シーン3 「交通停止」
王都中央区。
本来なら。
商業。
物流。
交通。
その全てが交差する、
国家機能の中心部。
朝から大量の馬車が行き交い。
転移門が稼働し。
飛行魔導艇が空を横断する。
王都の心臓部。
――のはずだった。
だが。
十時四十二分。
異変発生。
最初は、
誰も気づかなかった。
「あれ?」
パン屋の店主が、
首を傾げる。
「なんか、
人多くないか?」
人が流れていた。
自然に。
無意識に。
中央大通りへ。
しかも。
全員、
同じ方向を見ている。
吸い寄せられるみたいに。
「何かイベント?」
「誰か来るの?」
「王族?」
違う。
理由はもっと酷かった。
ミレイユ・フェルナン
が、
そこを通るから。
それだけだった。
ただそれだけで。
王都の人流そのものが、
“主人公導線”へ再構築され始めていた。
結果。
地獄。
「止まれ止まれ止まれ!!」
中央通路。
馬車完全停止。
群衆が詰まり、
前へ進めない。
「荷物が届かねぇ!!」
「道空けろ!!」
「押すなぁ!!」
さらに。
転移門広場。
大渋滞。
恋愛イベント発生期待群衆が、
門周辺へ滞留。
転移術式、
正常稼働不能。
「医療物資が送れません!」
「北区から患者搬送中です!!」
「順番守れぇ!!」
守れる状況ではない。
空も終わっていた。
飛行魔導艇。
空中停止。
理由。
空中観覧客増加。
「見ろ!
上だ!!」
「光ってる!!」
「運命イベントだ!!」
人々が、
空を見上げる。
その結果。
飛行航路、
完全麻痺。
物流。
商業。
医療。
輸送。
全部止まる。
王都機能停止。
完全に都市災害だった。
一方。
災害対策本部。
怒号。
警報。
通信。
人員要請。
机の上の地図には、
真っ赤な封鎖区域が増え続けている。
「中央区物流停止!」
「東転移門閉塞!!」
「南区避難誘導不能!!」
「医療搬送二十三分遅延!!」
そして。
土木・交通統括担当。
バルド
が、
本気で叫んだ。
「誰だ!!
恋愛導線で物流組んだ奴!!」
室内沈黙。
数秒後。
セシルが、
静かに答える。
セシル・アークライト
は、
妙に落ち着いた顔で言った。
「世界」
最悪だった。
だが。
否定できない。
運命律は今。
国家機能より。
物流より。
医療より。
交通より。
“主人公が運命的に誰かと出会うこと”
を優先している。
つまり。
世界そのものが、
都市計画を破壊し始めていた。
その事実へ気づき。
レオノーラ・ヴァレンシュタイン
は、
静かに呟く。
「ついに、
恋愛イベントが国家インフラへ勝ちましたわね……」




