第39話 冬市の中央舞台
中央舞台では、嘘も本物も同じ光を浴びる。だから逃げ場がない。
冬市当日、白銀宝飾商会の飾り台は眩しかった。大粒の青石、金縁の鑑別証、北方風と銘打った札。見栄えだけなら立派だ。
私は婚約冠と本物の星彩石、そして白銀商会の偽品を並べた。公開鑑別の鐘が鳴る。
「まず、光です」
細灯を当てると、本物の北方石には細い星筋が一本走る。偽物は表面だけが白く散った。
「次に、研磨屑」
封じていた屑袋を開き、試薬を垂らす。白銀商会の屑だけが白く濁る。海砂混和石の反応だ。
「そして鑑別証」
私は透かし紙のずれ、廃番紙、存在しない補佐肩書き、オスヴァルトの押印記録を示した。最後に、婚礼被害に遭ったミーナが実際の首飾りを差し出す。
「この人の祝いまで、あなたたちは粗末な石で済ませた」
観衆の空気が変わった。買い物の目ではなく、責任を見る目になる。
ヘルミーネは最後まで笑顔を保とうとしたが、リーゼが一歩前へ出た。
「私の鉱区名も、あなたの札より先にここにあります」
その一言で十分だった。守るべき本人の声は、商会の宣伝文句より強い。
ディートハルトが公に告げる。
「白銀宝飾商会の北方名義販売を禁ずる。書記局との不正契約も監査送りとする」
拍手は起きなかった。でも、それでよかった。本当に大事な場では、人はまず静かにうなずく。
舞台を降りる時、私はようやく深く息を吐いた。工房名も、鉱区名も、花嫁の祝いも。全部まとめて返せた気がした。




