第12話 聖都廟への進行
◇◇◇◇
夜が来た。
メタ・シャルマ全体が、その夜を感じた。通常の夜とは違う。空気の質が変わっていた。
光が薄くなっていた。ブリル・ドライブの発する駆動音が、いつもより低く沈んでいた。
地球意思が、何かを感じていた。
それが人間たちにも伝わっていた。
帝国の情報部門から最終報告が届いた。
「暗黒感染者の大規模集団、メタ・シャルマの全方位から接近中。」
「推定数、三千名以上。全員がエーテル・コア融合者。超印保有者が多数含まれる模様」
三千名。
帝国の精鋭部隊を結集しても、これほどの規模の同時侵攻を防ぐことは容易ではなかった。
しかし帝国は動いていた。
ガイン・アスラ・カシュヤパの全体指揮の下、各部隊が配置についた。
アスラ金剛騎兵団がメタ・シャルマの外縁を守り、各ブレイクゴッドの直属部隊が内側の守りに就いた。
そしてジオン・ディ・パラディンが、四聖導騎士と共に聖都廟の入口に立った。
◇◇◇◇
最初の波が来た。
暗黒感染者の集団が、メタ・シャルマの各所に同時に押し寄せた。
外縁の防衛ラインで、激しい戦闘が始まった。
アスラ金剛騎兵団のメガロンが起動し、最前線で感染者の集団を押し返した。
グスタフ・ギガントスとアブドール・カシムの連携指揮が、流動する戦線を維持した。
しかし数の圧力は凄まじかった。
一ヶ所を抑えれば、別の場所が突破された。
ロスタムは東側の防衛ラインで動いていた。
物質融合を使い、感染者の攻撃を受け流しながら、仲間を守りながら、ひたすら戦い続けた。
暗黒想念が飛び交っていた。
しかしロスタムには届かなかった。
物質融合の力が、自然にそれを処理し続けた。
しかし周囲の仲間たちは違った。暗黒想念の圧力に、少しずつ消耗していった。
「……俺には届かないのに、仲間たちには届く」ロスタムはつぶやいた。
「なぜ今までこれを使えなかった」
胸の奥の温かさが、応えた。
まだ早かった。まだ力が足りなかった。しかし今は。
「今ならできるか」ロスタムは感じた。
ブリリアント・クイーンが、肯定するように揺れた。
◇◇◇◇
聖都廟への道では、四聖導騎士が戦っていた。
玄武白虎朱雀青龍
の四名が、感染者の大波を前に複合奥義を展開していた。
「ディーヴァ・ストライク!」
四属性の力が一点に集中し、巨大な光の奔流が感染者の集団を貫いた。
ブレイクゴッド級のパワーを誇る奥義が炸裂した。感染者の第一波が、押し戻された。
しかし四聖導騎士の消耗も激しかった。
「どれだけ来る」ジャジーが言った。
「まだ続く」ライが言った。
「どちらにせよ、ここは通さない」ライアンが言った。
「そうだな」ケンが言った。
「ここを通ったら聖都廟に直接届く。それだけは駄目だ」
第二波が来た。
四聖導騎士が再び構えた。
その時、別の方向から足音が来た。
ロスタムとクレイグだった。
「遅かった」ライアンが言った。
「すまない」ロスタムは言った。
「東側に手間取った」
「今来てくれただけでいい」ライアンは言った。
「ロスタム、お前には頼みたいことがある」
「なんだ」
「俺たちが前を抑える。その間に……俺たちへの暗黒想念を、なんとかしてくれ」
「できるかもしれない」ロスタムは言った。
「試してみる」
「試す、か」ジャジーが笑った。
「その自信のなさが、逆に信用できるな」
ロスタムは物質融合を展開した。
これまでとは異なる使い方だった。
自分を中心に、物質融合の力を外側に向けて広げた。
周囲の空気と融合した。空気の中を流れる暗黒想念を感知した。
―――見えた。————
暗黒想念の流れが、空気の動きとして感知できた。どこから来て、どこへ向かっているかが、物質融合の感覚で捉えられた。
その流れに、逆の力を送り込んだ。
物質の性質を変える力。暗黒想念が持つ「物質」としての性質を、別の方向に変えた。
四聖導騎士に向かっていた暗黒想念が、拡散した。
「……」ライアンが気づいた。
「暗黒想念が薄れた」
「そうだ」ロスタムは言った。
「長くは続けられない。早く終わらせてくれ」
「わかった」ライアンは言った。
「全力でいく」
ディーヴァ・ストライクが、再び炸裂した。




