第105話 若き代官
ノヴァグラードを出発してから、数日が過ぎた。
最初の一日は何かと慌ただしかった開拓団の旅も、日を重ねるにつれて少しずつ落ち着いてきていた。荷馬車の車輪が石を噛んだり、馬の機嫌が悪くなったりといった小さな問題は相変わらず起きるものの、そのたびに隊列全体が混乱するようなことはなくなっている。
冒険者が偵察に出るときは警備隊に行き先を伝え、荷馬車に問題が起きれば近くの者が後方へ知らせる。出発初日に決めた取り決めも、今ではすっかり定着していた。そんな当たり前の連絡ひとつが、百人を超える集団を動かすうえでは思いのほか役に立つらしい。
「ようやく慣れてきたって感じだね」
隣を歩くタクマにそう言うと、彼は前方の荷馬車を眺めながら頷いた。
「そうだな。最初はどうなることかと思ったけど、みんな自分の仕事が分かってきたんじゃないか?」
「タクマもずいぶん忙しそうだったけど」
「まあ、荷物のことを聞かれたり、警備の人に伝言を頼まれたりな。別に俺じゃなくてもいい仕事なんだけどさ」
「でも、タクマに聞くと話が早いんだよ」
私が笑うと、彼は少し困ったような顔をした。
「それ、あんまり嬉しくないな。仕事が増えるやつだろ」
「頼りにされてるってことじゃない?」
「そういう言い方をされると断りにくいんだよなあ」
そんな会話をしているうちに、街道の周囲の景色が変わり始めた。まばらだった農地が広がり、道沿いには石造りの小さな家や納屋が見えるようになる。畑で働く人々が荷馬車の列を見上げ、子どもたちが珍しそうに手を振っていた。
ハーグレイヴ伯爵領に入ったのだという。
「よっしゃあ! 今日はちゃんとしたベッドで寝られるんだろ!」
少し後ろから、ユリウスの弾んだ声が聞こえてきた。
「まだ集結地に着いてもいないのに、気が早いわよ」
ミレイユが呆れたように返す。
「だってよ、何日も地面の上で寝てたんだぞ。そろそろ背中が痛くなってきたんだって」
「冒険者なんだから、それくらい慣れなさいよ」
「お前だって昨日、毛布が薄いって文句言ってただろ!」
「それとこれとは別!」
二人のやり取りに、周囲から笑い声が上がった。旅の疲れは確かに溜まっているけれど、ここまで大きな問題なく進んでこられたこともあって、皆の表情は明るい。
もっとも、私たちの目的地は伯爵領ではない。ここは、これから向かうグリューンヴァルト大森林への出発地点なのだ。
◇
集結地に到着したとき、私は思わず足を止めてしまった。
「……ずいぶん、人がいるね」
そこには大きな倉庫や厩舎が並び、広場には何台もの荷馬車が停められていた。積み上げられた木材、樽、麻袋、農具。伯爵家の職員らしい人たちが帳簿を片手に歩き回り、荷物の積み替えや数量の確認をしている。
そして、何より目についたのは人の多さだった。私たちのような冒険者や兵士だけではない。作業着姿の職人、農具を抱えた男たち、荷物を整理する女性たち。小さな子どもの手を引いた夫婦や、年配の人の姿まである。
「これ、みんな開拓に参加する人たちなのかな?」
「そうみたいだな」
タクマも少し驚いた顔で周囲を見回している。
ノヴァグラードを出発したときは、およそ百人だった。道中でも何人かが合流していたけれど、ここで待っていた人たちまで加われば、かなりの人数になる。
近くで荷物を運んでいた職員に尋ねると、開拓団の総人数は約二百人になる予定だという。
「二百人……。これ、全員で森に入るの?」
「だとしたら、相当大変だぞ」
タクマが苦笑する。
確かに、森へ入るための道は事前に調べられていると聞いている。けれど、二百人もの人間が暮らせる場所が、最初から用意されているとは思えない。子どもや年配の人までいるのだから、野営の準備ひとつ取っても簡単ではないはずだ。
「……一度には、無理」
いつの間にか隣に来ていたシエラが、短く言った。
「だよねえ。いきなり森の中に二百人分の寝床を作れって言われても困るよ」
「寝床だけじゃないぞ。食事も水も必要だし、トイレだって考えなきゃいけないだろ」
「……大変そう」
シエラの言葉に、タクマが小さく笑った。
もっとも、集結地の様子を見る限り、伯爵家も何の準備もせずに人を集めたわけではなさそうだった。待機する人々のための宿泊場所があり、食料や飼葉も十分に用意されている。荷馬車ごとに行き先や積荷を確認している職員の姿からも、きちんとした管理が行われていることが分かった。
そのあたりの事情は、これから説明してもらえるのだろう。私たちは案内された建物へ向かった。
◇
開拓地の代官を務める人物は、思っていたよりも若かった。
年齢は私やタクマとそう変わらないだろう。落ち着いた茶色の髪を短く整え、派手な装飾のない上着を身につけている。腰には剣を下げているものの、いかにも貴族という格好ではなかった。
彼は私たちが到着したとき、伯爵家の職員から何かの報告を受けていた。
「分かりました。では、追加の食料は西側の倉庫へ。荷馬車の割り振りは、午後の確認が終わってから決めましょう」
職員が一礼して離れると、彼はこちらに向き直った。
「お待たせしました。ヴィクター、道中は問題ありませんでしたか?」
「はい。大きな問題はありません。途中でいくつか小さなトラブルはありましたが、予定の範囲内です」
「それは何よりです。長旅、ご苦労さまでした」
ヴィクターが私たちを紹介すると、青年は丁寧に頭を下げた。
「初めまして。オリヴァー・ハーグレイヴと申します。今回、新しい開拓地の代官を務めることになりました」
「リカです。よろしくお願いします」
「タクマ・イザワです」
「お二人のことは伺っています。ノヴァグラードから来てくださったA級冒険者の方々ですね」
私は少し意外に思った。伯爵家の次男で、しかも代官を任された人物だというから、もう少し威厳を前面に出す人を想像していたのだ。けれど、オリヴァーは私たちに対しても、ヴィクターに対しても、ほとんど態度を変えなかった。
「今回、冒険者の皆さんには重要な役割をお願いすることになります。特にお二人には、冒険者側の代表として、警備隊や職人たちとの調整にも加わっていただきたいのです」
「私たちが、ですか?」
「はい。もちろん、現場での判断は皆さんの経験を尊重します。ですが、二十人を超える冒険者がそれぞれ別の判断で動いてしまっては、警備隊との連携が難しくなりますから」
それはもっともな話だった。ノヴァグラードを出発してからの数日間だけでも、冒険者と警備隊では仕事の進め方が違うと感じることが何度かあった。
タクマが私を見る。
「どうする?」
「引き受けようよ。もともと協力するつもりで来たんだし」
「そうだな。分かりました。俺たちでよければ」
「ありがとうございます。助かります」
オリヴァーは安堵したように微笑んだ。その笑顔は、貴族というより、仕事を引き受けてもらえた普通の青年のものに見えた。
◇
午後からの打ち合わせでは、集結地に置かれた大きな地図が使われた。
机を囲んでいるのは、オリヴァー、ヴィクター、伯爵家の管理官、職人の班長、それに私とタクマだ。コンラートも冒険者側の一員として同席していたが、私たちの少し後ろで話を聞いている。
地図には、伯爵領からグリューンヴァルト大森林へ向かう街道と、森の中にある開拓候補地が記されていた。
「まず、皆さんに確認していただきたいのは、今後の進出手順です」
オリヴァーが地図の上に指を置いた。
「今回集まった開拓団は約二百人ですが、全員が一度に森へ向かうわけではありません」
私は思わずタクマと顔を見合わせた。やっぱり、そうだよね。
「伯爵家では、事前の調査結果をもとに、三段階での進出を計画しています」
オリヴァーの説明によれば、まずは少人数の先遣隊が候補地へ向かう。
森の中には、以前から調査隊が出入りしていた場所がある。水場や地形、荷馬車が通れる経路などはすでに確認されているものの、森の状況は常に変化する。魔物が移動している可能性もあれば、雨で道が崩れていることもある。
そのため、開拓団を受け入れる前に、改めて現地を調べる必要があるのだという。
「先遣隊は四十五人を予定しています。冒険者二十人、警備兵十五人、職人と調査員が九人。それに私が同行します」
「オリヴァー様もですか?」
職人の班長が確認すると、彼は頷いた。
「はい。私が責任を負う土地ですから。報告書だけを見て、人々を送り込む判断はできません」
続いて、先遣隊が候補地の安全を確認した後、追加の職人と資材を送り込む。野営場所を広げ、仮設倉庫や共同炊事場を設け、必要な場所には簡易的な柵を作る。最低限の生活環境と警備体制が整ってから、家族連れを含む本隊を段階的に移動させる計画だった。
その間、集結地に残る人々の生活は伯爵家が支える。
「私が不在の間は、こちらの管理官と警備隊の副隊長に任せます。先遣隊から安全確認の報告が届くまでは、後続の移動を始めないようにしてください」
「承知しております」
管理官が答えた。
なるほど。これなら、最初から二百人を森へ連れていくよりずっと安全だ。
計画そのものはすでに決まっているらしく、打ち合わせは先遣隊の具体的な動き方へ移っていった。
「候補地へ到着したら、まず周辺の警戒を固めたいと考えています」
ヴィクターが地図を指した。
「職人たちが調査を始める前に、少なくとも野営予定地の周囲に危険がないことを確認すべきです」
「それは理解していますが、地面の状態を見なければ野営場所を決められません」
職人の班長が応じる。
「水場から離れすぎても困りますし、地盤が軟らかい場所では荷馬車を停めることもできません。調査を後回しにすると、作業が進まなくなります」
どちらの言い分も正しい。安全を確認しなければ職人を働かせられないし、職人が調べなければ安全な野営地を決められない。
私は地図を覗き込みながら考えた。
「だったら、最初に冒険者が周辺を調べるのはどうでしょう?」
皆の視線がこちらに向く。
「全員で同じ場所へ行くんじゃなくて、斥候が得意な人を中心に何組かに分かれて、危険な場所がないか確認します。その結果を見てから警備兵を配置すれば、職人さんたちも調査しやすくなると思うんです」
「なるほど」
オリヴァーが頷いた。
「それなら、警備隊が無闇に森の中へ広がる必要もありませんね」
「ただ、報告の仕方は決めておいた方がいいと思います」
タクマが口を開いた。
「偵察に出た冒険者が、それぞれ別々にヴィクターさんや職人さんへ話を持っていくと、情報が食い違うかもしれません。冒険者側で一度まとめてから、必要なところへ伝える形にしませんか?」
「確かに、その方が助かります」
ヴィクターが答える。
「警備隊も、報告を受ける窓口を決めておきましょう」
「じゃあ、偵察の組み合わせと報告の取りまとめは私たちでやるね」
私はタクマを見た。
「うん。現地で動く人たちには、出発前に説明しておこう」
オリヴァーはしばらく地図を見つめてから、顔を上げた。
「では、その手順で進めましょう。まず冒険者の皆さんが周辺を確認し、警備隊が必要な場所を押さえる。その後、職人たちが水場と地盤を調査することにします」
そして、少し表情を引き締めた。
「ただし、事前の報告と現地の状況が大きく違っていた場合は、無理に進めないでください。候補地が使えないと判断したなら、計画を見直します」
その言葉に、私は少し感心した。せっかく二百人もの人を集めたのだから、多少の問題があっても進めたいと思うのが普通だろう。けれど、オリヴァーは最初から、引き返す可能性も考えていた。
若いけれど、ちゃんと責任の重さを分かっている人なのかもしれない。
◇
打ち合わせが終わると、オリヴァーが私とタクマを呼び止めた。
「お二人とも、今日はありがとうございました」
「いえ、私たちは自分たちの仕事について話しただけですから」
「それでも助かりました。正直に言えば、私はこうした大規模な開拓を指揮した経験がありません」
彼は少し苦笑した。
「父から代官を任されたときも、本当に自分で務まるのかと思いました」
「そうなんですか?」
「ええ。兄は伯爵家を継ぐ立場ですから、幼い頃から領地経営について学んでいます。私は次男ですし、いずれ別の役目を与えられるだろうとは思っていましたが、まさか新しい開拓地を任されるとは」
その言葉には、不満というより戸惑いが混じっていた。
「ですが、任された以上は責任を果たしたいと思っています。だからこそ、現場のことを知る皆さんの力を借りなければなりません」
「それでいいんじゃないですか?」
タクマが答えた。
「俺も知らない仕事をするときは、詳しい人に聞くしかないですし。分からないまま勝手に決める方が、後で大変なことになりますから」
「……そうですね」
オリヴァーは小さく笑った。
「少し気が楽になりました」
私は二人のやり取りを聞きながら、昔のことをほんの少しだけ思い出していた。
王女だった頃、責任という言葉は何度も聞かされた。けれど、あの頃の私は、それを自分に押しつけられるものだとしか考えられなかった。
オリヴァーも、きっと簡単な気持ちでこの役目を引き受けたわけではないのだろう。それでも、彼は自分の仕事として向き合おうとしている。
「オリヴァーさん」
「はい?」
「私たちも、できることは頑張ります。だから、困ったことがあったら遠慮なく相談してくださいね」
「ありがとうございます。心強いです」
彼は今度こそ、晴れやかな笑顔を見せた。
◇
翌朝、集結地は早くから慌ただしかった。
先遣隊の出発に向けて、荷馬車へ道具や食料が積み込まれている。職人たちは測量に使う器具や工具を確認し、警備兵たちは武器と防具を点検していた。
私とタクマも、冒険者たちの人数と担当を確認して回った。
「偵察に出る人は、現地に着いたら改めて組み合わせを決めるからね。勝手に森の奥へ入らないようにお願い」
「分かってるよ。リカさん」
年上のC級冒険者が笑って答える。
「こっちも命は惜しいからな。無茶はしねえよ」
「それなら安心」
別の場所では、タクマが冒険者たちに報告の手順を説明していた。
「何か見つけたら、まず俺かリカに知らせてください。警備隊に急いで伝える必要がある場合は、その場で直接伝えても構いませんけど、後で俺たちにも教えてもらえると助かります」
皆、素直に頷いている。
冒険者にはそれぞれ得意な仕事があるし、経験も違う。私たちがA級だからといって、何でも命令すればいいわけではない。それでも、誰かが全体を見ていなければ、二十人もの冒険者がうまく動くことはできないのだろう。
少し離れたところでは、コンラートが元部下たちと装備を確認していた。
「コンラートさん、そちらは大丈夫ですか?」
声をかけると、彼はすぐにこちらを向いた。
「はい。私を含め六名とも準備は整っております。割り当てられた任務についても確認済みです」
「ありがとう。現地では警備隊の人たちと一緒に動いてもらうこともあると思うから、そのときはよろしくね」
「承知しました」
彼は丁寧に頭を下げた。
元王国軍の隊長だったコンラートは、警備兵たちの考え方にも詳しい。けれど、今は私たちと同じ冒険者だ。その経験を頼りにすることはあっても、冒険者全体の仕事を押しつけるつもりはなかった。
近くでは、エステルが道具を入れた袋を抱えていた。
「エステル、準備はできた?」
「はい。大丈夫です。土の状態を見るための道具も、必要なものは揃っています」
「頼りにしてるね」
「……はい。頑張ります」
少し緊張した様子ではあるけれど、その手つきは落ち着いていた。彼女の土魔法は、これからの開拓で大いに役立つはずだ。
「リカさん! 俺たちも準備できました!」
ユリウスが元気よく手を振っている。
「声が大きいわよ。みんな準備してるんだから」
隣のミレイユが呆れた顔をする。
「いや、準備できたって報告しただけだろ!」
「普通に言えば聞こえるでしょ!」
相変わらずの二人に、私は思わず笑ってしまった。
その向こうでは、シエラが地図と事前調査の記録を見比べている。
「何か気になるところがある?」
「……川の位置」
「川?」
「報告では、ここを渡れる。でも、雨が続けば変わる」
シエラが指したのは、森の中を流れる川の一部だった。
「……現地で確かめる」
「うん。お願いね」
事前調査が済んでいるからといって、何もかもそのままとは限らない。やっぱり、森を知っているシエラが一緒に来てくれてよかった。
やがて、ヴィクターが警備兵たちを整列させた。
集結地に残る副隊長と最後の確認を済ませ、オリヴァーも伯爵家の管理官へ指示を伝えている。
先遣隊は四十五人。冒険者二十人、警備兵十五人、職人と調査員が九人。そして代官のオリヴァー。
残る百五十人余りは、この集結地で私たちからの報告を待つことになる。
出発の準備が整う頃には、見送りの人々が広場に集まっていた。職人らしい男が仲間の肩を叩き、年配の女性が若い兵士に何かを手渡している。荷馬車の陰では、小さな子どもが母親の服を引っ張っていた。
「ねえ、お母さん。森には怖い魔物がいるの?」
「いるかもしれないわね。でも、あのお兄さんたちやお姉さんたちが、先に調べてくれるのよ」
母親はそう言って、私たちの方を見た。
私は思わず背筋を伸ばした。私たちは、ただ森へ行って魔物を倒すために集まったわけじゃない。ここにいる人たちが、安心して暮らせる場所を作るために行くんだ。
「……なんだか、責任重大だね」
隣のタクマに小さく言う。
「まあ、そうだな。俺たちが大丈夫だって言わないと、あの人たちも出発できないからな」
「うん」
「でも、何もかも俺たちだけでやるわけじゃないだろ。警備の人も職人さんもいるし」
「そうだね」
私は周囲を見回した。ヴィクターが警備兵たちに指示を出し、職人たちは荷馬車の積荷を確認している。冒険者たちも、それぞれの装備を整えて出発を待っていた。
「……リカ」
シエラが私を呼んだ。
「そろそろ」
「うん」
広場の前方で、オリヴァーが馬に跨った。
「皆さん、準備はよろしいですか?」
各班から返事が上がる。
彼は一度、集結地に残る人々へ目を向けた。
「私たちはこれから、開拓予定地の安全を確かめに向かいます。皆さんを迎えられる場所を整えるため、まずは私たちが道を開きます」
短い挨拶だった。
けれど、その言葉には、自分の役目を引き受けた人の決意が感じられた。
「それでは、出発しましょう」
合図とともに、先頭の荷馬車がゆっくりと動き始めた。
私たちも歩き出す。振り返ると、集結地に残る人々が手を振っていた。さっきの子どもも、母親に抱き上げられながら、小さな手を一生懸命振っている。
私も手を振り返すと、隣を歩くタクマに声をかけた。
「ねえ、タクマ。森に着くまで、どれくらいかかるんだっけ?」
「予定じゃ三日くらいだな。道の状態によっては、もっとかかるかもしれないけど」
「三日かあ。まだ結構あるんだね」
「そうだな。とりあえず、今日の野営場所まで無事に着くのが先だろ」
「それもそうだね」
私は笑って、前を向いた。
先頭の荷馬車はすでに街道へ出ていた。私たちもその後に続き、グリューンヴァルト大森林へ向けて歩き始めた。




