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半歩 ~守・破・離 短き刃 長き道~  作者: 止水


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第八十三話 長き刀 ー百年ー

(何合 打ち合った?)


(本山先輩は、それでも乱れていない…)


(俺はこの試合 何度も心が揺れ動いている…)


(――尊敬します)


ーーーーーーーーーー


雪が踏み込む


一の太刀 諸手突き


小太刀でいなす


斬り返す

二の太刀 打ち下ろし


いなす


小太刀で返す


――届かない


切り上げ 三の太刀


避ける

下がる


回し打ち 四の太刀


間合いごと押し潰す


下がる

ー下がり切れない


小太刀で受ける

ー重い


流される


押し込まれる――


鍔を押される――歪む


摺り上げる

ー摺り上がらない


春日がまた下がる


雪が押す

――逃がさない


長刀が抜ける

――頭部へ、五の太刀


小太刀を挟む


弾く


下がる


離れる


追わない


ーーーーーーーーーーー



(小太刀の動き… 長練の賜物か…)


 一朝一夕の動きではない


(――良い)


雪の眼が変わる


奥を――見る


ーーーーーーーーーーーー


春日が息を吐く


踏み込む


小太刀で斬る


長刀を弾く


間合いへ入る


長刀が返る


再び小太刀で弾く


間合いを詰める


長刀が間に入る


小太刀で止める


長刀が回る

ー下から斬り上げる


軸をずらす


春日の横を、刃が駆け上がる


小太刀で斬り下げる


鍔で止められる

ー鍔元で回される


刃が迫る


春日が下がる


間合いが開く


小太刀は――届かない


ーーーーーーーーーー


(本山先輩 今までの非礼… 心からお詫びします)


(自分を出し切らせてください…)


ーーーーーーーーーー


(行く!)


春日が踏み込む


小太刀で薙ぐ


長刀を止める


長刀に絡む


長刀が回る

  その刹那


蹴りが柄を薙ぐ

 ー違う


 ーその蹴りも柄頭で止められた

 

だが、そのまま


踏み込む


床へ春日が沈む

ー滑る

ー流れる


完全に春日の間合い


春日の素拳が雪に伸びる

 ここでー


春日の拳が雪の身体を昇るように…


…喉輪


百年以上前…

かつて御宗家を倒した技


届く…




雪と眼が合う…


読まれていた…




逆手持ち


春日と雪の間に長刀が下りてきた




春日の身体は

自ら刃に向かって流れていく


袈裟斬り

ー決まる


だが、

――止まらない


雪が長刀を中心に

ー回る


喉輪が空を斬る


そこには雪はいない


伸びきった春日の身体へ

――貫き胴


寸止め


抜ける


残心



「一本」


「勝者 本宮雪」



ーーーーーーーーーーーーーーーー


観客席


静まり返っている


誰も――動かない


弓場が、わずかに息を吐く


「……今の……」


言葉が、続かない


大石は前のめりのまま、固まっている


手に、力が入ったまま


ほどけない


御影は、ただ見ている


瞬きすら、少ない


(……届いてた)


弓場の唇が、かすかに動く


声にはならない


それ以上、言わない


再び、沈黙


やがて


誰かが、小さく息を吐く


それが、波のように広がる


遅れて


拍手が、ひとつ


またひとつ


武道場に、音が戻る


弓場は、目を細める


「……あれが、春日君の」


言葉は、そこで止まる


あの一太刀だけが、残っていた


ーーーーーーーーーーー


澪は、ただ見ていた


拍手の中でも、動かない


ーーーーーーーーー



「お互い 礼」



春日が、深く頭を下げる


「本山先輩 本当にありがとうございました」


もう一度、頭を下げる



すがすがしい笑顔


雪は微笑みを返しただけ

何も言わない


(本当に… 成長したね)



「剣となれ…」


父の言葉が、胸の奥に静かに残る

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