シーン1 「橋が落ちる」
王都中央運河。
深夜だというのに、
橋の上は人で溢れていた。
避難民。
負傷者。
泣く子供。
荷車を押す商人。
混乱した群衆が、
中央橋へ集中している。
理由は単純。
他の避難路が、
空間歪曲で消えたからだ。
橋の中央では、
騎士たちが怒鳴っていた。
「押すな!!」
「順番に渡れ!!」
「立ち止まるな!!」
だが。
その瞬間。
空気が、
甘く揺れた。
どくん。
運命律共鳴。
橋の中央。
避難中だった若い男女が、
偶然ぶつかる。
「あっ――」
「す、すみません!」
視線が合う。
その瞬間。
花弁発生。
謎の風。
橋上照明、
急に暖色化。
最悪だった。
レオノーラの顔色が変わる。
「まず――」
遅い。
橋梁結界、
暴走。
恋愛イベント共鳴によって、
橋全体へ過剰魔力流入。
青白い防護術式が、
びきびきと軋む。
次の瞬間。
中央橋、
崩落。
轟音。
石材が砕ける。
橋脚が折れる。
巨大な橋体が、
運河へ沈んだ。
「きゃああああっ!!」
「橋が!!」
「落ちる!!」
悲鳴。
混乱。
人々が次々、
水路へ転落する。
濁流。
瓦礫。
泣き声。
完全に地獄だった。
だが。
その中で。
レオノーラ・ヴァレンシュタイン
だけが、
一瞬で動く。
「東側封鎖!!」
「浮遊魔法班出動!!」
「子供を優先避難!!」
「水流固定術式、
急いで!!」
声が飛ぶ。
騎士団が走る。
魔導士が詠唱。
避難誘導光が、
橋周辺へ展開される。
完全に、
災害指揮官だった。
一方。
現場最前線。
バルド
が、
半泣きで人を担いでいた。
「こっちだ!!」
「手ぇ離すな!!」
「落ち着け!!」
さらに。
崩れた橋脚を見て、
絶叫する。
「だから言っただろ!!」
「恋愛導線で橋設計するなって!!」
誰へ向けた怒りなのか、
本人にも分かっていない。
だが。
答えは明白だった。
世界です。




