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第28話 研磨屑に混じる銀砂

研磨屑は捨てられていても、どこで削られたかまでは隠せない。


 偽耳飾りと偽首飾りから集めた粉を、水へ落として比べた。北方の星彩石由来なら青灰が沈む。ところが白銀商会の品から出た屑には、きらりと白い粒が混じる。


「銀砂だ」


 マルタが断言した。


「海沿いの炉で混じるやつだよ。北方じゃ出ない」


 私は試薬瓶を一滴落とした。白い粒が鈍く曇る。母の帳面どおり、海砂混和石の反応だった。


「石そのものは海沿いの再研磨品。そこへ北方風の刻印を加えています」


 さらに面白いことに、屑袋の紐には北海港の荷札糸が使われていた。白銀宝飾商会は、海から石を運び、北方の名を貼り、北方の鉱区まで買おうとしている。


「本物になれないから、本物を枯らす気ですね」


 私の言葉に、ディートハルトは短くうなずいた。


「冬市で並べるつもりだろう」


 冬市は王都と北海の商人が集まる大舞台だ。そこで“北方公認”を名乗られれば、本物を知らない客は騙される。


 私は屑袋へ新しい札を付けた。


『海砂混和石由来 北方非産 白銀宝飾商会関連証拠』


 名前をきちんと書く。それだけで、曖昧さが減る。


 夕方、リーゼがまた工房へ来た。白銀商会から、相続が無効なら今週中に売却契約を、と急がされたという。


「冬市前に鉱区名義を揃えたいんでしょう」


 私は屑袋を見ながら言った。


「本物の石が必要なんです。偽物だけでは、長くは売れませんから」


 リーゼは驚いたように私を見る。


「つまり、うちの鉱区がまだ価値があるってことですか」


「もちろんです。だからこそ狙われている」


 その事実を、奪われる側に先に伝えることも大事だった。価値がないのではなく、価値があるから踏みつけられている。その順番を間違えないように。


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