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半歩 ~守・破・離 短き刃 長き道~  作者: 止水


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閑話 三連撃 ー春日の敗北ー

珍しく――春日は落ち着きがなかった。


「……澪先輩!」


学食でカフェオレを楽しんでいる澪のもとへ、小走りでやってきた。


春日は少し間を置いてから、言った。


「折り入って、ご相談があります

 ……相談に近いです」


「珍しいな」


即答だった。


「技か」


「いえ」


「じゃあなんだ」


春日は、少し間を置いてから――

「同じ一年生の御影さんのことです」


(あぁこの前、楽しそうに話していたやつか)

「帰れ…」


「なぜですか」


「面倒な匂いが、思いっきりする」


「重要なんです 澪先輩」


澪はため息をついた。


「……で?」


春日は、真顔のまま続ける。


「実は御影さんに、お礼がしたいんです」


「ほう」


「それで、澪先輩が話していたカフェに誘いました」


「…」


「二回 誘ったのですが、断られました」


「だろうな」


「なぜですか」


即座に食い下がる。


澪は、少しだけ考えてから口を開いた。


「とりあえず、どう誘った? 言ってみろ」



「“美味しいベーカリーカフェがあります。澪先輩に教えていただいた店です”」


「“お礼をしたいので、時間をいただけませんか。 一緒に行きませんか。”と」


「ふ~ん。 それは、まぁ問題、あるな」


即答だった。


春日は、わずかに眉を寄せる。


「どこがですか」


澪は、ゆっくりと指を一本立てる。


「重い」


「……」


「重い、硬い、堅苦しいーー 三連撃だ!

 “お礼される側”にしかなってない」


「ですが、誠意は伝わるはずです」


「伝わって断られてる 最悪の結果だな」


「……」


「では、どうすればいいのでしょうか」


澪は、少しだけ考える。


そして。


「逆に聞こう」


「その御影さんは、何をしてるときが楽しそうだ」


「……」


春日は、思い返す。


軽口… からかい…


「……悪気はなくですが、人を困らせているときです」


「たぶん正解だな」


「それは問題では?」


「問題だが、それが事実だ」


「つまり」


澪が淡々と続ける。


「お前の誘いは、まーたく面白くない」


「完璧で、隙がない」


「だから断られる」


春日の肩が、わずかに落ちる。


「では……どうすれば」


澪は、ふっと息を吐いた。

「ここは、組手と同じだ 相手に“打たせろ”」

「わざと隙を見せろ」


「こちらから先に動く 先に打たせてから決める

 これを”先の後先”という」


「……」


「あと、少し崩せ」


「崩す?」


「虚を突く奇襲で崩す

 相手が構える前、出合頭だ!」


「なるほど…」


「お前に向いた言い方だと」


少し考えてから、澪は再現する。


「“御影、カフェに来い。奢る”」


「命令では?」


「それくらいでいい」


「雑すぎませんか」


「御影にはその方が通じる」


「……本当ですか」


「保証はしない」


「……」


春日は、真剣に悩み――


「やってみます」


(マジか~ こいつ!)

「やれとは言ってないぞ! 責任も取らんぞ!」


――数分後。


廊下。


御影が歩いている。


そこへ、春日が現れた。


「御影さん」


「ん?」


「カフェに来てください」


「また?」


御影は、くすっと笑う。


「やだ。はい、三度目!」


「今回は違います」


「どう違うの?」


春日は、一瞬だけ言葉に詰まり――


「……奢ります」


「前と同じじゃん」


「……来てください」


「やだ はい!四度目!」

「すご~い! 記録更新だね」


春日を見て御影がにこっと笑う。


「今は行かないけど…ね!」


去っていく御影。


残された春日。


しばらく動かず――


「……難しい」


ーーーーーーーーーーーーーーー


――その後。


再び訓練場。


「断られました」


澪は即答した。


「次だ」


「はい」


春日は、真剣な顔で頷く。


いつの間にか近くにいた蓮が、小さく呟いた


「澪……あいつ、春日で遊んでるな」


「御影さんとやらも、食えないな」


どこかで。


御影が、くしゃっと笑った。

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