シーン4 「ミレイユという主役」
王都中央観測塔。
最上階。
巨大術式盤が、
低く唸っていた。
壁一面へ投影された、
王都全域魔力図。
そこへ。
ひとつだけ。
異様な中心点が存在している。
ミレイユ・フェルナン
だった。
彼女が移動するたび。
王都上空の巨大魔法陣が、
脈動する。
光量上昇。
共鳴率増加。
感情波形活性化。
群衆流動変化。
全部。
彼女を中心に発生していた。
レオノーラは、
無言で測定器を見つめる。
数値が、
露骨すぎた。
ミレイユが、
中央広場へ近づくだけで。
人流誘導率上昇。
視線集中補正発生。
偶然遭遇率増加。
さらには。
周辺区画の照明魔法まで、
自動で色温度を変え始める。
完全に。
主人公演出。
セシルが、
疲れた声を出す。
「ここまで来ると、
もう隠す気ないな」
術式盤には、
はっきり表示されていた。
『主人公中心共鳴』
『感情演出優先』
『観測誘導強化』
最低だった。
ミレイユは、
その表示を見てしまう。
小さく息を呑み。
一歩、
後ずさった。
「……わたし」
声が震えている。
「わたしが動くだけで……」
王都上空。
巨大魔法陣が、
また脈動する。
まるで。
彼女の存在そのものへ、
反応しているみたいに。
ミレイユは、
苦しそうに胸を押さえた。
「最初から……」
一拍。
「“役”だったんですか……?」
静寂。
誰も、
すぐには答えられなかった。
レオノーラは、
唇を噛む。
否定したかった。
だが。
できない。
だって現実に。
世界そのものが、
ミレイユを“主人公”として扱っている。
人ではなく。
人格ではなく。
役割として。
空が反応する。
街が反応する。
人々が反応する。
まるで。
彼女が存在するためだけに、
舞台全部が動いているみたいに。
ミレイユは、
俯いた。
「わたし、
ちゃんと生きてたつもりだったのに……」
掠れた声。
「頑張って、
笑って、
友達作って……」
「でも、
違ったんですね」
涙が落ちる。
「最初から、
“そういうキャラクター”だった……」
その瞬間。
王都上空の魔法陣が、
淡く明滅した。
まるで。
悲劇シーンを、
盛り上げるみたいに。
レオノーラは、
初めて本気で。
この世界へ、
吐き気を覚えた。




