触れる前に
朝、父は剣を持っていなかった。
庭の練習場の端、あの木の下に立って、両腕を胸の前で組んでいた。何かが終わるのを待つような姿勢だった。いつもなら父は兄の前に立ち、振り方を見せている。今日はただ立っているだけだった。
台所の扉から庭までの歩数を数えた。四十歩。あの木から的板までは、父の歩幅で十四歩。
部屋の引き出しの菓子は、朝のうちに新しいものへ替えられていた。誰が替えたのかは見ていない。誰なのかは分かっている。古い菓子はどこにも見当たらなかったし、誰もそのことに触れなかった。
ワイヴァーンが小さな弓を差し出した。井戸で頭から水をかぶったあとで、緑の髪がまだ濡れている。水滴が首筋を伝い、襟に染みを作った。
「緊張するな」
その声は低く、湿った空気に溶けた。
「父さんはただ見たいだけだ」
僕は眉をひそめた。どうして急に、という言葉が喉の手前で止まる。
「母さんが、お前は弓が打てるって言ったんだ」
ワイヴァーンは肩をすくめる。どうしてそんなことを、と思うが、口には出さない。
「打てないよ」
僕の声は自分でも意外なほど平坦だった。
「板に矢を刺せるじゃないか。俺が同じ歲のころよりましだ」
自分で言って満足したのか、ワイヴァーンはひとりで頷いた。それから僕の肩を軽く叩き、すぐに手を引いた。
「いいから、ちゃんと立て。足は開け。殴られるのを待つみたいな格好はやめろ」
足を開いた。弦を引く。腕が少し震えた。
一本目の矢は、大きく左へ逸れた。
木の下から、父は何も言わなかった。ただ小さな動きがあった。首をわずかに傾げる。頭の中で何かを書き留めるような仕草だった。
二本目は的板の端に刺さった。三本目はほとんど中心だった。
「惜しい」
ワイヴァーンの声は、僕よりも明らかに嬉しそうだった。彼は拳を握り、宙で小さく振った。
父の足音が芝生の上で聞こえた。数えなかった。的を見つめるのに忙しすぎた。それが間違いだった。
「肘が低すぎる」
声は平坦だった。腕を直すために、手が上がる。
何かを決めた覚えはない。
気づいたときには、膝が地面についていた。弓は手から離れていた。両腕が頭を覆い、背中が丸まって、上にある影に向かって、速くて硬い何かを待っていた。
速くて硬いものは来なかった。
自分の息が聞こえた。近すぎて、短すぎた。遠くで、木の剣が地面に落ちる音がした。ワイヴァーンだ。
耳の中で脈を数えた。ひとつ。ふたつ。
父の手はまだ宙にあった。腕の隙間から見えた。開いていて、指が少しだけ離れていて、動いていない。大きな手だった。指の関節には小さな傷跡がいくつも残っている。
その手は速く落ちてこなかった。壊れ物を下ろすみたいに、ゆっくりと下ろされた。
「ワイヴァーン」
父は振り返らなかった。その声は木の幹に吸い込まれるように低かった。
「剣を拾え」
ワイヴァーンの喉が鳴った。何か言いかけて、口が開く。
「父さん、俺は」
父の背中が、その言葉を遮った。
「拾え」
ワイヴァーンが拾い上げた。唾を飲み込む音が聞こえた。
父が膝をついた。重い膝が僕の前の地面に触れ、ズボンに埃がつく。彼のような人間が庭で膝をつくはずがないと、僕は知っていた。両腕で頭を覆ったままでも、それだけは分かった。
「ルシアン」
答えなかった。
「お前の肘に触る」
父は一拍置いた。風が木の葉を揺らす音だけが、その間を埋めた。
「肘だけだ。少しだけ」
昔はいつもそうだった。大人は先に触って、あとで説明する。あるいは説明しない。だから、聞かれるのを待った。
「いいか」
その言葉は、よそよそしく響いた。声を出さずに、頭を下げたまま頷いた。
手が肘に触れた。温かくて乾いていて、指の先はざらついていた。腕を指二本分だけ持ち上げ、それから素早く手を引いた。一拍だけ。
「そうだ」
父は立ち上がり、僕を見下ろした。その影が僕の顔にかかる。
「立て」
立ち上がった。膝は汚れていた。父はそれを払わなかった。
「顎まで引け。息を吐いてから離せ。吐く前じゃない」
それだけだった。なぜ膝をついたのかは聞かなかった。怖がらなくていいとも言わなかった。三歩下がった。三歩、わざと音を立てて下がり、待った。
弓を取った。
顎まで引く。息を吐く。
矢は的の中心に刺さった。赤く塗られた小さな円の、ちょうど真ん中に。
ワイヴァーンが叫び、すぐに口を手の甲で塞いだ。
「いい」
父の声は時刻を告げるみたいに平坦だった。それから振り返り、木の方ではなく家の方へ歩いていく。その背中を、庭を横切り、低い垣根を越え、一階の窓のところまで見送った。母がそこに立っていた。
母は見ているわけではなかった。片手でカーテンを握り、顔は半分、影に隠れていた。
父は窓の前で止まった。ノックはしなかった。ただ黙って少しの間そこに立ち、それから右手を二回、開いて閉じた。遠くから見えた。二回。
カーテンが動き、閉じた。
「ルシアン」
ワイヴァーンが隣に立っていた。木の剣は地面に垂れている。
「大丈夫か」
ワイヴァーンの声は少し上ずっていた。
「うん」
僕は短く答えた。それだけでは足りないと分かっていたが、それ以上の言葉が見つからなかった。
「父さんがまさか」
ワイヴァーンの声は途中で途切れた。何を言おうとしたのか、僕には分からない。
「お前のせいじゃない」
ワイヴァーンは首を振った。
「分かってる」
彼は気まずそうに首の後ろを掻き、靴を見つめた。
「でも、先に言えたよな。お前が急に触られるの、嫌だって。前から知ってたし」
答えなかった。靴の先で芝生を蹴る音だけが、僕の代わりに何かを言おうとしていた。
彼は少し迷ってから口を開いた。
「もう一回やるか」
その言葉に、僕は一瞬だけ目を上げた。木の下の父の背中は、もう窓の向こうに消えていた。
「もう一回」
ワイヴァーンは眉を上げた。
「本当に」
僕は弓を持ち直した。
「喋りすぎると、気が変わる」
ワイヴァーンは笑った。安心したような笑い方だった。両手を宙に上げた。
「分かった。分かった。黙る」
黙っていなかった。もちろん。でも練習が終わるまで、彼は僕の肩から離れて立っていた。僕が頼んだわけではない。
夕方、僕は読書室の床に座った。母の椅子のそばだった。母は昨日と同じ本を開き、読み聞かせるでもなく、いつもよりゆっくりとページをめくった。
そのページには、川辺に立つ鹿の絵があった。角の形はもう覚えていた。
母の手が下りてきた。ゆっくりと、僕の視界の端を通って。頭にすぐ触れはしなかった。宙で止まる。長いこと、近いところで、僕自身が決められるように。
僕は退かなかった。
一本の指が髪に触れた。軽く、それから待った。
次のページまで、そうさせておいた。
夜、食卓に集まったとき、父はいつもどおり先に座っていた。収穫の話も、商人の話も出なかった。
両手をテーブルに置いた。手のひらを下にして、開いて、見えるように。それからスプーンを持ち上げた。
食事の間、ずっと見ていた。
塩に手を伸ばすとき、手が動く前に、父は低く言った。
「塩を取る」
母は振り返らなかった。ワイヴァーンはスープに集中しているふりをした。
カップに手を伸ばし、言った。
「カップ」
誰も笑わなかった。
僕は皿に目を落とした。パンがあった。丸ごと、小さな皿の上に。二つに割った。また二つ。いつものように袖にパン屑が入った。誰も見ていなかった。あるいは、見ていると言わなかった。
テーブルの向こうで、父の手がスプーンの上で止まった。大きく、開いていて、とてもゆっくりだった。
それから三度の食事の間、父は一度も、前もって告げずに手を動かさなかった。
僕はそれを数えた。皿の上のパン屑と同じように、数えなければ消えてしまいそうだった。木の下に立つ父の背中を、窓の向こうの母の手を、ワイヴァーンの揺れる緑の髪を。全部、数えた。数えるたびに、何かがひとつずつ、確かに変わっていく音がした。




