第52章| 職場巡視の重要性 <4>リスクアセスメントの復習
<4>
鈴木先生から言われた。
「足立さん。いまの間黒さんからの問いには、どう答えるのが適切ですか? 」
「えっ・・・・・・えっ・・・・・・・・・・・・(汗)」
――――――――アセトンってそのへんの薬局でもスーパーでも普通に売っているものですから。特別な許可もなくいつでも誰にでも買えるようなものなら、人体にとって危険な物ではないはずですよね??
間黒さんはそう訊いてきた。
(この質問に、産業保健師として私はどう答えるのが正解なんだろう・・・・・・・・・!?? )
いきなり訊かれて頭が真っ白になった私に、間黒さんが笑って言う。
「あれ? そういえばそちらの男性は・・・・・・鈴木さんでしたっけ? 」
「はい。本日は付き添いで来させていただいております」鈴木先生が答える。
「付き添い・・・・・・あっ、わかった。もしかして足立さんのマネージャーさんですか!? 」
「まぁ、そんなところですね」
「え~。さすが凄腕シゴデキ保健師の足立さん! マネージャーが付いてるんですかぁ!! 」
(――――――――うっ・・・・・・。荒巻先生の嘘がまだ解除されてないよッ・・・・・・!!! )
間黒さんと鈴木先生のやり取りを聞いて、持野さんが横で肩を震わせてクックッと笑いをこらえていた。
このネイルサロンには芸能人も来ることがあるって言っていたから、間黒さんは鈴木先生を “付き人” と勘違いしたんだと思う。でも鈴木先生は “管理職” って意味で捉えたんだと思う。
(前提として私が『凄腕保健師の足立さん』じゃないことも含めて、完全に会話がすれ違ってるッ!!! )
「里菜ちゃん、アセトンって有機溶剤だよね? 」持野さんが助け船を出すように言ってくれた。
「あっ、そ、そうですよねっ! 」
(――――――――・・・・・・「化学物質は、使い方や取り入れる量次第で有益にもなれば毒にもなる。ならばそのハーブのメリットと、有害性・危険性などのデメリットを比較し、リスクが許容範囲内かどうか、リスクを減らす対策はないかを検討する『リスクアセスメント』を行ってから使うべきではないでしょうか? 」・・・・・・――――――――)
先日、雑炊を食べながら鈴木先生に聞いた言葉を思い出して、急いでノートを取り出した。
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【リスクアセスメント】リスクを発見・評価し、軽減する!
■リスク→危険性や有害性の大きさ と 発生可能性の組み合わせ
・「危険性」→損失・被害・病気・ケガの重大さ×発生可能性
・「有害性」→物質の持つ有害性×ばく露の程度
で考える
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間黒さんにノートを見せながら説明する。
「アセトンは『有機溶剤』に該当します。化学物質は、使い方や取り入れる量次第で有益にもなれば毒にもなるんです。ならばアセトンを使うメリットと、有害性・危険性などのデメリットを比較し、リスクが許容範囲内かどうか、リスクを減らす対策はないかを検討する『リスクアセスメント』を行ってから使う必要があるのではないでしょうか? 」
完全に鈴木先生の受け売りだけど、私がダイエット用のハーブについて言われたことを、アセトンに置き換えて間黒さんに説明した。
「えっ! 『リスクアセスメント』?? それって、どうやってやればいいんですか!? 」
「そ、それは・・・・・・・・・」
鈴木先生と話した内容を、さらに思い出す。
(――――――――・・・・・・「リスクアセスメントの第一歩は、危険性や有害性の本質が何であるかを把握することから始まります。生鮮食品以外の包装された食品には『原材料表示』『栄養成分表示』が付いていますし、一部の化学物質では、詳細情報を載せた『安全データシート』というものが探せるはずなので、それを参照して情報収集するとよいでしょう」・・・・・・――――――――)
「まずは、その物質の情報を見ることから始めましょうっ。間黒さん、アセトンの入っていた容器はありますか?? 」




