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第16話 宝冠台に置かれた偽石

 披露会の最中に検品を止めるなど、王宮では本来ありえない。


 だからこそ、私が「祝冠石の再照合をお願いします」と言った時、会場は凍りついた。


 ベルトラン局長がすぐに前へ出る。


「いまこの場でかね」


「はい。この場でなければ意味がありません」


 私は検品台の上へ、北方工房から持参した秤と細灯を置いた。王都の人間は道具を見ると嫌な顔をする。華やかさの中に、事実が混じるから。


「まず重量。登録値より軽い」


 数値を読み上げると、ざわめきが広がる。私は続けて細灯を石へ当てた。星彩石なら内部に一本の光筋が浮かぶはずなのに、祝冠台の石は表面で光が散るだけだった。


「次に内部星筋。見えません。これは星彩石ではなく、模様を写した模造石です」


 レナードが声を荒らげる。「証明にならない!」


「では爪座を」


 私は許可を取り、宝冠を裏返した。爪座の内側には、二重星ではなく、角の一つが潰れた粗い刻印がある。工房金庫に残っていた試作板を無理に真似た痕だった。


 会場がどよめく。


「さらに、宝冠台の底板を確認してください」


 控えていた係官が戸惑いながら台を持ち上げると、底に小さな引き出しが隠されていた。中から出てきたのは、石を一時的に差し替えるための予備爪座と、小さな模造石の欠片。


 もう言い逃れはできない。


 ベルトラン局長の顔から血の気が引く。レナードは何か言いかけたが、声にならない。セリーヌだけが、まだ笑顔を保とうとして失敗していた。


「北方工房から納入された本物の祝冠石は、王宮到着後に差し替えられました」私は静かに告げる。「その責任を北方へ押しつけ、私を追い出し、模造石で王宮宝飾の座を作ろうとしたんです」


 誰かが息をのむ。


 その瞬間、会場の空気は華やかな儀礼のものではなくなった。偽物が偽物として見えた時、人はもう拍手できない。


 公爵が私の横に立った。


「続けろ」


 私はうなずく。


 ここから先は、ただ暴くためではない。奪われた名を、正しい場所に戻すための最後の一押しだ。


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