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第15話 祝冠披露会への帰還

 祝冠披露会の日、王都はいつも以上に白く磨かれて見えた。


 北方からの馬車が王宮門をくぐると、従者たちの視線が一斉にこちらへ集まる。追放されたはずの女が、公爵を伴って戻ってきたのだから当然だ。


「緊張しているか」


 馬車を降りる直前、公爵が尋ねた。


「少しだけ。でも、前よりはずっと静かです」


「ならいい」


 その短い返事に、妙に力が抜けた。


 王宮の前室では、レナードとセリーヌが先に待っていた。セリーヌはあの耳飾りをつけ、青銀の礼装をまとっている。王都の光を全部自分のものにしたいみたいな顔だ。


「まあ、お姉様。本当に北方から戻っていらしたのね」


「披露会の招待をいただきましたので」


「今日は騒ぎを起こさないでくださいませね」


 私は微笑んだ。「ええ。必要な確認だけをします」


 レナードが公爵に目を向ける。「北方側は再契約の希望で?」


「正しい記録と正しい支払いがあるならな」


 その一言で、周囲の空気がわずかに張った。


 披露会場へ入ると、中央の宝冠台に新しい祝冠が置かれていた。遠目には立派だ。けれど近づくと、石座の高さが前回と同じように不自然に見える。向こうはまだ、こちらが核心まで掴んでいないと思っているらしい。


 私は北方工房代表として持参した書類箱を係官へ渡し、検品立会いを申し出た。係官は戸惑ったが、公爵の名がある以上、無視はできない。


 控え室へ移る途中、伯母ミレイユが立ち塞がった。


「いまさら何を望むの、クラリス」


「望むのは、母の仕事の名を正しく戻すことだけです」


「社交もできないあなたに、宝飾の座は似合わないわ」


「だからこそ、似合う誰かのために記録を盗んだんですね」


 伯母の顔色が変わる。


 でも私はそれ以上何も言わなかった。披露会はもう始まる。言葉より先に、石が答える場へ移るだけだ。


 会場の扉が開く。


 王宮の光の真ん中へ戻ってきたのに、不思議と前より息がしやすい。


 私の後ろには、北方の工房と公爵と、消えなかった記録があるからだ。


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