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悪役令嬢、予算書を叩きつける  作者: 南蛇井


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シーン2 「盛り上がり補正」


 数式を追う。


 そして。


 ゆっくり、

 顔をしかめた。


「……嘘でしょう」


「相関率、

 高すぎる」


「ほぼ一致してます」


 レオノーラが、

 静かに問う。


「何がですの?」


 セシルは、

 嫌そうに答えた。


「盛り上がりだよ」


     ◇


 沈黙。


 セシルは、

 乾いた顔で術式盤を指差す。


「悲劇性が高いほど、

 運命律出力が上がってる」


「すれ違い」


「涙」


「苦悩」


「犠牲」


「禁断」


「絶望」


「その辺りの感情が強いほど、

 世界側の反応も強い」


 一拍。


「つまり」


 誰も、

 続きを聞きたくなかった。


 だが。


 セシルは、

 容赦なく言った。


「“面白い”ほど、

 世界は強くなる」


     ◇


 観測室が静まり返る。


 誰も、

 すぐには言葉を返せない。


 最低だった。


 理屈として。


 構造として。


 あまりにも、

 最低だった。


     ◇


 ベアトリクスが、

 震える指で波形を追う。


「ミレイユ精神崩壊時、

 観測出力最大……」


「王都崩壊時、

 観測領域共鳴率急増……」


「レオノーラ告発直後、

 外側反応増大……」


 全部、

 一致する。


 感動的な瞬間ではない。


 苦しい瞬間。


 壊れそうな瞬間。


 人間が追い詰められた時ほど、

 世界は活性化している。


     ◇


 セシルが、

 目を覆う。


「視聴率システムかよ……」


 乾いた声だった。


 冗談みたいな台詞。


 だが。


 誰も、

 否定できなかった。


     ◇


 レオノーラは、

 静かに術式盤を見つめる。


 そこへ映っているのは、

 数字ではない。


 人間だった。


 泣いた人間。


 傷ついた人間。


 苦しんだ人間。


 その痛みが。


 “盛り上がり”

 として換算されている。


     ◇


 彼女は、

 ゆっくり呟く。


「人間の不幸を……」


 声が、

 低い。


「盛り上がり評価しておりますの……?」


 その瞬間。


 術式盤の向こう側で。


 ぱち。


 小さく。


 また、

 拍手が鳴った。

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