シーン2 「強制イベント化」
王立アストレア学園。
朝。
その瞬間までは、
まだ“普通”だった。
少なくとも。
この世界基準では。
だが。
九時十三分。
運命律出力、
急上昇。
そして。
世界が、
完全にやり始めた。
「きゃっ!?」
まず、
校門前。
女子生徒が、
パンをくわえて全力疾走。
角を曲がった瞬間。
男子生徒と衝突。
完璧な角度。
完璧な転倒。
完璧な密着。
「いたた……」
「だ、大丈夫!?」
花吹雪。
謎の逆光。
周囲。
「「「おお〜〜〜!!」」」
歓声。
完全に観客。
その直後。
中庭。
強風発生。
スカーフが舞う。
偶然、
男子生徒の顔へ絡まる。
「ご、ごめんなさい!」
「いや、
大丈夫――」
見つめ合う。
光粒子発生。
周囲ざわつく。
さらに。
図書館。
教材散乱。
本が崩れ。
二人同時に拾おうとして、
手が触れる。
共鳴。
夕日強化。
どこからか、
ピアノ音まで流れ始める。
意味が分からない。
しかも。
まだ終わらない。
「えっ、
鍵閉まった!?」
空き教室。
偶然密室イベント。
「ちょ、
なんで開かないの!?」
「落ち着けって!」
扉、
びくともしない。
その横。
廊下。
「前から好きでした!!」
「わ、私も!!」
同時告白イベント発生。
しかも三組。
世界、
完全にやりたい放題だった。
問題は。
密度。
イベント発生頻度が、
異常すぎる。
恋愛感情。
高揚。
羞恥。
期待。
感情魔力が、
校舎全域で衝突し始める。
空間が、
びりびり震えた。
魔力干渉。
感情共鳴。
連鎖暴走。
「測定値上昇!!
第二校舎危険域!!」
「西棟、
結界圧迫開始!!」
「空間安定率低下!!」
財政再建委員会、
学園対策班が悲鳴を上げる。
一方。
生徒たち。
「うわぁ綺麗〜!」
「イベント大量発生じゃん!」
「今日すごくない!?」
危機感ゼロ。
むしろ盛り上がっていた。
最悪だった。
その瞬間。
ばきん。
嫌な音。
学園上空。
巨大結界へ、
亀裂が走る。
光の膜が、
蜘蛛の巣みたいにひび割れていく。
「え」
誰かが呟く。
次の瞬間。
結界、
崩壊。
どォン!!
衝撃波。
窓ガラス振動。
校舎全体が揺れる。
悲鳴。
机転倒。
魔導灯明滅。
花吹雪が、
嵐みたいに吹き荒れる。
そして。
その地獄の中心で。
レオノーラ・ヴァレンシュタイン
は、
静かに頭を抱えていた。
「恋愛イベントの同時多発で、
校舎結界が落ちる学園、
初めて見ましたわ……」




