第十一話 『観測される世界』Opening 「静かな違和感」
王都復旧開始。
崩壊した橋梁の再建。
停止した送電網の修復。
瓦礫撤去。
避難区域縮小。
徹夜続きだった災害対策本部も、
ようやく最低限の秩序を取り戻し始めていた。
街には、
少しずつ日常が戻りつつある。
……はずだった。
だが。
レオノーラ・ヴァレンシュタイン
たちは、
すぐに異常へ気づく。
運命律出力が、
下がっていない。
むしろ。
増えていた。
「第三学舎廊下にて、
偶然接触イベント発生」
「中央広場、
花弁散布現象確認」
「西区画夕景演出、
本日五件目です」
「また!?」
対策本部。
報告書が積み上がる。
しかも。
一件一件は小さい。
都市崩壊級ではない。
だが。
数が異常だった。
廊下で曲がり角衝突。
偶然の視線交錯。
突然吹く風。
不自然な夕日。
光粒子。
花吹雪。
強制的に距離が縮まる人流。
全部。
典型的な恋愛イベント。
しかも。
以前より発生頻度が高い。
「おい見ろ、
また始まったぞ!」
「きゃー!」
「これ絶対運命だって!」
広場では、
人々が盛り上がっている。
学生たちは騒ぎ。
商人たちは笑い。
子供まで、
イベントを追いかけ回していた。
まるで。
巨大な祭り。
だが。
異常なのは、
そこからだった。
人々が歓声を上げるほど。
空間魔力が増幅する。
期待が集まるほど。
演出が派手になる。
視線が集中するほど。
偶然が不自然になる。
対策本部観測室。
セシル・アークライト
は、
無言で観測盤を見つめていた。
数値が、
嫌な動きをしている。
恋愛イベント発生。
↓
群衆注目。
↓
運命律出力増加。
この流れが、
何度も観測されていた。
セシルは、
静かに眉を寄せる。
「……おかしいな」
軽い口調。
だが。
その声には、
珍しく本気の警戒が混じっていた。
窓の外。
またどこかで、
歓声が上がる。
その瞬間。
観測盤の針が、
ぴくりと跳ねた。




