シーン1 「停止する世界」
王都。
崩壊の真っ只中。
空では、
暴走した魔力嵐が渦巻いていた。
地上では、
群衆が逃げ惑う。
瓦礫が落ちる。
悲鳴が響く。
橋梁結界は砕け。
空中回廊は崩落し。
空間断裂が、
街路を裂いていく。
完全な災害。
もう、
誰にも止められないはずだった。
その中心。
ミレイユ・フェルナン
は、
泣いていた。
「もう……」
震える声。
「もう、
誰も傷ついてほしくない……!」
その瞬間。
世界が、
止まった。
どくん。
巨大な鼓動。
王都全域へ、
白い光が走る。
次の瞬間。
崩落していた瓦礫が、
空中で静止した。
落ちない。
止まっている。
水路へ転落しかけていた子供も。
崩壊した回廊から滑り落ちた騎士も。
空中で、
ぴたりと固定されている。
暴走していた魔力嵐。
それも停止。
荒れ狂っていた光の奔流が、
まるで絵画みたいに動かない。
さらに。
街を裂いていた空間断裂。
黒い亀裂が、
ゆっくり閉じ始める。
ぎち。
ぎち。
現実そのものが、
縫い直されていく。
人々は、
呆然としていた。
「……え?」
「止まった……?」
「何が……?」
誰も理解できない。
災害が。
世界崩壊が。
突然、
停止した。
災害対策本部。
観測盤の前。
セシル・アークライト
ですら、
言葉を失っていた。
計測器を見る。
空を見る。
また計測器を見る。
そして。
「……は?」
間抜けな声が出た。
観測不能。
理論崩壊。
術式解析不能。
今起きている現象は、
魔法ですらなかった。
法則そのものへの命令。
世界改変。
現実停止。
そんなもの、
本来なら神話の領域だ。
だが。
実際に起きている。
王都上空。
脈動していた運命律が、
今だけ静かだった。
まるで。
世界そのものが。
たった一人の少女の願いを、
最優先したみたいに。




