魔物が橋を渡れないので、まず人間と交渉します
橋の向こうに魔物がいると聞いた時、俺は真っ先にリリアの顔を見た。
「……戦うことになると思う?」
「まだ分かりません。相手の様子を確認しましょう」
「だよな。できれば戦いたくないんだけど」
リベルタを出発してから半日ほどが過ぎ、俺達は北東へ続く街道を歩いていた。草原ばかりだった景色は少しずつ変わり、緩やかな丘の間を流れる川に沿って、背の高い木々が増え始めている。
その川に架かる石橋の手前で、二台の荷馬車が道を塞いでいた。
馬達は落ち着かない様子で地面を蹴り、商人らしい男が何度も橋の向こうを確かめている。橋を渡れずに困っているのは明らかだった。
「何かあったんですか?」
俺が声をかけると、男は振り返った。
「見れば分かるだろう。魔物が橋を塞いでるんだよ」
「襲われたんですか?」
「いや、まだ何もされてないが、あんなものがいたら渡れん!」
男が指さした先を見て、俺は思わず目を見開いた。
橋の向こうにいたのは、五、六頭ほどの鹿に似た魔物だった。
ただし、普通の鹿とはずいぶん違う。
大きいものは馬ほどの体格があり、頭から伸びた二本の角は、木の枝のように細く分かれていた。耳は扇のように幅広く、風が吹くたびに柔らかく揺れている。淡い灰色の毛並みは日の光を受けて銀色に輝き、その姿は魔物というより、どこか神秘的な生き物のように見えた。
「……綺麗だな」
思わず呟くと、隣のロアンが頷いた。
「風耳鹿だ。高原の草地や山の麓に暮らしている」
「かざみみじか?」
「ああ。耳が大きいだろう? 遠くの物音にもよく反応するんだ」
ロアンは橋の向こうを見つめながら、少し眉を寄せた。
「だが、こんな場所で見るのは珍しい。普段はもっと東にいるはずなんだ」
また、高原から離れた場所にいる魔物か。
青帆鳥といい、どうやら魔物達の移動は、俺が考えていた以上に広い範囲で起きているらしい。
ただ、目の前の風耳鹿達は、こちらへ襲いかかってくる様子を見せていなかった。
橋の入口に集まったまま、何かを気にするように耳を動かしている。
「ロアン、あいつらは何をしてるんだ?」
「分からない。川を渡りたいようにも見えるが……」
「渡ればいいのに」
「それができない理由があるのかもしれないな」
なるほど。
俺はもう一度、橋の方へ目を向けた。
石造りの橋は荷馬車が一台通れる程度の幅で、両側には低い石の手すりが設けられている。中央部分は緩やかに盛り上がり、その向こう側の様子は少し見えにくくなっていた。
構造自体に問題があるようには見えない。
けれど、風耳鹿達は橋へ足を踏み入れようとせず、落ち着かない様子で耳を動かし続けていた。
その時だった。
チリン、と小さな金属音が響いた。
橋の入口に立つ木の柱へ目を向けると、そこには鉄製の鈴が吊るされていた。
風が吹くたびに、鈴が細かく揺れている。
同時に、橋の向こうにいた風耳鹿の一頭が後ずさった。
「……あれ?」
俺は鈴と魔物を交互に見た。
もう一度風が吹き、鈴が鳴る。
すると、別の風耳鹿まで耳を伏せ、橋から少し離れた。
「ロアン、あの鈴って……」
「どうした?」
「音が鳴るたびに、あいつら下がってないか?」
ロアンも橋の柱を見た。
しばらく観察していると、再び風が吹いた。鈴が鳴るのとほぼ同時に、風耳鹿達の耳が一斉に動く。
「……確かに、そう見えるな」
「耳がいいなら、あの音が苦手なのかな?」
「可能性はある。ただ、風耳鹿が鈴を嫌うとは聞いたことがない」
偶然かもしれないし、こちらの荷馬車を警戒しているだけかもしれない。
それでも、一つ確かめてみる価値はありそうだった。
◇
「あの鈴、少しだけ鳴らないようにしてもらえませんか?」
俺が商人に尋ねると、男は露骨に嫌そうな顔をした。
「何だって?」
「橋の向こうの魔物、鈴の音を嫌がってるかもしれないんです」
「だったら好都合じゃないか。もっと鳴らして追い払えばいい」
「いや、それだと余計に動かなくなる可能性もありますよ」
男は腕を組んだ。
「俺達は日が暮れる前に荷を届けなきゃならん。魔物がいるからって、いつまでも待ってられないんだ」
言いたいことは分かる。
商売で荷物を運んでいる以上、予定が遅れれば困るだろうし、得体の知れない魔物へ近づきたくないのも当然だ。
だからといって、力ずくで追い払えば、何が起こるか分からない。
「十分だけ待ってもらえませんか?」
「十分?」
「鈴の音を止めて、あいつらがどう動くか見たいんです。それで駄目なら、また別の方法を考えます」
「そんなことで魔物がいなくなるのか?」
「正直、分かりません」
「分からんのかい!」
男が思わず声を上げた。
まあ、怒りたくなる気持ちは理解できる。
俺だって、依頼した冒険者にそんな返事をされたら不安になるだろう。
「でも、少なくとも今のところ、あいつらは襲ってきてませんよね?」
「……まあな」
「だったら、いきなり刺激するより、安全な方法から試した方がいいと思うんです」
俺は橋を指さした。
「あの群れが西へ向かっているなら、こっちへ渡りたいのかもしれません。俺達は反対方向へ行くんだから、一度道を空けて様子を見ませんか?」
商人は黙り込んだ。
しばらく考えたあと、今度はリリアへ視線を向ける。
「あんた、騎士だろ? もし襲ってきたら止められるのか?」
「人々の安全を守ることが最優先です。危険が迫れば対処しますが、まずは刺激せずに状況を確かめるべきでしょう」
リリアは落ち着いた声で答えた。
その言葉に、男も少しだけ安心したようだった。
「……分かった。十分だけだぞ」
「ありがとうございます!」
「ただし、荷馬車に傷つけるなよ!」
商人はそう念を押しながら、御者と一緒に馬を下がらせ始めた。
俺は内心で胸を撫で下ろした。
魔物と交渉する前に、人間との話し合いが必要になるとは思わなかったが、考えてみれば当たり前かもしれない。
この道は魔物だけのものでも、人間だけのものでもないのだから。
◇
まず、橋の手前にいた荷馬車を少し離れた場所へ移動させた。
馬達が驚いて暴れないよう、ノアは商人達と相談し、全員が安全な距離を取れる場所を確認している。リリアは万が一に備えて橋を見渡せる位置へ立ち、ミミナは杖を持って俺の隣へやってきた。
「ユウト、本当に鈴が原因だと思う?」
「分からない。でも、試してみないと何とも言えないだろ」
「そうだね。じゃあ、私も何か手伝うよ」
「助かる」
橋の入口まで近づくと、風耳鹿達がこちらを見た。
大きな耳が一斉に動き、何頭かが身を低くする。
俺は慌てて足を止めた。
「……近づきすぎたかな」
ロアンが隣で頷く。
「警戒しているようだな。ここから先は無理に進まない方がいい」
「そうしよう」
俺達は一度後ろへ下がった。
橋の柱に吊るされた鈴は、少し手を伸ばせば届く高さにある。そこへ布を巻けば音を止められそうだったが、問題は風耳鹿達をこれ以上驚かせずに近づけるかどうかだ。
俺が迷っていると、先ほどの商人が布切れを手にやってきた。
「俺がやる。あの鈴は橋のこっち側にあるからな」
「いいんですか?」
「十分しか待たんと言っただろう。さっさと試した方が早い」
男は少し乱暴に答えたが、足音を立てないよう気をつけながら柱へ近づいていった。
鈴を手で押さえ、布を巻きつける。
それまで細かく鳴っていた金属音が、ぴたりと止まった。
風が吹いても、今度は音がしない。
俺達はその場で動かず、橋の向こうを見守った。
最初に動いたのは、群れの中で一番大きな風耳鹿だった。
耳を立てて周囲を確かめたあと、ゆっくりと石橋へ前脚を乗せる。
「……お」
思わず声が出そうになり、慌てて口を閉じた。
風耳鹿は一歩ずつ橋を進み、やがて中央付近までやってきた。
その後ろを、別の一頭が追いかける。
どうやら、少なくとも橋を渡る気はあるらしい。
「本当に来た……」
隣でロアンが小さく呟いた。
だが、その時だった。
荷馬車の方から、ガタン、と大きな音が響いた。
どうやら車輪が道端の石に乗り上げたらしい。
風耳鹿達が一斉に顔を上げ、橋の中央にいた一頭が慌てて身を引いた。
後ろからついてきていた小さな風耳鹿とぶつかりそうになり、二頭の足がもつれる。
「危ない!」
俺が叫ぶより早く、リリアが動いていた。
彼女は橋の手前まで駆け寄ったが、そこで無理に近づくことはせず、石の手すりに片手をかけて身構えた。
小さな風耳鹿の脚が滑り、体が大きく傾く。
しかし、先頭を歩いていた大きな風耳鹿が振り返り、その体を横から支えるように押し戻した。
小さな一頭は何とか姿勢を立て直したものの、その場にしゃがみ込んでしまった。
「……よかった」
俺は大きく息を吐いた。
リリアも安堵したように肩の力を抜いている。
だが、これではまた橋を渡れなくなってしまうかもしれない。
「今の音が怖かったのかな」
俺が言うと、ミミナが荷馬車へ視線を向けた。
「車輪がきしむ音も聞こえてたよね。あれを小さくできたら、少しは落ち着くかな?」
「そんなことできるの?」
「うん。車輪の軸に付与をかけて、しばらく音が出にくいようにするくらいならできるよ」
以前のミミナなら、勢いよく魔法を使って荷馬車ごと軽くしてしまいそうだったが、今は違う。
彼女は車輪の構造を確認すると、商人へ声をかけた。
「少しだけ付与魔法を使ってもいい? 車輪の軸のきしむ音を抑えたいんだけど」
「壊したりしないだろうな?」
「大丈夫。対象も効果も、ちゃんと指定するから」
男は少し迷ったあと、頷いた。
ミミナは青い宝珠の杖を持ち直し、車輪の軸へ意識を集中させた。
淡い光が一瞬だけ金具を包み、すぐに消える。
「これでしばらくは大丈夫だと思う。念のため、荷馬車はまだ動かさないでね」
「ああ、分かった」
ミミナは自分の魔法を過信することなく、効果の範囲と持続時間を説明していた。
こういうところを見ると、本当に頼もしくなったと思う。
俺達は再び橋へ視線を戻した。
小さな風耳鹿は、まだ中央付近で身を低くしている。
すぐそばには大きな一頭が寄り添い、ほかの風耳鹿達も動かずに待っていた。
「……ロアン」
「何だ?」
「あの大きいの、小さい方が動くまで待ってるのかな」
「そう見えるな。ただ、親子かどうかまでは分からないぞ」
「うん。それはそうだな」
俺は少し考えたあと、橋の手前へ向けてゆっくり手を広げた。
意味が伝わる保証なんてない。それでも、こちらから近づくつもりはないと示すくらいならできるかもしれない。
「大丈夫だ。こっちには来てもいいからな」
風耳鹿が俺を見た。
大きな耳がゆっくり動く。
「俺達はここで待ってる。慌てなくていいから」
返事はない。
もちろん、言葉を理解したかどうかも分からない。
それでも、俺はそれ以上何もせず、ただ橋の向こうを見守った。
しばらくすると、小さな風耳鹿がゆっくり立ち上がった。
一歩進み、また立ち止まる。
大きな風耳鹿はそのすぐそばを歩き、やがて二頭は並ぶようにして橋を渡りきった。
その後ろから、残りの群れも少しずつついてくる。
誰も叫ばず、武器を振り上げることもなく、ただ静かに道を空けて待っていた。
それだけで、魔物達は橋を渡ることができた。
◇
すべての風耳鹿が橋を渡り終えると、商人達の間から安堵の声が上がった。
「……本当に渡っていったな」
最初に俺へ文句を言っていた男は、少し呆れたような顔で橋を見つめていた。
「追い払わなくても、道を空けるだけでよかったのか」
「今回は、ですけどね」
俺はそう答えた。
「たまたま上手くいっただけかもしれません。次も同じとは限らないし、危険な魔物だったら別の方法を考えないといけませんから」
「……そうだな」
男は腕を組んだまま、しばらく考えていた。
やがて布を巻いた鈴を見上げ、ぽつりと呟く。
「人間を守るために吊るした鈴が、魔物の通り道を塞いでいたのかもしれんのか」
「少なくとも、今回は音を止めてから渡り始めましたね」
「なるほどなぁ……」
男は小さく息を吐き、こちらへ向き直った。
「助かったよ。俺達だけだったら、下手に追い払おうとして騒ぎになっていたかもしれん」
「いえ、何事もなくてよかったです」
「それで、あんたらはどこへ行くんだ?」
「北東の国境です。風渡りの高原まで」
「ほう。そりゃ、また遠いところへ行くんだな」
男はロアンを見て、納得したように頷いた。
「そうか、現地の案内人がいるなら安心だな。ここから先は川沿いの道を進むといい。次の宿場まではまだ少しかかるが、道は悪くない」
「ありがとうございます」
俺が礼を言うと、男は笑った。
「礼を言うのはこっちだよ。少し長く待つことになったが、荷馬車も人も無事だったからな」
そう言って荷馬車へ戻っていった。
思っていた以上に素直な人だったらしい。
最初は怒っていたけれど、彼にも仕事があり、守りたいものがあったのだろう。
俺達と考え方が違っていただけで、別に悪い人というわけではなかった。
「ユウト」
振り返ると、リリアが微笑んでいた。
「今回も、ユウトらしい解決でしたね」
「いや、俺はほとんど何もしてないよ」
「そうでしょうか?」
「鈴に気づいただけだし、実際に音を止めてくれたのは商人さんだろ。ミミナも手伝ってくれたし、リリアだってすぐ動いてくれた」
「それで十分だと思います」
リリアは穏やかな声で答えた。
「みんなが協力できるようにしたのは、ユウトですから」
そう言われると、少し照れくさい。
実際、俺一人では鈴を止めることも、荷馬車を動かすことも、魔物が暴れた時に人を守ることもできなかった。
それでも、みんなが自分にできることを持ち寄れば、何とかなる場合もある。
今まで何度もそうしてきたし、これからもきっと同じなのだろう。
「……まあ、次も上手くいくといいけどな」
「そうですね」
リリアは小さく笑った。
その時、少し離れた場所からロアンが俺達を呼んだ。
「ユウト、ちょっと来てくれ」
「どうした?」
ロアンは橋の向こう側へ歩いていき、道端の柔らかい土を指さした。
そこには風耳鹿達のものと思われる足跡がいくつも残っていた。
「これを見てほしい」
「足跡?」
「ああ。さっきの群れが通った跡だ」
俺はしゃがみ込んで地面を確認した。
確かに、細長い蹄の跡が西へ続いている。
「それがどうかしたのか?」
「こっちだ」
ロアンが少し離れた場所を指さした。
そこにも似たような足跡が残っていたが、向きが違っていた。
どうやら、東へ向かっているらしい。
「……同じ魔物?」
「たぶんな。ただ、足跡だけでは断定できない」
「じゃあ、別の群れが反対方向へ向かった可能性もあるってことか」
「ああ」
ロアンは地面を見つめたまま、少し考え込んだ。
「俺達の高原では、魔物が季節によって移動することは珍しくない。だが、今はいつもとは違う動きが増えている」
「西へ向かう奴もいれば、東へ向かう奴もいる?」
「そういうことだ」
俺は立ち上がり、東へ続く街道へ目を向けた。
青帆鳥達は西へ飛んでいった。
今の風耳鹿達も西へ向かった。
けれど、すべての魔物が同じ方向へ動いているわけではないのかもしれない。
「……思ってたより、複雑そうだな」
「そうだな。だからこそ、調べる必要がある」
ロアンの言葉に、俺は頷いた。
魔物達が何から逃げているのか、それとも新しい土地を探しているのか。あるいは、種類ごとにまったく違う理由があるのか。
まだ何一つ、はっきりしていない。
俺達がこれから向かう土地では、こうした出来事が日常の中で起こり始めているのだろう。
今日の橋のように、人間と魔物が同じ道を使おうとして困ることも、きっと増えている。
「……よし、行こうか」
俺が声をかけると、ロアンは頷いた。
橋の向こうでは、ミミナとノアが荷物を確認している。
リリアは少し先へ進み、こちらを振り返っていた。
「ユウト、準備はできていますよ」
「ああ、今行く!」
俺達は再び歩き始めた。
川沿いの道を進むにつれ、周囲の丘は少しずつ高くなり、遠くには青い山並みが見え始めている。
ロアンによれば、あの山々を越えた先に、風渡りの高原が広がっているらしい。
まだ遠いとはいえ、少しずつ目的地へ近づいているのだと思うと、自然と足取りが軽くなった。
ところが、しばらく歩いたところで、先頭のロアンが突然足を止めた。
「……ん?」
俺達も立ち止まり、彼の視線を追った。
街道の先にある小高い丘の上で、何かがゆっくり動いていた。
一つや二つではない。
草の間を、いくつもの小さな影が横切っている。
少し離れた斜面にも、別の影が見えた。
さらに奥の丘にも。
「……ロアン」
「ああ」
彼の耳が、風の音を探るように動いた。
「あれも魔物だ」
俺は思わず息を呑んだ。
目の前に広がっていたのは、一つの群れではなかった。
大きさも形も違う魔物達が、いくつもの集団に分かれ、丘のあちこちを移動している。
争っている様子はない。
ただ、それぞれが別の場所を目指すように、黙々と進んでいた。
「……こんなにいるのかよ」
思わず口から漏れた。
青帆鳥や風耳鹿を見た時には、まだ一部の魔物だけが移動しているのだと思っていた。
だが、目の前の光景は、それだけでは説明できそうになかった。
ロアンは静かに頷いた。
「俺達の土地では、もっと多くの魔物が動いている」
「もっと?」
「ああ。これでも、まだ高原の外側だ」
俺は遠くの山並みを見つめた。
あの向こうでは、いったい何が起きているのだろう。
魔物達は何を求め、どこへ向かっているのだろうか。
考えれば考えるほど分からないことが増えていく。
それでも、不思議と怖さだけではなかった。
今まで知らなかった世界が、目の前で少しずつ広がっていくような感覚があった。
「……すごいな、この世界」
小さく呟くと、隣にいたミミナが笑った。
「何それ、急に?」
「いや、まだ知らないことが山ほどあるんだなって」
「そりゃそうでしょ。私達だって知らないことだらけだもん」
「……そうだよな」
俺は笑い返し、もう一度丘の向こうへ目を向けた。
剣で道を切り開くことはできなくても、知らない相手と向き合うことなら、俺にもできるかもしれない。
そして、この先には、まだ出会ったことのない誰かが待っている。
風が草原を駆け抜け、遠くの丘を歩く魔物達の姿が、ゆっくりと揺れて見えた。
俺達はその景色を見つめながら、新たな土地へ続く道を歩き始めた。
――74話 終
最後までお読みいただきありがとうございます!
第二章が始まり、ユウト達は風渡りの高原を目指して旅を続けています。
今回は、新しい魔物《風耳鹿》が登場しました!
魔物が道を塞いでいるからといって、必ずしも人間を襲おうとしているわけではありません。
そして、人間にも生活や仕事があり、簡単に道を譲れない事情があります。
今回はそんな小さなすれ違いを、ユウト達らしい方法で解決するお話でした。
剣も魔法も頼りないユウトですが、相手をよく観察し、人と人をつなぐ力は少しずつ成長しているのかもしれません。
そして旅の先では、さらに多くの魔物達が移動していることが分かってきました。
彼らは何を求め、どこへ向かっているのでしょうか。
次回も、新しい冒険の続きをお届けします!
面白いと思っていただけたら、ブックマーク・評価・感想で応援していただけると、とても励みになります。
引き続き、ユウト達の旅をよろしくお願いします!




