のじゃ校長(幼女)に呼び出される
よろしくお願いいたします!
「何がどうなったら、あんなことになるのじゃ!!」
「不思議ですねぇ」
駈と蓮火、ついでに輝花と、なぜか蓮火の後についてきたリスト。
そして、とばっちりで輝子。
この五人、正確に言えば四人は授業が終わったあとの放課後、庄府冒険者学校のとある場所に呼び出されていた。
駈がアカズのダンジョンから自室に戻り、泥のように眠った翌日である。
授業中も爆睡したため、疲れはある程度に取れていた。
「ねぇ、じゃないのじゃ!全く」
見た目幼女なこの女性。
通称゛のじゃ゛学校長。
つまり、ここ庄府冒険者学校内で最も偉い人物である。
駈たちは学校長室に呼び出されていた。
(おい?!なんで俺まで呼び出されるんだよ!?とばっちりじゃねえか!!)
(……さあ、なんでだろうねぇ。君もあの場にいたことを誰かにバラサレたんじゃないかなぁ)
(くそっ!誰だ俺を売ったやつは!!)
バラした張本人である駈の目の前で憤りを隠せない様子の輝子。
犯人は自分の真ん前にいるのだが、それには気付かない。
友人の怒りに、駈は一人でほくそ笑む。
腹黒だった。
しかしながら、実際あの場にいたとなると、低くない確率で見られている可能性はあった。
あれだけ派手に地面が揺れて、建物が沈んでいくのである。
目にした者はきっと、ちょっとしたパニックになるに違いない。
軽いホラーである。
そしてその該当者がいた結果、駈たち五人がこの場所に集まることになってしまったのだ。
「あそこには誰も触れてはならぬ!そう通達を出していたではないか!」
「触れるも何も、僕らは何もしてないんですけどねぇ。そうですよね?先生」
「ええ。その通りですよ校長。あんな天変地異みたいな出来事を個人で起こせるとお思いですか?そんなことばっかり気にしているから身長が伸びなかったんですよ」
「もう成長が終わってしまっているかのような言い方はやめてほしいのじゃ?!」
これから成長期が来るのじゃー!
頭を抱えて幼女が叫ぶ。
「はっ?!危うくごまかされるところだった!!お主、輝花であれば天変地異を起こすことも不可能ではないじゃろう!?」
「ちっ……嫌ですね学校長。私にそんなことが出来るわけないじゃないですか。……チっ」
「露骨に舌打ちされたのじゃ?!」
あたしはこの学校で一番偉いはずなのじゃ!!
態度の是正を要求する!!
幼女は輝花に云い募った。
「チっ……うっせぇな」
「せめて、隠すそぶりくらいは見せるのじゃ?!」
おかしいのじゃ!!
幼女はツインテールを振り乱す。
「ええっと!そもそも何であそこを取り壊さなかったんですか?」
幼女と輝花のやり取りを傍観していた蓮火が一つ気になるといった様子で会話に参加してきた。
誰も住んでいない、これからも住む予定がないのであれば、ちゃちゃっと更地にしても良かったはずである。
そんなことを考えながら、蓮火は幼女に疑問をぶつけたのだが。
幼女はピタリと動きを止め、気まずそうに視線をそらす。
「……ま、まぁいい。今後はこのようなことがないように気をつけるのじゃ!以上解散!」
「このチビはあの建物を壊して何かに祟られでもしたらどうしようと、ビクビクしていたんだ。だから、その年になっても男が寄ってこないんだよ」
「それとこれとは関係ないのじゃ!ただの悪口なのじゃ!っていうか、そのことをバラさないでほしいのじゃ!」
校長の威厳が木端微塵なのじゃー!
幼女は机に頭を打ち付けた。
「そんなことよりも校長殿」
リストが唐突に話に入ってきた。
「校長の威厳をそんなことで片付けないでほしいのじゃ?!お主は何なのじゃ!?」
自らに比べて大分育っているリストからの申し出に、親の仇を見るような目になった幼女。
その視線は自分と相手を見比べていた。
「わたしはリストと申します。校長殿がこの学校で1番偉い方であるということを見込んでお願いがあります」
「ほ、ほう?わしがこの学校で偉いとな?」
幼女が少し嬉しそうな表情をする。
「学校長なのだからあなたがトップに決まっているじゃないですか」
リストはさらに褒め称えた。
幼女は鼻を伸ばし始めた。
「そ、そうじゃよな?なんか自分って実はそんなに偉くないのかもしれないとか自信なくして迷子になっていたのじゃが……」
「そんなことないですよ。みんなあなたが偉いということは重々承知しております。その上で親しげにあなたとコミュニケーションを取りたいがために、先ほどのようなやり取りをしたのですよ。言わば照れ隠しの1つと言えるでしょう」
「そ、そうかのう?わし、自信もっていいのかのう?」
幼女はウキウキとした表情でリストに問いかける。
「ええ。自信を持ってください」
「わ、分かったのじゃ。いやぁ、お主!若いのに大分、人間が出来ておるのう!」
自らより大分年上のリストに向かって、幼女はそんなことを言った。
見た目だけ見れば、二十代にもなっていないように見えるので、幼女が勘違いするのも全く無理はないだろう。
先生あたりは気付いているかもしれないけどね。
駈は自らのクラス担任の教師を眺め、心の中で呟いた。
まんまとリストに乗せられた幼女はふんぞり返って、彼女に問いかける。
「それで、わしにお願いとはなんなのじゃ?」
「はい。実はわたしを、この学校に入学させていただきたいのです」
「ほう?」
リストは幼女に自らの願いを告げた。
「冒険者学校は来るもの拒まずじゃ!入学することは全く問題がない」
「ありがとうございます。さすが、校長、日本一」
こんなに心がこもっていないおだて方を、駈は初めて見た。
リストらしいと言えばらしいのだが、さすがにバレるのではないだろうか。
「そ、そうか?照れるのう」
でへへー。
まんま子どものような表情で幼女がニヘラと笑う。
駈の心配は無駄に終わっていた。
しかし、こんな人物を学校長に据えていてこの学校は大丈夫なのかと別な意味での心配が増えた駈。
「そんな校長殿にさらにお願いがあります」
「なんじゃ?申してみよ」
少し言いづらそうにしながらも意を決して告白する、という演技をリストが発表した。
「お恥ずかしい話なんですが。実は先立つものがないため援助をしていただきたいのです」
「ふむ?そうか。まあ、学校には特待生という制度がある。もし、お主が特待生に足るという充分な力を見せることが出来れば、援助もしようぞ」
いくらおだてられても、そこは無条件では流されない。
さすがに学校長だった。
「何をすれば、よろしいのでしょうか?」
「ふーむ。普通じゃと、選考する人員が別にいるのじゃが、今回は特別じゃ!わしが直接、お主を見てやろう」
ありがとうございます。
リストは頭を下げた。
伏せた面がこの幼女チョロいなと歪んでいたが、誰も気付かなかった。
「よし!なら、今からお主の選考を行うか!それ以外の奴らは帰ってよし!」
「いいんですか?」
あまりにもあっさりと帰ることが出来るようになったのを怪訝に思った駈が確認する。
「うむ!まあ、そもそもお主らがあそこをわざわざ壊すようなメリットがあるとも思えんしな」
「そう思っていたなら最初から呼ぶなドチビが」
「うわ?!こいつ校長に向かってドチビって言ったのじゃ?!どうなっているんじゃ、この学校の教師への教育は!」
あ、それわしの役目じゃった!
自分で憤って、自分にツッコむという芸人のような反応をする幼女。
「それじゃあ、帰りましょうかねぇ」
「い、いいのかなっ?放っておいて」
ウガーとなっている幼女を見た蓮火が遠慮がちに呟く。
「……僕たちに出来ることはないでしょう」
駈は早々に幼女への対応を諦めた。
一応この学校の学校長なのだ。
一生徒である自分たちに出来ることはない。
あと、彼女が小さいのはどうしようも出来ない。
駈はそれだけを蓮火に返した。
蓮火はそれでもまだ、ためらいがちにウン、と頷く。
「それじゃあ、先生たち!僕たちはお先に失礼します!」
「し、失礼しますっ」
「失礼しまっす」
駈、蓮火、輝子の三人は退室の礼をする。
「うむ。あっ、そうそう。鳳凰院とこの」
チョイチョイ、と幼女は蓮火だけを自分の元へ呼び寄せた。
「は、はい?」
「うむ。あっ、男どもは帰ってよし!」
チョイチョイチョイ、と今度は駈たちに退出を促すようにその手が動く。
「はあ……それでは失礼します」
「失礼しまっす」
今度こそ、駈と輝子は学校長室から退出するのだった。
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