第十二話 『王都、舞台になる』Opening 「空の形」
深夜。
王都復旧区画。
冷たい夜風が、
瓦礫の匂いを運んでいく。
崩落した中央橋。
沈黙した魔導列車。
仮設結界に覆われた住宅街。
遠くでは、
まだ復旧工事の灯りが揺れていた。
街は、
傷だらけだった。
それでも。
人々は生きている。
だから本来なら、
少しは安堵してもよかった。
だが。
レオノーラ・ヴァレンシュタイン
の胸には、
嫌な感覚だけが積もっていく。
高台。
王都全域を見渡せる観測地点。
彼女は、
測定器を片手に街を見下ろしていた。
魔力流は、
依然として不安定。
運命律出力も、
下がっていない。
むしろ。
街全体が、
何かを待っているみたいだった。
そのとき。
レオノーラは、
ふと空を見上げる。
そして。
凍りついた。
「……何ですの、
あれ」
王都上空。
巨大魔法陣。
夜空を埋め尽くすほど巨大な、
光の構造体。
以前から存在は確認されていた。
だが。
今夜は違う。
形が。
あまりにも、
“意味ありげ”だった。
幾重にも重なる光輪。
外側へ向かって広がる層構造。
放射状に伸びる魔力線。
そして。
中央へ収束する焦点。
レオノーラは、
しばらく言葉を失う。
嫌でも、
連想してしまった。
これは。
魔法陣じゃない。
円形劇場だ。
中央舞台を。
幾重もの席が、
囲んでいる。
そんな構造。
まるで。
王都そのものを、
“見世物”にするための。
巨大観客席。
夜空の魔法陣は、
静かに脈動している。
まるで。
何かを期待しているみたいに。
あるいは。
これから始まる劇を、
待っているみたいに。
その瞬間。
レオノーラの背筋を、
ぞくりと悪寒が走った。
初めてだった。
運命律へ。
“意思”以上の何かを感じたのは。
これは。
災害ではない。
もっと、
根本的におかしい。
世界そのものの、
設計思想が。




