ラストシーン 「観客」
夜。
崩壊した王都は、
静かだった。
落ちた橋。
止まった列車。
砕けた時計塔。
仮設結界の淡い光だけが、
瓦礫の街を照らしている。
人々の声も、
もう少ない。
救助活動の灯りだけが、
遠くで瞬いていた。
その上空。
巨大魔法陣。
円形。
幾重にも重なる、
巨大光輪。
王都全域を覆うほど巨大なそれは。
夜空に浮かぶというより。
空そのものへ、
刻み込まれているみたいだった。
レオノーラは、
高台からそれを見上げている。
風が吹く。
髪が揺れる。
だが。
彼女は、
視線を逸らせなかった。
魔法陣の構造。
放射状配置。
中央焦点。
外周階層。
どう見ても。
劇場だった。
しかも。
地上を囲むためではない。
逆だ。
天へ向かって開かれている。
まるで。
上から見る存在のために、
作られた観客席。
その瞬間。
今までの全てが、
繋がってしまう。
恋愛イベント。
強制演出。
観測による増幅。
歓声。
熱狂。
拍手。
感動。
奇跡。
悲劇。
全部。
“見られること”を前提に、
成立していた。
国家も。
文化も。
教育も。
恋愛も。
人命すら。
舞台装置。
この世界は、
最初から。
物語だった。
誰かへ消費されるための。
感動されるための。
盛り上がるための。
巨大な劇場。
レオノーラは、
静かに目を閉じる。
遠くで。
また歓声が上がった。
小さな恋愛イベント。
それだけで。
上空の魔法陣が、
嬉しそうに脈動する。
気持ち悪かった。
世界が。
あまりにも。
“反応を欲しがっている”。
レオノーラは、
ゆっくり空を見上げた。
巨大光輪。
円形構造。
まるで。
天に座る何かのための、
観客席。
そして。
静かに理解する。
この世界は。
最初から。
“見られるため”に存在している。
国家ですら舞台装置なら――
一拍。
「いったい、
誰が観客ですの?」




