シーン2 「民衆混乱」
ざわめきは。
数秒で、
悲鳴へ変わった。
◇
王都中央広場。
数万人規模の群衆。
◇
その全員が。
同時に、
自分の人生を疑い始めていた。
◇
「……嘘だ」
◇
誰かが呟く。
◇
それを境に。
広場が、
一気に崩壊した。
◇
「嘘だ!!」
「陰謀論だろそんなの!!」
「そんなわけあるか!!」
◇
否定。
怒号。
罵声。
◇
人々は、
必死に現実を拒絶する。
◇
「人生が見世物!?」
「感情が演出!?」
「馬鹿にするな!!」
◇
だが。
否定できない。
◇
誰もが、
思い当たってしまうから。
◇
都合が良すぎた偶然。
劇的すぎた出会い。
完璧すぎたタイミング。
◇
全部。
思い返せば、
異常だった。
◇
そして。
別の方向へ、
壊れる者も現れる。
◇
「じゃあ……
俺の人生は何だったんだ!?」
◇
青年が、
頭を抱えて叫ぶ。
◇
「好きになった気持ちも、
全部演出か!?」
「泣いたのも!?」
「苦しかったのも!?」
◇
発狂。
◇
自分自身への信頼が、
崩れていく。
◇
さらに。
最悪の方向へ理解する者もいた。
◇
群衆の一角。
涙を流しながら、
空へ祈る女。
◇
「観客様だ……」
◇
周囲が凍る。
◇
「我々は、
選ばれた物語だったんだ……」
◇
危険だった。
◇
絶望に耐えきれない人間は。
時に。
真実そのものを、
信仰へ変える。
◇
しかも。
崩壊は、
王都だけでは終わらない。
◇
全国中継術式。
◇
世界中へ、
既に真実は流れていた。
◇
学園都市。
港湾国家。
辺境自治区。
◇
各地で、
同時多発的混乱。
◇
劇場炎上。
恋愛イベント会場襲撃。
結婚式中止。
学園閉鎖。
宗教暴走。
自警団結成。
◇
文明単位の、
思想崩壊。
◇
世界が。
自分の存在理由を、
見失い始めていた。
◇
中央広場脇。
混乱する民衆を見ながら。
ミレイユ・フェルナン
は、
小さく震えていた。
◇
人々が泣いている。
怒鳴っている。
壊れている。
◇
全部。
自分たちが、
暴いてしまった。
◇
「わたしたち……」
◇
声が震える。
◇
「本当に、
壊しちゃったの……?」
◇
その言葉へ。
隣に立つ
セシル・アークライト
が、
静かに返した。
◇
「いや」
◇
一拍。
◇
「壊れてたものが、
見えるようになっただけだ」
◇
広場の空気が、
さらに軋む。
◇
上空。
巨大魔法陣。
◇
脈動。
◇
どくん。
◇
どくん。
◇
まるで。
世界そのものが。
“予定外の展開”に、
苛立ち始めているみたいに。




