帰宅
よろしくお願いいたします!
とりあえず、ボクの部屋に泊めるよ。
疲れた顔でそう言うと、蓮火はリストを引きずりながら女子寮の部屋へと帰っていった。
リストは駈に手を振っていた。
二人が見えなくなるまで駈も手を振り返す。
「さて、僕も帰りますか」
駈はそれだけを呟き、その場を跡にしようとするが、そこに建物があったことを思い出し、ふと立ち止まる。
「嘆きの館……か」
誰かがすすり泣くような音が時たま聞こえてくることから、その呼び名がついたのだが。
果たして、彼女の涙は止まったのだろうか。
先ほどの憂い顔も、本当は本気で感傷に浸っていたのではないだろうか。
それは本人にしか分からないだろうが。
「まあ、ただの人間にそんなことを心配されるほど、やわじゃないか」
あの飄々とした態度を思い出し、駈は少し笑みがこぼれた。
きっと、何だかんだ言っても、そこまで気にしてはいないのかもしれない。
ただ、少しは。 ほんの少しは。
「優しくしていこうかな」
まあ、彼女とのやり取りは楽しかったしねぇ。
そんなことを思いながら、駈は今度こそ寮の自室へと戻っていく。
自らが住む寮に近付いてきたという目印がなくなったことを少し寂しく感じながらも。
それ以上に嬉しい新たな出会いが二つもあったことをありがたく感じて、思わず口の端を上げてしまいながら。
その背中を六月にしては強い夕陽が明るく照らしていたのだった。
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