プロローグ、りんご二つ
刃の先が再び腕の皮膚に触れたとき、僕はうめき声を漏らした。
父さんは決して深く切り込まない。細い線を一本引くだけだ。血がにじむ程度。それだけで、夜がまだ終わらないことを僕に理解させる。
「動くな」
ビールの匂いが狭い部屋に充満する。血の匂いよりも強い。壁に染みついた湿った匂いよりも強い。
僕は床を見つめた。足元に三本のひび割れがある。もうずっと前から覚えている。一本目は稲妻の形。二本目は机の下で途切れている。三本目は黒い染みに覆われていて、何度床を洗っても完全には消えない。
「プエボ」
僕は頬の内側を噛んだ。
「はい、父さん」
父さんの指が刃の柄を握り直す。その動きだけで背筋が冷たくなる。
「正しく答えろ」
喉の奥で息を殺し、僕はうなずいた。
「はい、父さん」
刃がさらに深く押し込まれる。喉から出かけた声を僕は飲み込んだ。
昔の父さんはこんなに僕を傷つけなかった。母さんが死んで、父さんが仕事を失ってから変わった。最初は顔を赤くして、ふらふらと帰ってくるだけだった。そのうち皿を投げ始め、僕を平手打ちするようになった。そして手近にあるものを使うようになった。
いつからこれが日常になったのか、僕にはわからない。ただ、毎晩ドアから隠れ場所までの足音を数えていた。一。二。三。足音が机の近くで止まれば、僕は黙らなければならない。瓶を落としたら、走らなければならない。父さんが低い声で僕の名を呼んだら、出て行って頭を下げなければならない。
今夜、僕は走るのが遅れた。だから刃が僕を傷つけるために父さんの手にあった。
その後、父さんは満足そうに笑った。安心できる笑みではなかった。
「明日は働け」
僕はうなずくしかなかった。
「覚えてるか。市場に行くんだ」
またうなずく。
「何か持ち帰れ。もしなければ……」
僕は父さんの顔を見た。その手は僕の思考より速く動いた。平手打ちで耳が鳴った。横に倒れ、唇の血の塩辛さを感じた。
「もしなければ、帰ってくるな。僕に会うな」
僕は手のひらで床を拭った。埃が新しい傷に付着する。なぜお金をくれないのに食べ物を持ち帰れるのかと聞きたかった。なぜ父さんは働かないのかと聞きたかった。なぜいつも全部僕のせいなのかと聞きたかった。
でも答えはわかっていた。どんな答えも今夜を短くしない。
その夜、父さんがほとんど眠りかけた頃にノックの音がした。重い足取りで起き上がる。僕は床に座ったまま、まだ血が止まらない傷を手で押さえていた。
数人の女が入ってきた。香水とアルコールと外の冷たい空気の匂いをまとっている。一人が小さな袋を父さんに渡した。父さんはドアのそばで中身を数え、服の内側にしまった。
「この子はまだ小さい」
女の一人の声。香水の匂いが僕の鼻を刺す。
「強い子だ」
父さんの声はドアの方から。袋を服にしまい終えた手が、まだ内側に残っている。
僕には何の話かわからない。ただ、誰かが僕を強いと言うとき、夜はたいてい長くなる。
一人が僕の前にしゃがんだ。指が僕の髪にそっと触れる。後ずさりしそうになったが、父さんが見ていた。
「名前はプエボ、でしょ?」
僕は黙っていた。
「いい子ね」
その言葉が嫌いだ。そう言う人たちは、僕を本当にいい子だと思ったことはない。ただ、僕に逆らってほしくないだけだ。
女は僕の腕の傷に何かを塗った。冷たい感触。それから小さなカップを差し出した。
「飲みなさい」
僕は首を振った。父さんが女の後ろに立っている。僕は結局飲み下した。苦い味。喉が熱くなる。しばらくすると、部屋の音が遠くなり、壁の向こうから聞こえるようにぼやけた。
閉じた扉を覚えている。父の手ではない手を覚えている。服が引っ張られ、ひび割れた天井を見つめた。
その後、記憶は途切れ途切れだ。笑い声があった。黙れと言う声があった。体が硬くなる痛みがあった。僕は頭の中をこの部屋から遠ざけるために、天井のひびを数えようとした。一。二。三。
僕は泣かなかった。泣けば、彼女たちがそこにいる時間が長くなるだけだ。
朝近く、最後の女が僕の頭を撫でた。何か言ったが、よく聞こえなかった。謝ったのかもしれない。眠れと言ったのか。それとも、僕がまだ息をしているか確かめただけか。僕には永遠にわからない。
ただ、彼女たちが去った後、僕の体は自分のものではないように感じた。
ここ数週間、口に出せない体の部分がかゆくて痛む。下着に染みを見つけることもある。それが病気なのか、傷なのか、まだ理解できない別の罰なのか、僕にはわからない。
誰かに聞きたい。でも誰に。父さんは笑うだろう。市場の人は僕を気持ち悪いと言うだろう。あの女たちは、僕の痛みをまた来る口実にするかもしれない。
だから僕は黙って、一人で抱えている。
日が昇りかけた頃、僕はまだ生きていた。家の裏で雪解け水を使って顔を洗い、同じ服で市場へ向かう。手は冷たい空気に触れるたびに痛む。
今日は市場から何かを持ち帰らなければならない。でなければ帰れない。昨夜の警告よりひどいことになるかもしれない。
市場に着くと、僕は果物売りの近くに隠れて様子をうかがった。持ち主が机に背を向けるのを待って、走り出し、食べるための林檎をいくつか取った。
一つ。手がまた動く。二つ。そして僕は稲妻のように走った。
「泥棒!」
その叫びに別の声が続く。
「プエボ、この野郎! 捕まったらただじゃ済まないぞ!」
僕は息が焼けるまで走り続けた。右手に林檎を一つ握り、もう一つは服の下に隠した。どちらも食べなかった。父さんが待っている。
家に着いても、父さんは礼を言わなかった。僕は林檎を一つ差し出した。父さんはそれを見て、壁に投げつけた。林檎は割れた。僕は床に散った皮を見つめた。
「一つだけか?」
僕はゆっくりともう一つの林檎を取り出した。渡す前に父さんが僕を平手打ちにした。体が倒れる。林檎が転がっていく。父さんは振り返らずに出て行った。
僕は床に横たわったまま。唇から血が木の板に落ちる。一滴。二滴。三滴。ドアの音が消えるまで数えた。
それから這って林檎を拾った。林檎は汚れていた。形の崩れた袖で拭く。そして生まれて初めて、僕が先に齧った。
味は同じだった。この林檎はまだ甘い。母さんがいつも買ってくれたのと同じだ。
こんな夜の後でも何かが甘く感じられることがあるなんて、と僕は泣きそうになった。
外では雪が降り始めている。家の中では父さんが僕の名を叫んでいる。僕は林檎を両手で抱きしめた。そして数秒間、聞こえないふりをした。




