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半歩 ~守・破・離 短き刃 長き道~  作者: 止水


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第八十六話 拘り ーそれぞれの半歩ー

準決勝は終わった。

明日は――決勝。


ーーーーーー


武道館前の広場。

裏口から出てくる春日に、御影たち三人が駆け寄る。


「春日くん!」


弓場が声を掛ける。


「弓場さん。今日も来てくれたんですか?

ありがとうございます」


「春日くん、凄かったよ!」


春日は、少し笑って――


「今日は二回も、負けてしまいました……」


ーーーーーーーーーーーーーー


「そんなの関係ないよ!」


一瞬、驚いた顔。

それから、ふっと力が抜ける。


「……ありがとうございます。

そのひと言、救われます」


少し間を置いて。


「本山先輩も、鷹宮先輩も……凄かったです。

戦えて、良かった……」


これまでを思い出すように、

恥ずかしそうに、照れくさそうに笑う。


その時――


「春日。良くやった。」


澪が裏口から現れる。


「ありがとうございます。

先輩方と戦えたこと。

そして――負けたことを、心から光栄に思います」


言葉を継ごうとした、その瞬間。


「春日!」


鷹宮が歩み寄ってくる。


「鷹宮先輩!」


「おう。いい試合だったなぁ」


「はい!」


「弓場さん、いつも付き合ってくれてありがとな」

―残念ながら三位だよ」


「私に負けたからね〜」


「そうだなぁ……流石、澪」


どこか、晴れやかな顔。


(なんか……腑に落ちないな)


「澪、雪は?」


「あぁ……門下生に囲まれてるよ。

明日勝てば、二年間首席。――あり得ない記録だ」


「なる程……」


「勝ち、譲るか?」


「は?」


蓮を睨みつける


「だよな〜」


軽く笑う。


「春日。今日の試合、面白かったよ」


「ありがとうございます」


弓場が一歩前に出る。


「さて、春日くん。約束、ありましたよね?」


「……あっ。カプチーノ? カプラーゼ?」


「違うよ。

ストロベリー・シュー・フラペチーノ」


「これからカフェ行くんです」


「澪先輩……?」


「私は遠慮しとく。明日があるからね」


「じゃあ鷹宮先輩は?」


「俺も遠慮しとくよ」


(……あの感覚、思い出したいしな)


「じゃあ――明日も武道館、来ます。

 湊川先輩の試合、見ます!」


「おう!」


先輩たちが去っていく。


ーーーーー


夕暮れ。

人の波がほどけていく広場。


春日は、その背中を見送る。


負けた。

二度、確かに


それでも――


この一年で得たものは、

何よりも大きい


今も、胸の奥に残っているものは、熱を持っている


”勝つ”この拘りは

ー下す


そして、この拘りは捨てない


それが自分の在り方だ


春日は、一歩踏み出した。


ーーーーー

御影たちの後について、カフェへ向かう。


(……また行けるんだ、カフェ)


少しだけ、頬が緩む。


彼女たちがいなければ、

こんな気持ちを知ることはなかっただろう。


感謝は、尽きない。


前を歩く三人は、楽しそうに話している。


その少し後ろで――


春日は、ふと現実に戻る。


(……お金、足りるかな)


少しだけ、歩幅が縮まった。


ーーーーーーーーーーー



渦が森流道場


練習をする蓮


今津先輩が声をかける


「蓮 今日の最後の動き…」


蓮が今津の顔を見る


「… いや、何でもない」

言いかけて今津は止める


今の言葉では届かない。


蓮は既に、そこにいる。


何かを――掴みかけている。



湊川さんが切っ掛けを作り


春日が引き出した


(羨ましいよ…)


今津は黙って蓮の練習を見ていた



ーーーーーーーーーーーー



雪は道場で一人


剣を構え動かない…


立禅


瞑想のように思い出す


今日の試合…


春日君は

ー強かった


負けていても不思議ではなかった


自分より先に


自分の中の形が動いた


そして、

その形は明らかに春日の動きに対応したものだった


(柄打ち……逆手落とし……)


(やはり……)


やはり春日君の動き

本住吉流は出会っている


(いつ?)


(そして、どうやって組み込まれた?)


答えはない


ひとつ、確かなことがある。


”形は変わる”


(私は形を変えることがあるのだろうか…)


(必要があるのだろうか…)


夜の気配が、深くなる。



雪の構えが、揺れた。


(……そんな出逢い)


胸の奥で、言葉にならない想いが浮かぶ。


(私も……)




雪は、ゆっくりと目を開いた





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