表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半歩 ~守・破・離 短き刃 長き道~  作者: 止水


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/129

第三十八話 オープンキャンパス二日目 午前 澪の正体と雪の演武

オープンキャンパス二日目

朝から人、人、人。


「こちらでーす! 案内してまーす!」

春日は、昨日と同じ中庭で動いていた。


(……来る きっと来る)

嫌な予感は、だいたい当たる。


「来たよー」

来た。


しかも軽い。

しかも元気。


「おはよう、春日くん♪」


「……おはようございます」

(やっぱり来た……)


そのまま、すっと距離を詰めてくる弓場。

朝から距離感が近い。


(近い……)


「景子」


横から声。

弓場が振り向く。


「おはよ、江梨子」

御影が手を上げる。


そして――

その後ろ。


カフェオレ片手。

妙に力の抜けた空気の少女。


「……あっ、昨日の…」


御影が気が付き あいさつを

「おはようございます 湊川先輩」


「……え?」

弓場、二度見。


もう一度見る。三度見…


カフェオレ。

ゆるい姿勢。

距離感。

可愛い髪型


「え、この人……先輩?」


澪、ちらり。


「なんだぁ?」


弓場、思わず正直に言う。

「いや、もっとこう……同級生とか……」


「君、失礼だねぇ…」

笑っている。


だが。

御影、スッと弓場の横に移動。


声を潜める。

「景子 言葉選んで。」

「ん?」

「この人さ……学園のボス…」


一瞬だけ迷って。

「見た目と中身が一致してないタイプ?」

「うん」

即答。


「え、やっぱり?」

「うん、だいたい逆」

「逆!?」

「油断するとマジ死ぬよ…これマジ」


そういえば… 昨日、一瞬で男子を投げ飛ばしていた

「…いや怖い怖い怖い」


澪、ため息。

「お二人さん…全部聞こえてるんだけど?」


弓場、反射で直立。

「おはようございます!!」

「あらためて、向洋高校の弓場景子です!!」

「昨日はお世話になりました!!」

「本日はよろしくお願い致します!!」

一気に軍隊式。


御影、吹き出す。


澪は、数秒見て――

「……うん、元気でよろしい」


それだけ。


(よし、生きた)

弓場、心の中で安堵。


だが、まだ終わらない。


弓場、ちらりと御影を見る。


小声。


「大丈夫だった? あの先輩って…」


「優しいけど、間違って怒らすと…」


「怒らすと?」


「私たちの人生が静かに終わるパターン」


「一番怖いやつじゃん!」

「なんで先に教えてくれなかったのよ!」


「まさか、今日も春日くんと一緒に居るなんて思っても…」


澪、じっと二人を見る。


弓場、ビクッとする。

「で?」

「さっきからコソコソしてるけど?」


弓場、0.3秒で判断。

「いえ!先輩の落ち着いた雰囲気に感動しておりました!」


「へぇ…」

澪、カフェオレを一口。

「どの辺が?」


(来た……詰められるやつ……)


弓場、必死に考える。

「その……」

「こう……」

「“場にいる感じ”が……」


一瞬、空気が止まる。


澪の目が、ほんの少しだけ細くなる。

「……ほう?」


(あ、これ当たり引いたかも)

御影が横で小さく笑う。

「景子、それ正解」


「え、マジで?」


澪、少しだけ笑う。

「まあ、間違ってはないね」


弓場、心の中でガッツポーズ。

(よし、評価ポイント取った!)


だが。

次の瞬間。

「で、何しに来たの?」


直球。


弓場、止まる。

(あ、目的忘れてた)


御影が横から助ける。

「春日くんが目当てでーす。」


即バラし。


「ちょっ、江梨子!」


澪、ゆっくり春日を見る。


春日、固まる。


「へぇー」

澪の一言。


弓場、慌てる。

「違います違います!」

「いや違わないけど違うというか!」

「えっと!」

「観察対象として優秀でして!」


「景子、それ余計にダメな言い方!」


御影、焦る!


澪、面白そうに見る。

「ナンパ?」


弓場、即答。

「違います!」


御影、続けて

「ナンパにしときます!」


一拍。


御影が、軽く目だけで合図する。

「いやその…」

「景子が、昨日の組手で春日くんに興味が――」


「興味…って言い方ねぇ」

「それなら――」


澪、頷く。

「うん、ナンパだね」


「違いますって!」

「獲物を選んでるだけです!」


「景子、もっとダメなやつ! ナンパで手を打って!」


春日、真剣に頷く。

「なるほど」


「理解しないでください!」


御影、笑いながら一言。

「景子、それもう言い逃れ無理」


「えぇぇぇ!?」


澪、カフェオレを飲みながら。

「まあいいよ」

「面白いから」


許可。


弓場、ほっとする。

(この人、基準が分からん……)


そして、澪はちらりと春日を見る。

(よし)

(今日も遊べる)


にやり、と笑った。


少しして。

「で、春日くん」

弓場が、すっと距離を詰める。

「今日も、やる?」


にやり。

「再戦」


春日の動きが、止まる。


「今日は、ちゃんと勝ちにいくよ?」

弓場、楽しそう。


春日、少しだけ視線を落とす。

(小太刀…… 多分、使えば勝てる)


……でも、

(使わない)


決めている。


(だが、素手では……)


沈黙。


その様子を見て、弓場が首をかしげる。

「どうしたの?」


「……いえ」


春日が、ゆっくり顔を上げる。

「自分は―― 一応は、剣士ですので」


澪の目が動く…


弓場、笑いながら

「私、剣使えないよ。」


沈黙。


御影、吹き出す。

「でしょ?」


弓場、頭を抱える。

「え、待って」

「じゃあどうするの?」


澪が横から一言。

「いいじゃん」


二人が見る。


「お互い“慣れてない得物”でやってみれば? ん~ 野球?」


「いやそれ本質から外れてます 試合すら成立しないでしょ!」


「そう?」


澪はカフェオレを揺らしながら笑う

「世の中、だいたいそんな感じで勝負してるよ」


適当。


だが妙に深い。


春日、真剣に頷く。

「……なるほど」

「新たな挑戦ですね…」


「なるほどじゃない!」

弓場、ツッコミ。


御影、笑っている。


そのとき。

「そろそろ始まるよ」


澪が言う。

「雪の演舞」


中庭の一角。

人だかり。


弓場が、そちらを見る。

「ずっと、ランキングが一位の人だっけ?」


「そう」


「へぇ……」

軽い興味。


だが――

次の瞬間。

空気が、変わる。


静まる。


立つ。


一人の剣士。

――雪。

構え。

静か。


(……え?)

弓場の目が、変わる。


動き出す。

一歩。

斬る。

速い。


だが、それだけではない。


(……違う)


軌道。

間合い。

崩し。


(これ……)


次の動き。

踏み込み。

外し。

入り。


(対無手の動き……?)


剣だ。

だが。


(これ、打撃の間合いにも斬り込んでる)


斬りの中に。

崩しがある。

当てるための動きだけではない。


(対応してる……)


素手。

打撃。

近距離。


(全部)


間合いではない。空間そのものを掌握している。

自然に。

内包されている。


弓場の呼吸が、止まる。

「……ねえ、江梨子」


小さく言う。


「今の……」


弓場の目は、完全に雪に向いている。


「素手相手を想定した動き、入ってるよね?」


「しかも、無意識?」


弓場、ゆっくりと息を吐く。

「……やば」


一言。


「これ、私じゃ無理だわ」


あっさり。


その横で。

雪は、何も知らないまま。

ただ、剣を振っている。

(……本人、多分、気づいてないな…)

弓場が、ぽつりと呟く。


そして――

ちらりと、春日を見る。


(こっちは、“逆”か)


剣で素手を制す

素手で剣へ挑む


二つの“特化”。


(この学園て、)

(こんな人たちが、鎬を削っているんだ…)


「さすが、剣士学園……面白すぎでしょ」


小さく。

そう呟いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ