シーン6 「世界の反発」
対策開始から、
わずか三時間後だった。
異変が起きる。
「中央区画にて、
恋愛演出多発!」
「西通り、
群衆集中発生!」
「第三学舎、
偶然接触イベント連続発生中!」
地下対策本部へ、
報告が雪崩れ込む。
しかも。
全部、
異常だった。
規模ではない。
“執着”が。
街中。
通行人同士が、
不自然な頻度でぶつかる。
視線が交差する。
風が吹く。
花弁が舞う。
夕日が差し込む。
恋愛演出。
恋愛演出。
恋愛演出。
まるで。
世界そのものが、
必死にイベントを発生させている。
さらに最悪なのは。
群衆だった。
「えっ、
何か始まった!?」
「行こう!」
「イベントだって!」
人々が、
無意識に集まり始める。
誰も呼んでいない。
告知もない。
なのに。
自然と、
イベント発生地点へ人が流れていく。
まるで。
“見なければならない”みたいに。
結果。
観客増加。
↓
熱狂増幅。
↓
運命律強化。
完全な悪循環。
観測室では、
術式官たちが悲鳴を上げていた。
「だめです!
視線遮断結界、
突破されます!」
「群衆が、
迂回して集まってきます!」
「報道規制後、
逆に口コミ速度が上昇!」
最低だった。
隠そうとするほど。
見たがる。
集まりたがる。
期待したがる。
まるで。
世界そのものが、
“注目”へ飢えている。
観測盤の数値が、
じわじわ上昇していく。
その光景を見ながら。
セシル・アークライト
の顔が、
珍しく本気で引きつった。
「まずいな……」
低い声。
冗談がない。
レオノーラが、
鋭く振り向く。
「何がですの?」
セシルは、
観測盤を見つめたまま答える。
「運命律、
学習してる」
一拍。
「“観測されない”ことを、
拒否し始めてる」
室内が凍る。
セシルは、
さらに静かに続けた。
「これ、
もうただの自動術式じゃない」
「観測欲求まで、
持ち始めてる」
ホラーだった。
恋愛を成立させたい。
見届けてほしい。
盛り上がってほしい。
感動してほしい。
そして今。
世界は、
“注目されない”ことに、
苛立ち始めている。




