第九十四話 在り方の継承 ―静かに、次へー
剣士学園
今日は卒業式
天気に恵まれ
風が吹くたび、ミモザの花びらが舞う
その下を――
制服姿の三年生たちが歩いていく
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武道館 校舎前
「……本当に卒業しちゃうんですね……」
御影が、少し泣きそうな顔で呟く。
「朝から泣きすぎだよ」
大石が呆れる。
「だってぇ……!」
「蓮先輩たちが居なくなるんですよ!?」
春日も静かに校舎を見る。
その隣で。
雪が小さく笑った。
「でも、蓮先輩なら卒業式でも騒いでそうね」
全員一致だった。
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その頃。
三年生控室。
「おい蓮、ネクタイ曲がってるぞ」
「え? あ、」
蓮が雑に直す。
「お前、本当に三年生の筆頭か?」
横屋があきれたように言う
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控室の扉が開く。
「失礼します!」
元気よく入ってきたのは御影だった。
「景子、お前また勝手に入って」
「だって最後ですし!」
後ろから大石
なぜか、弓場と春日
ぞろぞろ入ってくる。
「お前ら……ここ三年控室だぞ?」
「しかも、弓場さんは学校が違うだろ」
蓮が笑う。
「少しだけなら良いじゃないですか」
弓場が笑いながら言う。
「……で?」
「何しに来た?」
すると。
御影が突然、深々と頭を下げた。
「鷹宮先輩、ありがとうございました!!」
空気が止まる。
「え?」
御影は顔を上げない。
「鷹宮先輩が居たから、ここまで来れました……!」
春日も続く。
「鷹宮先輩、失礼な言葉が多くて申し訳ありませんでした
それなのに、自分は先輩からは学ぶ事ばかりでした」
弓場も笑う。
「本当に、ご卒業おめでとうございます」
少し沈黙
その後
「……重っ」
蓮が言った
弓場がつっ込む
「せっかく良い空気だったのに!」
御影が呟く
「卒業式に湿っぽくなるの……嫌なんで…先に…」
もう、既に泣きそう
少し蓮は考えて
「じゃあ… 最後くらい 一年生に向けて、先輩らしい事を言おうか」
全員が見る。
「武ってのはさ。
結局、“どう在るか”だから…」
「お前ら、強くなれよ」
静かな声だった。
空気が変わる。
春日が静かに聞いている。
「形でも才能でもない。
最後に残るのは――人間だよ」
蓮が微笑む
その微笑みは、
剣士学園で過ごした時間の全てを 物語っていた
弓場が一言
「なんか… 人生の先輩みたい」
笑う
蓮が突っ込む
「はぁ? 俺、先輩ですけど? ふたつも! 学年上ですけど! おまけに今日卒業する三年生ですが!」
怒涛の突っ込み!
笑いが起こる。
空気が柔らかくなる。
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卒業式
講堂
校歌
卒業証書授与
厳かな時間が流れていく。
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式が終わる
外へ出る卒業生達
在校生達の拍手
御影はもう泣いていた。
「うわああああん!!」
「だから早い!」
大石が引っ張る。
「蓮先輩ぃぃぃ!」
「はいはい」
「やっぱり、卒業しないでくださいぃぃ!」
「無茶言うな」
蓮が笑う。
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卒業生たちは歩いていく
後輩たちは、それを見送る
終わりではない
受け継がれていく
剣も
想いも
在り方も
静かに――次へ
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卒業式典が終わり
一年生には
片付けの業務が
春日は靴箱を整理していた
卒業生の札を外していく
順番に外していく
この後には
新しい新入生の札が入る
いま、外した名札には
「(鷹宮蓮)」
少し眺める
無意識に軽く一礼
順番に外していく
「(新開地長治)」
一瞬、取るのを躊躇う
二度 戦い
二度 勝てた…
そして、多くを学ばせてもらった…
多くを語ったこともない
御礼も述べてない
そして
礼を失する態度、数回…
三年間使われた札
もう、使われる事はない
処分される…
せめて…
目を閉じ
名札に
深く礼を取る
「春日くん!」
御影さんが声を掛けてきた
手に持つ名札を見る
「それ… 新ちゃん… 新開地先輩の?」
「はい 新開地先輩の… え?」
「いま、新ちゃん? え?」
御影が
額に掌を当てる
「バレたか… そうよ 新ちゃん って呼んでるの」
「はあっ???」
春日 硬直
[剛毅木訥]、[質実剛健]、[堅実一本気]、[不撓不屈」
の新開地先輩が…
(新ちゃん?????)
春日 石化
御影がゆっくり話し出す
「はぁ~ 内緒ね」
「私と新ちゃん それに景子…
幼馴染なの… ヘタレの新ちゃんって…」
「これ、誰かに言ったら
後から… 射つ!」
いや、その前に 俺が新開地先輩に…
「あっ!」
「弓場さん!」
「ん? なに?」
「じゃあ、御影さんにお願いすれば、新開地先輩に会えますか?」
「はぁ? 」
「新ちゃんに? 春日くんが?」
「はい!」
「ふーん」
御影が笑う
「なにそれ、武侠小説みたいな会合? ウケるわ〜」
御影が笑いながら
「いいよ あっちも会いたいかもね」
「え?」
「だって、本気で食い下がったでしょ 新ちゃんに
あれでも男だから… 春日くんを認めてるよ 」
御影が真っ直ぐ春日を見ながら
「一応、もののふ だよ… 新開地先輩は…」
その言葉
御影が如何に新開地先輩を信用しているのか
感じた…
一礼
「ありがとうございます 御影さん」
「ちょっと 礼まではいいよ」
御影が笑う
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(あれでも男 って 新開地先輩 俺から見たら
かなりの漢だと思うのですが…)
(御影さんたちの基準… 解りません… )




