第13話 ツァド・クア顕現!
◇◇◇◇
戦闘が三時間続いた頃、空気が変わった。
暗黒感染者たちの動きが、一斉に止まった。
全員が同じ方向を向いた。
メタ・シャルマの中心部。聖都廟の方向。
そして暗黒のエネルギーが、収束し始めた。
散らばっていた感染者たちから、暗黒想念が引き抜かれ、一点に集まり始めた。感
染者たちが次々と崩れ落ちた。力を失ったのではなかった。暗黒想念だけが抜き取ら
れ、感染者たちは自分の力だけになった。
その暗黒想念が集まった場所に、形が生まれた。
人の形ではなかった。
光の逆数のような、純粋な暗黒のエネルギーが、巨大な柱となってメタ・シャルマ
の中心に立ち現れた。
ツァド・クアだった。
ダレン・ヴォルクの体を使っていた時とは、全く異なる姿だった。その時は、人の
体という制限の中にいた。しかし今は、制限がなかった。本来の力を解放した、真の
姿だった。
「……余が直接動く必要があるとは」
声が来た。言語ではなかった。暗黒のエネルギーが直接、意味として伝わってきた。
「この世界は、余が思っていたより、手強い」
暗黒の柱が広がった。
その周囲から、暗黒想念が波のように放出された。
近くにいた戦士たちが、次々と膝をついた。超印を複数持つ者でも、この規模の暗
黒想念には抗えなかった。
「人の意志など」ツァド・クアは言った。
「暗黒の前では塵に過ぎない」
四聖導騎士が、その場で倒れた。
ロスタムも、膝をついた。
暗黒想念が、物質融合の防御をこじ開けようとしていた。これまでの感染者からの
暗黒想念とは規模が違いすぎた。
「……強い」ロスタムはつぶやいた。
膝をついたまま、地面に手を突いた。
地の力を感じた。地面が、ロスタムを支えていた。物質融合の根が、地の底へと繋
がっていた。
胸の奥の温かさが、強くなった。
「……まだだ」ロスタムは言った。「まだ倒れない」
◇◇◇◇
その時、複数の気配が来た。
北から。東から。西から。空から。
バルト・ロメオが来た。
北方の戦線を、考えられないほどの速さで片付けてきた筆頭ブレイクゴッドが、メタ・シャルマに戻ってきた。その存在感は、ツァド・クアの暗黒とぶつかり合って、空気が震えるほどだった。
ソニック・バスターが来た。海上防衛を終えた龍神系ブレイクゴッドが、八大守護龍の力を纏いながら降りてきた。
ジョー・ツェッペリンが来た。神霊系の力が、暗黒のエネルギーと対峙する。
トロイメル・デューンが来た。暗黒想念の分析を続けてきた魔術系が、その知識を実戦に移す時が来た。
そしてガイン・アスラ・カシュヤパが来た。
五人が、揃った。
「ツァド・クア」バルト・ロメオが言った。その声は静かだった。しかしメタ・シャルマ全体に届く声だった。「お前の相手は、俺たちだ」
ツァド・クアの暗黒の柱が、五人に向いた。
「……久しぶりに、力を使い切れる相手が来た」
決戦が、始まった。




