シーン2 「ルフレ暗躍」
地下観測室。
術式盤の上へ、
王都全域の地図が展開されていた。
◇
赤い光点。
事件発生地点。
橋崩落。
病院。
港湾区画。
学園通路。
別れ。
涙。
悲鳴。
全部。
点になって浮かんでいる。
◇
そして。
その点を線で繋いだ瞬間。
空気が変わった。
◇
沈黙。
◇
ベアトリクスが、
術式盤を見つめたまま呟く。
「……嘘でしょう」
◇
線。
全部。
同じ場所へ収束していた。
◇
王国中央劇場。
◇
セシル・アークライト
が、
顔をしかめる。
「演出結界ネットワークだな」
「王都中へ、
感情誘導ラインが伸びてる」
◇
つまり。
事件は自然発生ではない。
◇
誰かが。
“演出”している。
◇
レオノーラの目が、
冷たく細まる。
「……やはり」
◇
王国中央劇場。
地下深層。
◇
そこは、
もう劇場ではなかった。
◇
巨大術式空間。
天井一面の魔法陣。
脈動する結晶炉。
無数の感情波形モニター。
共鳴管。
観測盤。
◇
そして。
中央。
◇
巨大な、
円形装置。
群衆感情共鳴炉。
◇
歓声。
涙。
悲鳴。
拍手。
感動。
全部を増幅し、
運命律へ接続する。
◇
完全に。
“視聴率ブースター”
だった。
◇
その装置の前で。
ルフレ・ノクス
が、
穏やかに立っている。
◇
まるで。
指揮者みたいに。
◇
彼は振り返る。
優雅に笑う。
◇
「ようこそ」
「舞台裏へ」
◇
ベアトリクスが、
嫌悪を隠さず吐き捨てる。
「これ全部、
貴方が?」
◇
ルフレは否定しない。
むしろ。
少し誇らしげだった。
◇
「幸福だけでは、
人は熱狂しません」
◇
静かな声。
穏やかな微笑み。
なのに。
背筋が冷える。
◇
「涙があるから、
感動は完成する」
◇
その瞬間。
ベアトリクスが、
机を叩いた。
◇
「完成させるな!!」
◇
怒声。
観測室が震える。
◇
だが。
ルフレは動じない。
◇
彼は、
モニターへ視線を向ける。
◇
そこには。
感情数値。
歓声率。
悲嘆共鳴。
観客熱量。
涙反応。
拍手同期率。
◇
全部。
数値化されていた。
◇
人間の感情が。
興行成績みたいに。
◇
セシルの顔が引きつる。
「本当に、
視聴率扱いしてやがる……」
◇
ルフレは、
静かに頷いた。
◇
「悲劇は、
観客を最も強く結びつける」
◇
彼の背後で。
巨大共鳴炉が脈動する。
◇
「だから、
世界は悲しみを求める」
◇
その言葉と同時に。
天井魔法陣が、
淡く発光した。
◇
まるで。
世界そのものが、
同意しているみたいに。
◇
レオノーラは、
確信する。
◇
この男。
もう、
人間側ではない。
◇
“観客側”へ、
立っている。




