シーン5 「レオノーラの対策」
地下災害対策本部。
臨時戦略会議。
空気は重かった。
壁面には、
新たな分析結果が並んでいる。
『観測密度増加
→ 運命律出力上昇』
『歓声・期待値
→ 現実改変強化』
『群衆熱狂
→ イベント固定率増加』
最低だった。
もはや。
恋愛感情だけの問題ではない。
“見て盛り上がること”自体が、
災害加速行為になっている。
沈黙の中。
レオノーラ・ヴァレンシュタイン
が、
静かに口を開いた。
「対策方針を変更しますわ」
全員が顔を上げる。
レオノーラは、
真顔だった。
「今後の重点は、
“観測遮断”です」
一瞬。
誰も意味を理解できなかった。
だが。
次に提示された資料を見て、
官僚たちの顔色が変わる。
『イベント報道制限』
『群衆分散誘導』
『視線遮断結界』
『恋愛演出検閲』
『高熱狂区域封鎖』
そして。
一番下。
『拍手禁止令(暫定)』
会議室が、
静まり返る。
数秒後。
クラリスが、
恐る恐る確認した。
「……拍手まで、
規制なさるんですか?」
「しますわ」
即答。
レオノーラは、
一切迷わない。
「歓声、
熱狂、
期待、
感情移入」
「全て、
運命律の増幅因子ですもの」
官僚たちが、
頭を抱え始める。
「いやしかし、
拍手ですよ?」
「祝賀行事は!?」
「劇場は!?」
「音楽会は!?」
レオノーラ、
冷静。
「制限しますわ」
「現在、
王都は非常事態です」
「観客参加型災害が、
発生しておりますので」
正論だった。
嫌すぎるだけで。
セシルが、
横で吹き出しかける。
「歴史上初だな」
「拍手が危険物認定された国家」
誰も笑えない。
実際。
拍手された瞬間、
空間魔力が増幅するのだ。
もう完全に、
娯楽の範囲を超えている。
レオノーラは、
さらに指示を続ける。
「学園周辺へ、
視線遮断結界を展開」
「イベント発生時は、
即時群衆分散」
「新聞各社へ、
恋愛記事の掲載制限を通達」
「“続きが気になる”形式の見出しは禁止」
エマが聞いたら泣く。
だが。
必要だった。
今や、
“注目”そのものが燃料なのだから。
レオノーラは、
最後に静かに言う。
「世界が、
観客を求めているなら」
「こちらは、
舞台そのものを潰しますわ」




