か?」
「……うん。大丈夫」
私は彼を見上げて、小さく笑った。
「ありがとう、タクマ」
「……何が?」
「色々と、ね」
タクマは不思議そうな顔をしたけれど、それ以上は尋ねてこなかった。
私は、警備隊に連れていかれるダリオを一度だけ振り返った。
彼は最後まで不満そうな顔をしていた。
けれど、もう私の方を見ることはなかった。
……さようなら、ダリオ。
心の中でそう告げて、私はタクマと一緒に歩き出した。
ダリオたちはその後、開拓地の警備隊へ引き渡され、ハーグレイヴ領へ移送されることになった。
そして、彼が再び私の前に現れることはなかった。
*
開拓地へ戻った頃には、すっかり日が暮れていた。
捕縛した男たちの収容や回収した物資の確認など、警備隊はまだ忙しそうだったけれど、私たちはヴィクターから休むように言われた。
とりあえず、これで補給便を襲っていた盗賊たちの問題は解決したことになる。
もちろん、森の中に危険がなくなったわけではない。魔物もいるし、ほかにも野盗が潜んでいる可能性はある。
それでも、開拓地のすぐ近くにいた武装集団を取り除けたのは、大きな前進だった。
共同炊事場で夕食を済ませたあと、私はタクマと並んで歩いていた。
夜の開拓地には、まだあちこちに明かりが灯っている。
大型天幕の周囲では開拓民たちが談笑しており、少し離れた場所では警備隊が交代の準備をしていた。建設途中の建物も多く、夜になっても木材の匂いが漂っている。
開拓が始まってから、もう二十日以上が経った。
最初は何もなかった場所に、少しずつ人の暮らしが生まれている。
「……ねえ、タクマ」
「ん?」
「今日、ちょっと怒ってた?」
私が尋ねると、タクマは一瞬だけ足を止めた。
「……分かった?」
「うん。いつもより、ちょっと容赦なかったから」
タクマは困ったように笑った。
「……そんなに違ったかな」
「違ったよ。普段なら、もう少し優しく取り押さえるでしょ?」
「いや、あいつら武器持ってたしな」
「それはそうだけど」
私はじっと彼の顔を見た。
タクマはしばらく視線を逸らしていたけれど、やがて観念したように息を吐いた。
「……まあ、ちょっとはイラッとしたかな」
「……ふふっ」
「何だよ」
「ううん。何でもない」
「絶対何か思ってるだろ」
私は笑いながら、タクマの腕に自分の腕を絡めた。
「……でも、嬉しかったよ」
「……何が?」
「私のために怒ってくれたこと」
タクマは少しだけ照れくさそうな顔をした。
「別に、格好つけたつもりじゃないんだけどな」
「分かってるよ」
私は彼の腕に頬を寄せた。
タクマは、私が昔ダリオを好きだったことを責めない。
あの頃の私が間違っていたとも言わない。
それでも、私が裏切られたことには腹を立ててくれる。
何だか、それがとても嬉しかった。
「……まあ、元彼ってのも、ちょっとだけ気になったけど」
タクマがぽつりと付け加えた。
私は思わず顔を上げた。
「……え?」
「いや、だから。ちょっとだけな」
「……ふふっ」
「だから何だよ、その笑い方」
「……タクマも、嫉妬するんだね」
「そりゃ、するだろ」
あまりにもあっさり言われたので、今度は私の方が驚いてしまった。
タクマは少し笑っている。
「俺だって、そんなにできた人間じゃないからな」
「……そうなんだ」
「そうなんだよ」
私は彼の腕を抱きしめ直した。
胸の奥が、じんわりと温かくなっていく。
……困ったな。
今日のタクマ、何だかいつもより格好よく見える。
*
開拓地での生活には、色々と不便なことがある。
水を汲むのにも順番があるし、食事は基本的に共同炊事場で用意される。建物もまだ十分ではなく、多くの開拓民が大型天幕や仮設の宿舎で寝泊まりしていた。
私たちも例外ではない。
冒険者用の共同天幕には、ほかの冒険者たちも一緒に寝ている。タクマとは隣同士の寝床を使っているけれど、すぐ近くには別の人がいるし、夜になれば誰かの寝息が聞こえてくる。
ノヴァグラードの森の家で暮らしていた頃とは、大違いだった。
あの家なら、仕事が終われば二人きりになれた。
食事を作って、一緒に食べて、のんびり話をして、それから……。
……うん。
そういう時間も、ちゃんとあった。
でも、開拓地へ来てからは、朝から晩まで仕事ばかりだ。疲れて天幕へ戻れば、周囲にはほかの冒険者たちがいる。
手を繋ぐくらいならできるけれど、それ以上はさすがに難しい。
……というか、無理だ。
私はタクマの横顔を見上げた。
今日の彼は、何だかいつもより頼もしく見える。
しかも、私の元恋人に少し嫉妬していたことまで分かってしまった。
そんなことを考えていると、急に二人きりになりたくなってきた。
「……ねえ、タクマ」
「ん?」
「……ちょっと、散歩しない?」
「散歩?」
「うん。少しだけ」
タクマは不思議そうな顔をしたけれど、すぐに頷いた。
「いいけど、どこまで行くんだ?」
「……ちょっと、静かなところ」
私は彼の腕を引っ張った。
開拓地の外れには、まだ伐採されていない森が広がっている。もちろん、夜の森が危険なことくらい分かっているし、無闇に奥へ入るつもりもない。
警備の範囲から大きく離れない場所を選び、周囲に魔物の気配がないことを確かめながら歩いていく。
やがて、開拓地の明かりが木々の間からわずかに見える程度の場所まで来ると、私は足を止めた。
「……ここなら、いいかな」
タクマが周囲を見回す。
「……何が?」
私は彼を見上げた。
「……分かってるくせに」
タクマは一瞬だけ目を瞬かせ、それから小さく笑った。
「……なるほど」
「……もう」
私は少しだけ頬を膨らませた。
せっかく勇気を出して誘ったのに、何だか余裕そうなのが悔しい。
「……私たち、最近ずっと忙しかったでしょ」
「そうだな。開拓が始まってから、まともに休めてないし」
「……二人きりになる時間も、なかったし」
タクマは私の顔を見て、優しく笑った。
「……それで、こんなところまで連れてきたのか?」
「……だって、ほかに場所がないんだもん」
私は彼の服を掴んだ。
夜の森は静かだった。
遠くから虫の声が聞こえ、木々の間を吹き抜ける風が頬を撫でていく。開拓地の明かりは遠く、周囲には私たち以外の気配もない。
……うん。
悪くない。
むしろ、ちょっといい雰囲気かもしれない。
「……こんなシチュエーションだって、いいでしょ?」
私が尋ねると、タクマは少し笑った。
「……まあ、悪くないな」
そう言って、私をそっと抱き寄せる。
久しぶりに感じる彼の温もりに、私は思わず目を閉じた。
タクマの腕が背中へ回り、私は彼の胸に顔を埋める。
……落ち着く。
やっぱり、こうしている時間が好きだ。
私は顔を上げ、タクマの唇にそっと口づけた。
彼も応えてくれる。
最初は軽く触れるだけだった唇が、もう一度重なり、私は自然と彼の首へ腕を回していた。
どれくらい、こうしていなかっただろう。
毎日一緒にいるのに、こんな時間がずっと欲しかった。
「……ねえ、タクマ」
「……ん?」
私は彼の胸元を掴んだまま、小さく囁いた。
「……私、もう我慢できないよ。タクマ……」
タクマは少しだけ目を見開いたあと、優しく笑った。
「……リカ」
彼の手が私の頬に触れる。
私はもう一度目を閉じ、彼の顔が近づいてくるのを待った。
そのときだった。
「ひゃっ!」
突然、背後の茂みから小さな悲鳴が聞こえた。
続いて、ガサガサッと枝葉が擦れる音が響く。
「……えっ!?」
私は慌ててタクマから離れた。
タクマもすぐに身体を起こし、音のした方へ顔を向ける。
「……誰だ!?」
「ま、待ってください! 魔法は使わないで!」
茂みの向こうから、聞き覚えのある声がした。
私は思わず目を瞬かせた。
「……え?」
枝をかき分けるようにして現れたのは、ユリウスだった。
しかも、何だか妙に慌てている。
服の襟元は乱れ、髪も少し崩れていた。
「……ユリウス?」
「……あ、あの、その……」
ユリウスは真っ赤な顔で口ごもっている。
すると、その後ろからもう一人、そろそろと姿を現した。
「……す、すみません……」
ミレイユだった。
彼女も顔を真っ赤にしており、慌てて服の前を整えている。
私は二人を交互に見た。
ユリウス。
ミレイユ。
乱れた服。
真っ赤な顔。
そして、こんな夜更けの森。
……え?
……ええっ!?
「……ちょ、ちょっと! 二人とも、何してたの!?」
私が叫ぶと、ユリウスはさらに顔を赤くした。
「……そ、それは、その……」
「……ご、ごめんなさい……」
ミレイユは消え入りそうな声で謝っている。
私は思わずタクマを見た。
タクマも状況を理解したらしく、口元を押さえている。
……ちょっと。
笑わないでよ!
「……あの、実は……」
ユリウスがようやく口を開いた。
「僕たち、先にここへ来ていたんです」
「……先に?」
「はい。あの、二人で少し……その、話をしていて……」
話。
……話、ね。
私は二人の格好をもう一度見た。
どう見ても、ただ話をしていただけには見えない。
「……それで、リカさんたちが来たので、慌てて隠れたんですけど……」
「……けど?」
「……その、声をかけるタイミングがなくて……」
ユリウスは俯いた。
ミレイユも、隣で小さく頷いている。
私は、ゆっくりと状況を理解した。
つまり。
この二人は、私たちより先にここへ来ていた。
そこで、私とタクマが現れた。
慌てて茂みに隠れたけれど、私たちがいい雰囲気になり始めたので、出るに出られなくなった。
……ということは。
「……ちょ、ちょっと待って」
私は自分の顔が熱くなるのを感じた。
「……じゃあ、さっきの話、全部聞いてたの!?」
ユリウスは、申し訳なさそうに頷いた。
「……す、すみません……」
「……っ!」
私は両手で顔を覆った。
……嘘でしょ。
嘘でしょ!?
私、何て言った!?
こんなシチュエーションだっていいでしょ、とか。
もう我慢できない、とか。
……全部!?
「わ、忘れて! 今すぐ全部忘れて!」
「……は、はい!」
「……ご、ごめんなさい……!」
ユリウスとミレイユが揃って頭を下げる。
私はもう、どうしていいか分からなかった。
隣を見ると、タクマが肩を震わせている。
「……タクマ!」
「……いや、ごめん。ちょっと……」
「笑わないでよ!」
「……だって、まさか先客がいるとは……」
とうとうタクマが笑い出した。
私は彼の腕を軽く叩いた。
「もう! タクマまで!」
ユリウスとミレイユは、ますます小さくなっている。
……ああ、もう。
何なのよ、今日は!
五年ぶりに元恋人と再会して、盗賊団を捕まえて、ようやく二人きりになれたと思ったら、今度は知り合いの逢引現場に鉢合わせるなんて。
しかも、よりによって私たちの方が後から来たらしい。
……ということは、邪魔したのは私たちの方なの?
いや、でも!
だったら最初に声をかけてくれればよかったのに!
「……リカ」
タクマが笑いを堪えながら声をかけてきた。
「……とりあえず、場所を変えるか?」
「……もう帰る!!」
私は叫んだ。
ユリウスとミレイユが、また揃って頭を下げる。
タクマはとうとう我慢できなくなったらしく、声を上げて笑い始めた。
私はそんな彼を恨めしそうに睨みながら、開拓地の方へ歩き出した。
……もう。
せっかく、いい雰囲気だったのに。
開拓地の夜は、どうやら私が思っていた以上に賑やからしい。




