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悪役令嬢、予算書を叩きつける  作者: 南蛇井


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ラストシーン 「舞台装置」

夜。


 王都高台。


 復旧途中の街を、

 冷たい風が吹き抜けていく。


 崩れた塔。


 仮設結界。


 補修中の橋梁。


 都市はまだ、

 傷だらけだった。


 だが。


 その中心で。


 王都は、

 妙に輝いている。


 遠く。


 中央広場付近。


 また小規模恋愛イベントが発生していた。


 偶然ぶつかった男女。


 散らばる書類。


 差し伸べられる手。


 ふわりと舞う花弁。


 どこからともなく吹く風。


 完全に様式美。


 そして。


 周囲の人々が、

 一斉に立ち止まる。


「あっ……」


「始まった」


「続きある?」


「誰!?」


 期待。


 熱狂。


 好奇心。


 視線が、

 一点へ集中する。


 その瞬間。


 高台から観測していた測定器が、

 ぴくりと反応した。


 空間魔力。


 僅かに増幅。


 ほんの小さなイベント。


 都市崩壊級ではない。


 だが。


 確かに。


 “観客”によって、

 世界が強化されている。


 レオノーラ・ヴァレンシュタイン

 は、

 静かに街を見下ろしていた。


 その隣。


 セシル・アークライト

 が、

 壁へ寄りかかっている。


 遠くから、

 また歓声が聞こえた。


 拍手。


 その瞬間。


 測定器の数値が、

 さらに僅かに上昇する。


 レオノーラは、

 ゆっくり目を細めた。


 もう分かっている。


 この世界は。


 ただ恋愛を成立させたいわけではない。


 誰かに、

 見てほしい。


 盛り上がってほしい。


 期待してほしい。


 感動してほしい。


 つまり。


 世界そのものが。


 “観客”を求めている。


 まるで。


 舞台へ立つ役者みたいに。


 あるいは。


 誰かへ消費される、

 物語みたいに。


 レオノーラは、

 静かに呟いた。


「この世界、

 恋愛をしたいのではなく」


 一拍。


「“物語”になりたがっておりますわね……」

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