第34話 無骨な公爵の公開入札
裏で話が決まりすぎている時は、机を広場へ移すのが一番早い。
ディートハルトが出した告知は簡潔だった。
『北方鉱区関連の供給契約、代行契約、鑑別補佐登録をすべて冬市前の公開入札と公開照会へ移行する』
白銀宝飾商会にとって、これ以上嫌な書き方はないだろう。個室で握っていたものを、全部、人前へ引きずり出されるのだから。
告知当日、領都の広間は商人と鉱夫で埋まった。ヘルミーネは笑顔のまま現れたが、口元だけ少し硬い。
「閣下、こんな大げさなことをしなくても」
「大げさなのは、私の名を使って代行契約を進めた方だ」
短いが十分だった。
私は壇上で、旧鉱区台帳と相続証控えを並べた。まずは入札ではなく、誰に入札資格があるかを確認する。権利を奪ったまま値をつけるなんて、帳簿としては最低だ。
「リーゼ・フェルナー鉱区、現名義再照会中。白銀宝飾商会による先行買い取り提案は保留」
読み上げるたび、当人たちの顔色が少しずつ戻っていくのがわかった。
ヘルミーネが口を挟む。
「私どもは冬を越えられない方へ現金を」
「だから先に紙を消したんですか」
私は彼女の契約書を掲げた。余白に隠れた再取得権なしの条項。広間がざわつく。
公開入札は、その場で供給先を決めるためのものではなくなった。誰が紙を曲げ、誰がその上に値札を置いたかを見せる場になっていく。
ディートハルトが最後に言った。
「北方の石は、裏で安く取るものではない」
華やかではない。でも、あの人が言うとそれで十分だ。




