シーン1 「公開演説」
王都中央広場。
◇
かつて。
恋愛イベントの聖地と呼ばれた場所。
◇
告白。
再会。
奇跡。
花吹雪。
拍手。
◇
数え切れない“名場面”が、
ここで演出されてきた。
◇
そして今日。
その舞台は。
世界そのものを告発する、
断頭台へ変わっていた。
◇
広場を埋め尽くす群衆。
貴族。
市民。
兵士。
学生。
聖職者。
◇
誰も、
声を出さない。
◇
空気だけが、
張り詰めている。
◇
上空。
巨大魔法陣。
◇
幾重にも重なる光輪が、
王都を見下ろしていた。
◇
まるで。
天そのものが、
観客席になったみたいに。
◇
中央演壇の周囲では、
全国中継術式が展開されている。
◇
巨大水晶。
中継魔導板。
遠隔投影陣。
◇
映像は、
世界中へ送られていた。
◇
学園都市。
港湾都市。
辺境国家。
砂漠地帯。
雪国。
◇
全世界が、
今この瞬間。
同じ空を見ている。
◇
つまり。
レオノーラは。
“観客”そのものを、
逆利用しようとしていた。
◇
ざわめき。
◇
そして。
静寂。
◇
演壇へ、
一人の少女が現れる。
◇
レオノーラ・ヴァレンシュタイン
だった。
◇
黒いドレス。
鋭い視線。
恐怖を押し潰したみたいな、
静かな表情。
◇
完全に。
公開処刑の舞台だった。
◇
空には、
巨大魔法陣。
世界中の視線。
見えない観客。
◇
それでも。
彼女は、
一歩も退かない。
◇
演壇中央へ立つ。
◇
全国中継術式、
起動。
◇
光が広場を覆う。
◇
レオノーラは、
静かに口を開いた。
◇
「本日、
皆様へお伝えする内容は」
◇
一拍。
◇
「この世界そのものに関わる話です」
◇
広場が、
さらに静まり返る。
◇
「まず、
世界には“運命律”と呼ばれる法則が存在します」
◇
ざわめき。
◇
「それは、
感情を誘導し」
「偶然を操作し」
「恋愛や悲劇を、
意図的に成立させる法則です」
◇
人々の顔色が変わる。
◇
「そして」
◇
レオノーラは、
空を見上げた。
◇
「我々の人生は、
観測劇場として消費されています」
◇
沈黙。
◇
誰も、
意味を理解できない。
◇
だが。
次の言葉が。
世界を壊した。
◇
「涙」
「絶望」
「愛」
「苦痛」
◇
「その全てが、
観測領域へ送信されています」
◇
どよめき。
◇
群衆が、
一斉に空を見上げる。
◇
「つまり」
◇
レオノーラは、
断言した。
◇
「我々は、
“見世物”として利用されています」
◇
広場が、
凍り付く。
◇
そして。
最後の真実。
◇
「さらに――」
◇
巨大魔法陣が、
低く脈動した。
◇
どくん。
◇
まるで。
喋るなと、
警告するみたいに。
◇
だが。
レオノーラは止まらない。
◇
「“誰か”が、
世界の外側から見ています」
◇
完全な沈黙。
◇
風だけが吹く。
◇
数秒。
誰も、
反応できなかった。
◇
だが。
次第に。
広場がざわつき始める。
◇
「……何を言ってる?」
「嘘だろ……?」
「見られてる……?」
◇
恐怖。
困惑。
拒絶。
◇
感情が、
一気に溢れ出す。
◇
その瞬間。
空が軋んだ。
◇
巨大魔法陣。
不穏な脈動。
光量増加。
空間振動。
◇
まるで。
世界そのものが。
“公開”を嫌がっているみたいに。




