シーン2 「攻略対象制度」
地下観測室。
巨大術式盤の光が、
静かに脈動している。
人生ログ解析。
キャラクター性誘導。
その結果だけでも、
十分すぎるほど最悪だった。
だが。
ベアトリクス・ギアハート
は、
止まらなかった。
「個人単位だけじゃ、
ここまで綺麗に揃いませんね」
術式盤へ、
新しい層を展開する。
国家制度解析。
教育制度。
貴族文化。
社会構造。
その瞬間。
観測盤の光景が、
さらに嫌な形へ変わった。
◇
「……あっ」
クラリスが、
引きつった声を漏らす。
術式盤上へ、
王国制度の相関図が展開されていた。
そして。
全部が。
“魅力的キャラクター育成”
へ繋がっている。
ベアトリクスが、
高速で項目を読み上げる。
「攻略対象候補への、
異常な過剰教育」
「容姿補正文化」
「舞踏会偏重社会」
「対人評価依存制度」
「人気投票型の貴族社交構造」
一つ一つが。
嫌になるほど、
それっぽい。
◇
王族候補は、
幼少期から。
剣術。
教養。
演説。
社交。
“魅せ方”
を徹底的に叩き込まれる。
しかも。
重要なのは、
統治能力だけではない。
“印象”。
“華”。
“人気”。
民衆受け。
好感度。
完全に、
アイドル育成だった。
さらに。
貴族社会。
毎週の舞踏会。
恋愛噂文化。
社交誌。
人気順位。
評価会。
全部。
“推しキャラ”
を盛り上げる構造に近い。
ガイウスが、
顔をしかめる。
「いや待て」
「貴族評価って、
人気投票だったのか……?」
ベアトリクス、
真顔で頷く。
「かなり近いですね」
「しかも、
無自覚です」
最悪だった。
◇
さらに解析が進む。
すると。
国家制度そのものへ、
微弱な運命律誘導痕が見つかる。
法律。
教育。
文化。
芸術。
全部。
少しずつ。
“魅力的な人物”
を作る方向へ、
自然誘導されていた。
レオノーラは、
ゆっくり息を吐く。
寒気がした。
国家ですら。
自分の意思で進化していない。
“物語が盛り上がる方向”
へ、
調整されている。
文明単位で。
◇
セシルが、
術式盤を見ながら呟く。
「国家運営が、
キャラ育成ゲーム化してるな」
最低だった。
誰も笑わない。
笑えない。
だって。
実際そうだった。
王国は、
強い国を作ろうとしていたのではない。
無意識に。
“魅力的な舞台”
を作っていた。
◇
レオノーラは、
巨大相関図を見上げる。
花産業。
舞踏会文化。
学園制度。
社交界。
王族教育。
全部。
恋愛。
感情。
ドラマ。
それを、
盛り上げるために存在しているように見える。
国家そのものが。
知らず知らず。
“物語を盛り上げる”
方向へ進化していた。
文明単位で。
その事実が。
今まで見てきた、
どんな災害よりも。
恐ろしかった。




