第6話 超印の積み重ね
◇◇◇◇
それから二ヶ月が過ぎた。
ロスタムは超印二つ目を取得し、C級戦士となった。
C級になったことで、演習の相手が変わった。これまでのB級戦士との演習に加え、
実際の任務への参加が許可された。帝国の警邏任務や、エーテル・コアの融合者の護
送任務などだった。
実戦は、演習とは違った。
演習には規則があった。どこまでやっていいかの制限があった。しかし実戦にはそ
れがなかった。相手は帝国の法に従わない者や、外法認定された者たちだった。
ロスタムは初めての実戦任務から戻った後、しばらく黙っていた。
クレイグが声をかけた。
「どうした」
「……実戦は、演習とは違う」ロスタムは言った。
「そうだな」
「相手が、人間だ」
「そうだ」
「演習の時は、倒すことに抵抗がなかった。しかし実戦では……」
「止まりそうになったか」
「なりかけた」ロスタムは正直に言った。「しかし止まらなかった。仲間が危なかっ
たから」
クレイグは少しの間、ロスタムを見た。
「最初はそういうものだ」クレイグは言った。「止まりそうになることが正常だ。止
まりそうにならない者の方が、長い目で見ると危うい」
「なぜだ」
「感覚が麻痺するからだ」クレイグは言った。「実戦に慣れすぎると、相手が人間で
あることを忘れる。そうなった者を、俺は何人か見てきた。末路はよくない」
ロスタムは頷いた。
「覚えておく」
◇◇◇◇
超印三つ目を取得したのは、配属から五ヶ月後のことだった。
Aクラスへの昇格だった。
超印三つ目の取得は、これまでの二つとは異なる場所で起きた。
演習中でも、任務中でもなかった。
ある夜、メタ・シャルマの一区画で爆発が起きた。外法の者による攻撃だった。
ロスタムが偶然その場に近かった。
駆けつけた時、そこには帝国の民間人が十数名と、外法の者の集団がいた。
外法の者たちは超印を複数持つ者たちで、民間人を人質として立てこもっていた。
ロスタムは状況を見た。
並列して複数のことを考えた。まだ並列思考は持っていなかったが、この時のロス
タムは自然と複数の視点で状況を分析していた。
人質の位置。外法の者の配置。逃げ道。自分の力でできること。
計算が終わった。
動いた。
物質融合を使い、壁と融合して壁の中を移動した。外法の者たちの背後に出た。
一人目を無力化した。
残りが気づいた。しかし遅かった。
ロスタムはその場で超印融合の感覚を初めて意識的に完成させた。融合装甲が、体
の外側に展開された。
超印三つ目が、刻まれた瞬間だった。
人質は全員無事だった。
その報告を聞いたガインが、翌朝一言だけ言った。
「なるほどな」
ロスタムにはその言葉が、最大の評価だとわかるようになっていた。




