シーン2 「ヒロインの奇跡」
ミレイユの涙が落ちた瞬間。
世界が、
応えた。
白い光。
それは、
爆発ではなかった。
暴走でもない。
静かな光だった。
優しく。
あまりにも優しく。
王都全域へ、
波みたいに広がっていく。
その瞬間。
奇跡が始まった。
崩落しかけていた建物。
その瓦礫が、
空中で停止する。
折れた支柱が固定され。
砕けた結界が、
淡い光と共に再接続されていく。
暴走していた魔力嵐も、
ゆっくり静まり始めた。
さらに。
転落していた人々が、
光に包まれる。
落ちない。
白い粒子が、
身体を支えている。
負傷者の傷口が閉じ。
裂傷が消え。
魔力欠乏で倒れていた人々が、
ゆっくり呼吸を取り戻す。
「……え?」
「痛く……ない……?」
医療班ですら、
呆然としていた。
そして。
王都地下。
停止していた魔導炉群。
そこへ、
白い共鳴光が流れ込む。
ぱち。
ぱち。
沈黙していた術式灯が、
一つずつ再点灯。
送電網、
一部復旧。
避難誘導光も再起動。
閉鎖されていた避難路が、
淡く照らされる。
さらに。
人流そのものが、
自然に修正されていく。
混乱していた群衆が。
まるで導かれるみたいに、
安全区域へ流れ始めた。
完全な、
避難誘導補正。
誰かが、
震える声で呟く。
「奇跡だ……」
その言葉通りだった。
これはもう。
魔法ではない。
現実法則への介入。
神話級現象。
人々は、
初めて見る。
“本物の奇跡”を。
広場。
瓦礫の中。
膝をついたままの
ミレイユ・フェルナン
を見て。
民衆が、
涙を流す。
「女神様だ……」
「救われた……」
「俺たちを……」
「ヒロインだ……」
完全に伝説だった。
その光景を。
少し離れた高台から。
レオノーラ・ヴァレンシュタイン
は、
真顔で見ていた。
周囲が感動している中。
彼女だけは、
一切表情を変えない。
なぜなら。
手元の測定器が、
異常値を叩き出していたからだ。
魔力流量。
共鳴範囲。
エネルギー総量。
全部、
あり得ない。
王都単独で賄える規模ではない。
つまり。
この奇跡は。
どこかから、
力を持ってきている。




