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半歩 ~守・破・離 短き刃 長き道~  作者: 止水


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第七十話 常在戦場 ー自灯明ー

息を吸い

ゆっくりと吐く


呼吸を整える


間合いを取り直す


納刀


澪は、鞘を正し道着の襟を正す



ーーーーーー


澪の行動に対しても


王子は、長刀を抜いたまま

構えを解かない


ーーーーーー


「居合」とは


常在戦場

泰然自若



平常の状態で 敵の攻撃や不測の事態に対応する


日常生活の「静」の状態から、

敵の襲撃という「動」の事態へ、一瞬で対応する


心の備え 「在り方」


ーーーーー


自灯明

―他に頼らず、己を拠り所とする―



壇上の雰囲気が


変わった



変えたのは



姿勢を正し


鞘に手を添える。


それは、構えではない。


日常の姿。


――そこから斬る。


それが、居合。






ゆっくりと

王子に向き直る


歩む



歩み寄る


踏み込めではない


常足


王子の間合い


長刀が舞う


袈裟斬り


…長い

…重い


抜き打ち

長刀を受ける


鍔元まで押し込まれる


だが、離さない


刃が回る

峰で長刀を押さえる


受けたのではない。

“乗せた”

 


澪の居合刀が

長刀の鎬を走る


逸らすのではない。

連れていく


長刀を引く

二の太刀を…



(……引けない)



(……打てない)


澪の刀が

王子の刀を捌いている


統べている


居合刀の峰から

長刀が離れない


居合刀が流れるように

長刀を伝う


(……っ)


澪の刀は、すでに内側


鍔元


斬り上げ


長刀が――落ちる


(間合いを… 消された…)



音が、遅れて響く



「一本」

「勝者 湊川」



ーーーーーー


長刀を拾い上げる。


ゆっくりと、刃を見た。


――届いていない。


小さく、息を吐く。



「……間合いを、消されたか」


顔を上げる。




長刀を収め

一度だけ、目を閉じる。


「……雪お嬢様の言う通り、か」


小さく笑う。


(――内に入られた時点で、終わる――)



「だが、それをやり切るとはな」


(……まだ、届かないか)


悔しさを押し殺す。




真っ直ぐ、澪を見る。


「見事だ」


それだけを、静かに告げた。



澪は、ゆっくりと刀を引いた。



長刀から視線を外さないまま、


静かに刀を納めた。


一歩、下がる。


もう、一歩


深く、礼。


顔を上げる。


「……ありがとうございました」


それだけだった。









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