↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Breakgod  作者: 風雅 白眉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/23

第3話 旅立ち

◇◇◇◇


 翌朝、ロスタムは部落を出た。


 夜明け前だった。まだ住民たちが眠っている時間を選んだ。長い別れの言葉が、ロ

スタムには苦手だった。泣かれるのも、引き止められるのも、どちらも困った。だか

ら静かに、一人で出た。


 持ち物は少なかった。


 布袋一つに、三日分の食料と、父の形見の短刀一本。それだけだった。


 部落の入口で、カリムが待っていた。


「知ってたか」ロスタムは言った。


「お前が黙って出るのはわかってた」カリムは言った。

「だから先に起きた」


 二人はしばらく黙っていた。


「昨日のことだが」カリムは続けた。

「お前が死ぬと思った」


「俺も思った」


「しかし死ななかった」


「そうだな」


「それは……何かが、お前を生かしたということだ」カリムは言った。

「それが何かはわからない。しかしお前は選ばれた。俺はそう思ってる」


 ロスタムは胸の奥を感じた。あの温かさは、今も消えていなかった。

ブリリアント・クイーンの存在が、静かにそこにあった。


「行ってくる」ロスタムは言った。


「ああ」カリムは言った。

「死ぬなよ」


「さっき選ばれたって言ったばかりじゃないか」


「選ばれた者でも死ぬ時は死ぬ」


 ロスタムは笑った。カリムも笑った。


 それで十分だった。


 ロスタムは歩き始めた。

ジャングルの中の細い道を、夜明けの光の中で。振り返らなかった。

振り返れば、戻りたくなるとわかっていた。


 足音が、遠ざかっていった。



◇◇◇◇


 ガイン・アスラ・カシュヤパを探すことは、思ったほど難しくなかった。


 歩いて三日、最初の町に出た。そこで帝国の存在を初めて知った。

大きな掲示板に、帝国の紋章と共に案内が書かれていた。

文字が読めないロスタムは、町の人間に声をかけた。


「ガイン・アスラ・カシュヤパという人を探している」


 相手が固まった。


「……ブレイクゴッドのガイン様のことか」


「ブレイクゴッド?」


「お前、本当に知らないのか」


 ロスタムは知らなかった。

ブレイクゴッドという言葉も、超印という言葉も、エーテル・コアという言葉も、この時のロスタムは何一つ知らなかった。


 町の人間は、長い時間をかけて説明してくれた。


 エーテル・コアとは何か。超印とは何か。

ブレイクゴッドとは何か。そしてガイン・アスラ・カシュヤパとは何者か。


 話を聞いたロスタムは、少しの間黙っていた。


「……その6人の中の一人が、俺を呼んだのか」


「そうらしいな」


「なぜ」


「さあ」と相手は言った。

「しかし呼ばれたなら行け。ガイン様が呼んだ人間が断った話は聞いたことがない」


「断れるのか」


「理論上は」と相手は言った。

「しかし賢い選択ではない」


 ロスタムは再び歩き始めた。


 今度は目的地がある歩みだった。


メタ・シャルマ。


帝国の本拠地にして、聖都。そこにガイン・アスラ・カシュヤパがいる。


 ロスタムは、初めて聞くその名前を口の中で繰り返した。


 メタ・シャルマ。


 全長百二十キロメートルの超巨大ヴィマーナ。


 どんな場所なのか、ロスタムにはまだ想像もつかなかった。



◇◇◇◇


 帝国の輸送ヴィマーナに乗ったのは、旅を始めて六日目のことだった。


 ある検問所で、帝国の兵士がロスタムの体から発せられる周波数を感知した。


「お前、エーテル・コアと融合したな」兵士は言った。


「そうらしい」ロスタムは言った。


「どのエーテル・コアだ」


「知らない。ブリリアント・クイーンとかいうやつだと思うが」


 兵士が固まった。


 別の兵士が来た。また固まった。さらに上の階級の者が来た。その者も固まった。


 やがてロスタムは、検問所の一室に通された。


「少し待ってもらえるか」と言われた。


「何を待つんだ」


「確認が取れるまで」


 ロスタムは椅子に座って待った。


 一時間後、その部屋の扉が開いた。


 入ってきたのは、あの男だった。


 ガイン・アスラ・カシュヤパが、入口に立っていた。その目が、ロスタムを見た。


「迷子になるかと思った」ガイン は言った。


「六日で来た」ロスタムは言った。

「迷子にはなっていない」


「徒歩でか」


「最後の一日はヴィマーナに乗った」


 ガインは少しの間、ロスタムを見た。それから、踵を返した。


「ついて来い」


 それだけだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。