↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Breakgod  作者: 風雅 白眉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/23

第8話 島の遺跡


◇◇◇◇


 南極近海の島が隆起した報告は、メタ・シャルマに届いてから三日後に、帝国全体

へと広まった。


 最初の報告は簡潔だった。


「南極近海の海域に、不明の島が出現。地質調査の結果、自然な地殻変動によるもの

とは考えにくい。調査隊の派遣を推奨する」


 調査隊の編成は速かった。


 帝国にとって、不明の現象は全て調査対象だった。地球意思による変化か、それ以

外の何かによるものかを判断することが、帝国の役割の一つだった。


 調査隊には、複数の属性の戦士が含まれた。地の属性を持つ者、水の属性を持つ者、

そしてエーテル・コアの感知に長けた者。総勢二十名の精鋭部隊だった。


 その中に、元アシュヴィン金将隊の隊員だった一名が含まれていた。


 ダレン・ヴォルク。超印三つを持つAクラス戦士だった。


 好奇心旺盛で、行動派で、仲間思いで明るい人物だった。


 それが、最後まで変わらなかった彼の姿だった。


◇◇◇◇


 調査隊が島に到達したのは、出発から四日後のことだった。


 島は小さかった。直径五キロほどの、岩と土だけでできた島だった。植生はなく、

水もなかった。ただ、地面が不自然に盛り上がっており、明らかに最近に隆起したこ

とがわかった。


 地面の一部に、亀裂があった。


 亀裂の奥は、地下へ続いていた。


「空洞がある」調査隊長が言った。「中を確認する」


 隊員たちが亀裂を広げ、地下への入口を確保した。


 暗かった。しかし通気があった。生き物の気配はなかった。ただ、何か特殊な気配

が、地下から漂っていた。


「……何だこの気配は」一人が言った。


「エーテル・コアに似ているが……違う」別の一人が言った。「何か、全く異なるも

のが混じっている」


 慎重に降りた。


 地下は広かった。天井が高く、広大な空間が広がっていた。そして、その空間の中

心に、遺跡があった。


◇◇◇◇


 遺跡は古かった。


 石造りの構造物が、風化して崩れかけながらも、その形を保っていた。文字が刻ま

れていたが、帝国の記録にある文字とは異なる形だった。非常に古い時代の、あるい

は全く異なる文明の文字だった。


「……これは」調査隊長が言った。「いつの時代のものだ」


「わかりません」調査員の一人が言った。「しかし地層の状況から、数千年以上前の

ものと推測されます」


「数千年以上」


「それ以上かもしれません」


 調査が始まった。


 記録と採取が行われた。全員が慎重だった。


 しかしダレン・ヴォルクだけが、少し別の動きをしていた。


 彼は遺跡の中心部にある、一つの石板に興味を持った。他の石造りの部分とは異な

る素材で作られた石板だった。その表面が、微かに光を帯びているように見えた。


「……これは何だろう」


 誰にでもなく、つぶやいた。


「ダレン、勝手に動くな」仲間が言った。


「少し見るだけだ」ダレンは言った。「見るだけなら問題ない」


 そして触れた。


 軽い気持ちで、ただの好奇心で。


 次の瞬間、全てが変わった。



◇◇◇◇


 光があった。


 石板の表面から、漆黒の光が溢れ出した。光と呼ぶには、それは暗すぎた。光の形

をした闇、とでも言うべきものが、石板からダレンの手を伝って全身に広がった。


 ダレンが硬直した。


 仲間たちが駆け寄ろうとした。しかし見えない力が、全員を押し返した。


「ダレン!」


 ダレンはゆっくりと振り返った。


 目が、変わっていた。


 明るく好奇心に満ちた目が、邪悪な色に染まっていた。全く別の何かが、その目に

宿っていた。


「……ようやく」


 ダレンの口が動いた。しかしダレンの声ではなかった。


「目覚めることができる」


 声は低く、古く、この世界のものではない響きを持っていた。


「我は闇の御子、ツァド・クア」


 遺跡全体が振動し始めた。


「これよりこの世界は余が思うままに――――」


 調査隊の全員が、後退した。


 ダレン・ヴォルクの体を乗っ取ったツァド・クアが、闇の光を纏って立っていた。


 これが始まりだった。


 帝国と闇の御子との戦いの、最初の火ぶたが切られた瞬間だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。