シーン2 「都市停止」
被害は、
橋だけで終わらなかった。
むしろ。
そこからが本番だった。
王都西部。
魔導列車中央線。
本来なら、
避難輸送の生命線となるはずだった路線。
その全車両が、
停止していた。
理由。
“運命的再会イベント発生”。
最悪である。
線路中央。
停止した列車の前方。
一組の男女が、
見つめ合っていた。
偶然。
本当に偶然。
幼少期に離れ離れになった幼馴染が、
避難の混乱で再会したらしい。
問題は。
世界が、
それを重要イベント判定したことだった。
空間固定。
時間演出。
感情共鳴。
その結果。
線路空間そのものが、
“いい雰囲気用ステージ”へ変質。
列車が、
一ミリも動かない。
「発進しろ!!」
「無理です!!」
「空間抵抗値が増加しています!!」
「何で恋愛イベントに質量があるんだ!!」
現場、
地獄だった。
輸送停止。
物流停止。
避難計画崩壊。
医療物資も、
食料も動かない。
そして。
さらに悪いことに。
王都中央送電塔群。
そこへ、
感情共鳴干渉が発生した。
恋愛イベントによる高揚感。
観客の熱狂。
共鳴した魔力波。
全部まとめて、
送電術式へ流れ込む。
結果。
塔が、
耐えきれなかった。
ばちん。
青白い火花。
送電結界、
焼損。
その瞬間。
王都の灯りが、
一つずつ消え始めた。
東区。
暗転。
西区。
暗転。
中央商業区。
暗転。
夜の街が、
ゆっくり沈んでいく。
人々の悲鳴。
「停電だ!!」
「魔導灯が死んだ!!」
「転ぶ!!」
「誰か子供を――!!」
さらに。
通信魔法塔群も沈黙。
遠距離通信不能。
区画間連絡断絶。
各地が、
完全孤立し始める。
災害対策本部。
報告が飛び交う。
「北区応答なし!!」
「東医療区画、
通信途絶!!」
「転移門制御不能!!」
「避難誘導光、
半数消失!!」
空気が、
絶望へ沈んでいく。
その中で。
クラリス・エヴァレット
が、
青ざめた顔で資料を握っていた。
震える声。
「都市機能が……」
一拍。
「恋愛イベントに、
負けています……」
重かった。
誰も、
否定できない。
王都は今。
軍事でも。
疫病でも。
天災でもなく。
“ロマンス演出”によって、
停止しようとしていた。




