↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世で虐げられた少年は、転生後も人々を信じたかったが、裏切りを機に暴君への道を歩み始めた  作者: 塩見ヒモン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/15

袋の中で過ごす最後の日

僕はまだ林檎を両手で握っていた。


父さんが外から僕の名を叫んでいる。僕はさっき齧った林檎を噛み続け、聞こえないふりをした。


林檎を飲み込んだ頃、父さんの声は遠くなっていた。家が静かになったので、僕は扉の方を見る。それでも手の中にはまだ林檎がある。


しばらくして、扉が外から蹴破られた。


外からの足音。僕は顔を上げる。ちょうど二人の男が扉を通って入ってきたところだった。その前に、林檎をもう一度齧る。


二人はそこに立っていた。体は骨と皮ばかり。服はぼろぼろで汚れている。乞食のようだった。僕と父さんと同じだ。


一人が家の中へ入ってくる。もう一人は扉の前に立ったまま、片手で父さんの首を掴んでいた。


父さんの目が見開かれる。両手が男の腕を掴む。足が地面の上でばたつく。それでも父さんは叫べない。


僕はただ父さんを見ていた。目の前で絞められる父さんを。体が固まり、何をすればいいのかわからない。


家の中にいた男が僕に近づく。僕は後ずさりし、背中が壁に触れた。


男が手を伸ばし、僕の握っていた林檎を取る。僕は抵抗しなかった。男がその林檎を齧る。


くちゃ。


僕は男の口を見つめた。


「この子か」


父さんの首を絞めている男が僕を見る。


「名前はプエボか」


男はうなずくだけだった。その目は父さんから離れない。


父さんの動きが弱くなる。一度。二度。そして足が止まった。


僕は口を開いた。


「父さん……」


父さんからの返事はない。


林檎を食べた男が僕の体を持ち上げる。僕は蹴り、殴り、逃げようとした。


「離せ!」


男は何も返さない。扉のそばで袋が開かれ、僕はその中に入れられる。別の布が顔を覆う。大きな袋の中は暗くなった。


僕は内側から袋を開けようとした。手当たり次第に殴り、蹴った。それでも手は何も掴めない。足音だけが聞こえる。家から運び出されているのがわかる。


扉が開く音。冷たい空気が袋の隙間から入る。


「子供は入れた」


袋の外で足音が止まる。


「なら終わりだ」


別の足音が近づいてくる。


僕は動くのをやめた。


(僕が狙いだったのか)


わからない。それから二人が父さんのことを話し始めた。


「カルタム・プエボはどうする」


地面を擦る袋の音が止む。


「カルタムはもう死んだ……今運んでいる」


息を呑む。声は続く。


「後で死体を依頼主のところへ持っていけ」


僕は黙って聞いていた。カルタム・プエボは父さんの名前だ。父さんは殺された。なぜ怖いのかわからない。父さんはよく僕を傷つけた。帰ってこなければいいと願ったこともある。それでも父さんは死んだ。そして僕は殺した奴らと同じ袋の中にいる。


僕はもう一度暴れた。袋を蹴り、殴った。


「黙れ!」


その声が嬉しくて、僕はさらに強く蹴った。すると袋が激しく動き、僕はバランスを失う。体が浮き、何かに叩きつけられる。頭が痛む。それでも声は聞こえていた。


「まだ起きてる」


袋の外で誰かが動く気配。


「袋を押さえろ」


僕は動こうとした。体が重い。自分の目を開けることさえできない。足音と袋が地面を擦る音だけが聞こえる。


しばらくして、何かが僕の足を刺した。僕は跳ね、痛みにうめく。痛みが足から全身へ広がる。叫ぼうとしても声が出ない。血が足から流れる。


袋の中の僕は、また二人の声を聞いた。


「まだ死んでない」


冷たい声が袋の外から降ってくる。


「なら繰り返せ。確実に殺せ」


何をされているのかわからない。ただ、痛みが何度も来る。意識がある時もあれば、何も聞こえない時もある。意識が戻るたび、体は弱くなっていく。血が足、腹、胸、首、顔から流れる。


僕は痛みを考えないように数えようとした。途中で続けられなくなるまで。声は遠くなる。手も足も感じない。聞こえも悪い。


袋の中にどれくらいいるのかわからない。覚えているのは、袋の中で鋭いもので刺された痛みだけ。その後、すべてが暗くなった。


どれくらい眠っていたのかわからない。とても長い。家で過ごしたどの夜よりも長い。


目を開けると、すべてが明るかった。手を動かそうとする。動かない。足も動かない。口を開こうとする。声も出ない。わかっていることは一つだけ。もう袋の中にはいない。それでも動けない。顔の上に光がある。死んだのかどうかわからない。


前の出来事はとても短い時間に感じた。それなのに、その中で僕はとても長い苦しみを味わった。あの時は地獄にいるようだった。永遠で、果てしない痛みだった。


もう一度目を閉じたいと思った時、誰かの声が聞こえた。


「起きた」


誰の声かわからない。ここがどこなのかもわからない。その後、すべてが再び暗くなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。