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半歩 ~守・破・離 短き刃 長き道~  作者: 止水


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123/129

第八十九話 在り方の剣 ー己すら削ぎ落としてー

澪は見てきた


雪は――私と違う



技を増やさない


術理を重ねない


――守


ただ

削ぐ


余分を削ぎ


迷いを削ぎ


己すら削ぐ




削ぐために

形を崩す


――破


合わせるために

自分を離れる


――離




形の中で在りながら


“自分の中に形が在る”


それだけで…



(ずるいよね… )


(そんな在り方…)


澪は


一歩


踏み込む


(私は出来ない!)


ーーーー


澪の方から


雪の間合いへ


雪が斬る

一の太刀


長刀が

間合いごと薙ぐ



澪の抜刀


その長刀を弾く



二の太刀

袈裟斬り


鎬で流す


切っ先が回る


三の太刀

逆袈裟


峰で受ける


まだ澪の間合いの外


入れない


四の太刀

扇が開く

脛斬り


開かさない

澪が止める


雪が下がる


澪が追うが

離れる


届かない



(足りない…)

お互いが同じことを


思った


ーーーー

(何か…)


雪が澪の足元を見る


間合いは勝ってる


でも、上書きされていく


(何かを…)


ーーーー

雪が斬り込む

一の太刀


澪が受ける

流す


長刀が返る

二の太刀

薙斬り


鎬で受ける

刃を伝う


間合いに入る


雪も

間合いへ踏み込む


澪の刃が

雪への逆袈裟


長刀が周り

鍔元で止める


その刹那


雪が

澪の膝を

自分の膝で絡める


「なっ!」


澪が崩れる


膝を床につく


長刀が

居合刀ごと

澪を押し付ける


三の太刀の如く


居付く


拮抗


鍔迫り合い


澪が

雪の向こうへ

転がるように逃げる


雪も体勢を崩す


振り返る


間合いの外まで

澪は離れていた


片膝立ち


雪に対しての

迎撃の準備


雪は踏み込めない


ーーーー

(ここで…)


澪は驚きを隠せない


あれは、

ー本住吉流の動きでは


(無い…)


春日の動きに近い


なぜ

ー今


ー出来るの


ーーーー

(澪は…)


雪は構えを変える


初めての技


形から動きは知っていた


ただ

対処の仕方が形にあるだけ


使うことも

行う事もない


咄嗟にでた技


……本住吉流の形に守られている

父の言葉


(これも…)


ーーーーー


写す

読む

合わせを知る


形とは、技を覚えるためではない



雪は静かに

小さく微笑む


…形を通して相手を知る…


(誰がこんなこと、考えたんだろう…)



澪が言っていた…


一瞬で

守破離を行うって


(確かに、こういう事かもね…)


ーーーーー


(やっぱり 雪の事 大嫌い)


澪は立ち上がり


鞘を正す



間合いは広く取っている


呼吸を整えるだけの

余裕はある


行住坐臥ぎょうじゅうざが

これ道場


隙は無い


ーーーーー


「雪先生 形の意味ってあるんですか?」

「形の通りに相手が攻めてくるとは限りませんよね」


門下生に聞かれたことがある


解りやすく答えられなかった

「その時は…」


「それに沿った形の動きをするだけですね…」


その答えに

門下生のほぼ全員は不思議な顔をしていた


ありふれた言葉だけど

形が形であるうちは形でしかない…


形が形でなくなってこそ形が活きる…


相手に合わせた形

自ずと湧く…


(言葉って… 難しい…)


ーーーーーーーー


春日は知っていた


本山先輩も

澪先輩も


殆ど先輩方は”形”を中心として技を組み立てていく


自分は違う


ひとつの技

何度も繰り返し繰り返し

身体を練る

鍛錬を行う


それが何種類も続く



新開地先輩は


もっと削ぎ落している


ひとつの動作


それのみを

延々と繰り返す


繰り返す


繰り返す


やがて

動作そのものが


“在り方”になる


その流派の歴史が大きく関わっていることは明確だが


技を道として導くのか

理を術として伝えるのか


大きく異なる


根ざすところは異なっても

目指す頂に違いはない…


ーーーーーー


人によって

積み上げ方は違う


形を積む


理を磨く


技を削ぐ


ただ一つを

繰り返す



けれど――


どれほど道が違っても


最後に残るのは


自分にとって

“どう在るか”


のみ














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