表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/40

第35話 白銀令嬢の鑑別証

立派な鑑別証ほど、裏の繊維を見るべきだ。


 私は白銀商会の鑑別証を机へ広げた。婚約祝いの耳飾り、ミーナの婚礼首飾り、冬市先行市の青石。全部、同じ意匠なのに、紙の端だけ微妙に毛羽立っている。


「古い鑑別局の余り紙です」


 王都にいた頃、廃番になった羊皮紙の触り心地を私は嫌になるほど覚えた。表面だけ滑らかで、裁断端が乾きすぎている。


 さらに、署名欄の『領都鑑別補佐 ヘルミーネ・ヴァルター』という肩書き。領都の正式登録簿を照会すると、そんな役職自体が存在しなかった。


「役職が先に偽物でしたね」


 マルタが腕を組む。


「石とお似合いだよ」


 私は紙へ細灯を当てた。透かしの位置がずれている。公的鑑別証ではありえない。そこへオスヴァルト書記の押印だけが本物だから、余計に質が悪い。


「書記局が通したんだ」


 ディートハルトの声が低くなる。


 ちょうどその時、オスヴァルト本人が呼び出しに応じて現れた。私は無駄な前置きをせず、鑑別証と登録簿の写しを並べる。


「この肩書きは、どこから出ました」


 彼は最初、視線を逸らしただけだった。だが透かし紙のずれと、彼自身の押印記録を示した途端、肩が落ちる。


「冬市までの仮登録だと……商会から説明が」


「説明では役職は生えません」


 私は言い切った。ヘルミーネが自分の社交名と書記局の印だけで“鑑別人”を作った。それが冬市の中央舞台へ出るつもりだったのだ。


 紙の繊維一本まで洗ってよかったと思う。綺麗な言葉より、毛羽立ちの方が嘘を覚えている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ