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『剣も鎧も重すぎる! ~異世界で使えるのは笑顔と口先だけでした~』  作者: -eto-
第一章《夜棘と、住処を追われた魔物たち編》

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地下の魔物の最初の言葉は「助けて」でした

「……タスケテ……」


 崩れた岩盤の奥から聞こえてきた声を前に、俺達は誰もすぐには動かなかった。


 人間とは明らかに違う低く濁った声で、喉の奥から石同士を擦り合わせるような響きがある。それでも、発している言葉だけは確かに理解できる。


「今の、やっぱり『助けて』だよね?」


 ミミナが杖を胸の前で握りながら、小声で確認する。


「俺にもそう聞こえた。ただ、聞こえたからって飛び込むのはさすがに怖い」


「その判断は正しいです」


 リリアが俺達を守れる位置へ移動し、剣を構えたまま暗い穴を見つめる。


 黒い服の人物も短剣を抜いていた。


「あの声を信用するな」


「中にいるものを知ってるのか?」


「姿までは確認していない。ただ、この下に大型の魔物がいることは把握していた」


「言葉を話せるのも知ってた?」


「いや。初めて聞いた」


「だったら、罠だって決めるのも早い気がするな」


「だからといって、近づいていい理由にもならない」


「まあ、そこは同意する」


 相手の言うことはもっともだった。


 俺はリリアより前へ出ない位置から穴の奥を覗き込む。ランタンの光は途中までしか届かず、何がいるのかまでは見えない。


 ただ、胸の奥では《縁》がごく弱く反応していた。


 グランドボアやフォレストウルフ、礼拝堂のゴブリン達と向き合った時にも感じたものに近いが、それだけで安全だと判断するつもりはない。


「ここから声だけかけてみるか」


 俺が言うと、リリアが横目でこちらを見る。


「穴の中へ降りるとは言いませんよね?」


「さすがにそこまで命知らずじゃないよ」


「ユウトの場合、誰かが困っていると急に信用できなくなるので確認しました」


「あれ?信用ってなんだっけ?」


「日頃の行動の結果です」


「……はい」


 ミミナが小さく笑った。


 俺は姿勢を低くし、穴の奥へ声を張る。


「聞こえるか?」


 すぐには返事がなかった。


 やがて岩の向こうで、何か大きなものがゆっくり動く音がした。


「キコエル……」


「本当に会話できるのか」


「ユウト、少し嬉しそうですね」


 ノアがこちらを見る。


「そりゃ会話できるなら、いきなり斬り合うよりずっといいだろ」


「だからといって油断は禁止です」


「分かってるよ」


 俺は暗闇へもう一度問いかける。


「どこが痛い? できる範囲で教えてくれ」


「クロイ……ササル……イタイ……」


「黒いものが刺さってる?」


「クロイ……イッパイ……」


 ノアの表情が変わった。


「《夜棘》の可能性があります」


「地下にも生えてるってことか?」


「ここまで根が伸びている以上、十分に考えられます。ただ、地表から地下へ伸びたのか、地下から地表へ広がったのかまでは判断できません」


 黒い服の人物が険しい顔になる。


「俺は、地上側から内部へ侵食していると思っていた」


「もし逆だったら、話がかなり変わるな」


「はい。地下そのものに発生源がある可能性も出てきます」


 ノアは慎重に言葉を選んでいる。


 誰かが《夜棘》を地上へ置いて回っているという可能性と、地下から異常繁殖している可能性は、同時に存在するかもしれない。


 まだ答えを一つに絞る段階ではなかった。


「少しだけ姿を見せられるか? 無理ならそのままでいい」


 俺が声をかけると、リリアがすぐこちらを見る。


「ユウト」


「分かってる。距離は取るよ」


「何かあれば、すぐ私の後ろへ」


「その時は遠慮なくお願いします、リリアさん」


「こういう時だけ敬語にしないでください」


「命がかかってる時は丁寧になるんだよ!」


 返事を待っていると、穴の奥から重い呼吸音が響き始めた。


 やがて暗闇の中に二つの大きな瞳が浮かび、その下から巨大な頭部がゆっくり姿を現す。


「……思ってた三倍くらいでかいな」


 頭だけでも俺の上半身ほどあり、黒灰色の硬そうな鱗が全身を覆っている。頭から首にかけては鉱石のような結晶がいくつも突き出しており、見た目だけなら今まで遭遇した魔物の中でも間違いなく上位に入る怖さだった。


「《鉱殻獣(こうかくじゅう)》です」


 リリアが低い声で告げる。


「知ってる魔物なんだな。強さの方は、できれば聞きたくないんだけど」


「非常に強いです」


「聞いてないのに教えてくれてありがとう!」


「重要な情報ですから」


「親切が刺さる……」


 ミミナが笑いそうになりながら口元を押さえている。


「《鉱殻獣》は地中の鉱石や魔石を食べて暮らす大型魔物です。基本的には人里を避け、深い山や地下で生活します」


「こいつが地上へ逃げようとしてたら、周辺の魔物が移動してる話ともつながりそうだな」


「まだ決めつけるのは早いですが、確認する価値はあります」


 リリアらしい返答だった。


 鉱殻獣は俺達へ襲いかかるどころか、穴から少し体を出そうとしたところで苦しそうに動きを止めた。


「背中を見てください」


 ノアに促され、俺はランタンを少し上へ向ける。


 鉱殻獣の体から生えている結晶の間には、何本もの黒紫色の《夜棘》が深く食い込んでいた。


「うわ……あれは痛そうだな」


「かなり深く刺さっています」


 ノアの声からも軽さが消える。


「治せそうか?」


「《夜棘》を取り除ければ、毒の影響は軽減できると思います。ただし、この大きさですから、人間一人を治療する時とは必要な魔力量がまるで違います」


「料金はどうなる?」


 ノアがゆっくり俺を見る。


「ユウト」


「はい」


「今、そこが気になりますか?」


「いつものノアなら先に言うかなって……」


「緊急時は治療が先です」


「安心した。ちゃんと神官だった」


「どういう意味です?」


「ノアさん、笑顔が怖いです」


「ツッコミ敬語で逃げないでください」


 どうやら失敗したらしい。


「それより、近づく方法を考えましょう」


 リリアが話を戻す。


「あの体格では、攻撃する意思がなくても少し暴れただけで危険です」


「本人に確認するしかないな」


 俺は鉱殻獣へ向き直る。


「俺達、その黒い棘を取れるかもしれない。でも近づいた時に、怖くなって暴れたりしないか?」


「オソワナイ……ガンバル……」


「頑張るって言ってる」


「言葉だけで完全に信用はできません」


 リリアが鉱殻獣の動きを慎重に観察する。


「ただ、こちらを威嚇する様子もありませんし、動こうとするたびに強く痛んでいるのは確かなようです」


「じゃあ?」


「私が最も近い位置で警戒します。少しでも危険だと思えば、治療は中止してください」


「ありがとう、リリア」


「礼は終わってからで構いません」


 こういうところが、本当に頼りになる。


「ノアは《夜棘》を抜いた直後の浄化を頼む」


「任せてください」


「ミミナは、こいつが少し動きやすくなるようにできそうか?」


 以前ならすぐ魔法を使おうとしていたミミナが、鉱殻獣の体格を見ながらきちんと考え込んだ。


「体重を軽くするのが一番分かりやすいと思う。ただ、体が大きいから最初は一割くらいにして、一分だけ試した方が安全かな」


 俺は思わずミミナの顔を見る。


「何?」


「いや、本当に成長したなと思って」


「またそれ?」


「だって前なら『軽くすればいいよ!』で終わってたじゃん」


「私だって反省するし、ちゃんと覚えるもん!」


「偉い」


「子供扱いしないで!」


「でも今のは本当に頼もしかったぞ」


 ミミナは少しだけ黙り、顔を逸らした。


「……それなら、もっと早くそう言ってよ」


「照れるなって」


「もう魔法やらないよ?」


「ごめんなさい!」


 ノアが小さく笑い、リリアまで口元を緩めた。


 その空気のおかげで、鉱殻獣の目の前にいるという異常な状況でも少しだけ肩の力が抜ける。


「一割で頼む。ただ、こいつが嫌がったらすぐ解除してくれ」


「了解!」


 ミミナの杖から淡い光が広がり、鉱殻獣の巨体を包んだ。


 重そうに地面へ沈んでいた体がわずかに浮き、鉱殻獣が驚いたように目を大きくする。


「ラク……」


「効いてるみたいだな」


 俺は三人へ意識を向け、《複数縁結合》の感覚を確かめる。


「リリア、最初は右側の浅い棘から頼む。ノアは抜けた直後に《浄化》を入れてくれ」


「承知しました」


「準備できています」


 リリアがゆっくり鉱殻獣へ近づく。


 巨大な瞳がその姿を追うものの、攻撃する様子はない。


「痛かったら急に動かず、先に声を出してくれ。できる?」


「ガンバル……」


「なんか、見た目より素直だな」


「あの大きさを前にして、よくそんな感想が出ますね」


 リリアが呆れながらも、《夜棘》の根元だけを正確に切り離した。


 ノアの《浄化》がすぐに重なり、黒く濁っていた部分が少しずつ薄れていく。


「ミミナ、軽減は今のままで大丈夫。ノアは次だけ少し強めで」


「はい」


「リリア、次の一本は深いから急がなくていい。鉱殻獣も、少しだけ我慢してくれ」


「ガンバル……!」


「いい返事だ」


 三人の動きが以前より自然につながっていく。


 俺自身は鉱殻獣へ触れることすらできないが、今誰に余裕があって、どこへ負担が集まっているのかは少しずつ分かるようになってきた。


 最後の《夜棘》を取り除くと、鉱殻獣は長く大きな息を吐いた。


「イタク……ナイ」


「よかった」


 ノアも安心したように表情を緩める。


「毒の影響はかなり軽減できました。ただし完全に回復したわけではありませんから、しばらく無理はしない方がいいですね」


 その言葉が通じたかは分からないが、鉱殻獣はゆっくり体を起こそうとした。


 巨体がわずかに動いただけで地面が揺れ、俺は反射的に一歩下がる。


「ちょ、待て待て! どこ行くんだ?」


「ウエ……ニゲル」


「地上へ逃げたいのか?」


「シタ、コワイ。クロイ、フエル」


 鉱殻獣は地下へ戻ることを明らかに恐れていた。


 リリアが険しい表情でその巨体を見る。


「このまま街道側へ出れば、人間と遭遇する可能性があります」


 黒い服の人物も頷いた。


「この大きさの《鉱殻獣》が街道へ出れば、事情を知らない冒険者はまず討伐対象として見るだろう」


「地下へ戻すのも無理そうだな」


 俺が鉱殻獣を見ると、大きな瞳が不安そうに揺れた。


「イヤ……シタ、イタイ」


 地下へ戻せば、また《夜棘》のある場所へ追い返すことになる。


 だからといって人間の生活圏へ出せば、今度は別の争いが始まる。


 なら、どちらでもない道を探すしかない。


「この鉱山、人の街道とは違う方向へ抜けられる出口ってないのか?」


 俺が黒い服の人物へ聞くと、相手は少し考えた。


「東側に古い排気坑がある。ただし、数年前の崩落で塞がれているはずだ」


「その先はどこへ出る?」


「山の東斜面だ。人の街道とは反対方向になる」


「だったら、そこを開ければいい」


「簡単に言うな。崩落していると言っただろう」


 俺は三人を見る。


「でも、こっちには妙なところだけ万能な三人がいるからな」


「妙なところだけ?」


 ミミナが不満そうに眉を上げる。


「褒めてるって」


「今のは絶対褒めてないよね?」


「八割くらい褒めてる」


「残り二割は?」


「気にするな」


          ◇


 黒い服の人物に案内され、俺達は東側に残る古い排気坑へ向かった。


 到着すると、言われた通り通路は大量の岩で完全に塞がれている。


「これ、全部どかすの?」


 ミミナが崩れた岩を見上げる。


「全部一気には無理だろうな。というか、一気にやったらまた崩れそうだ」


「私もそう思う」


 ミミナが先に答えたので、俺は少し驚いた。


「何?」


「いや、ちゃんと危険を先に考えたなって」


「今日何回成長したって言うつもり!?」


「嬉しいんだよ」


「そういう言い方はずるい!」


 ミミナは少し頬を赤くしながら、崩れた岩へ向き直った。


「手前の大きい岩だけ二割くらい軽くして、三十秒ずつ動かすなら安全だと思う」


「リリア、それならいけそう?」


「問題ありません。周囲を崩さないよう、少しずつ動かします」


「ノアは《夜棘》や毒の反応がないか見てくれ」


「了解しました。ユウトは?」


「俺はみんなが変なことしないか見てる」


「ミミナさん対策ですね」


「ノア!?」


「否定できますか?」


 笑顔が怖い。


「……できない」


「今日は素直だな」


「みんなに成長したって言われたいもん!」


 こうして役割が決まり、ミミナが岩を軽くし、リリアが慎重に横へ動かしていく。


 一つ、二つと岩を取り除くたび、奥から冷たい外気が少しずつ流れ込んできた。


「外につながってる!」


 ミミナの声が弾む。


「あと少しですね」


 リリアが最後に残った大岩へ手を伸ばしたところで、ノアが鋭く声をかけた。


「待ってください。その岩の裏側に何かあります」


「何か見つけたのか?」


 俺達が近づきすぎない距離から確認すると、岩の隙間から太い黒紫色の根が何本も伸びていた。


「これも《夜棘》なのか?」


「非常によく似ていますが、これまで見てきたものより明らかに太いですね」


 ノアが慎重に観察する。


「しかも、根の向きがおかしいです。鉱山の奥へ伸びているのではなく、さらに地下へ続いています」


 俺達は自然と顔を見合わせた。


「つまり、この下にもっと大きな何かがあるってことか?」


「可能性は高いと思います」


 黒い服の人物が根を見た瞬間、明らかに表情を変えた。


「おかしい」


「何がそんなに変なんだ?」


「三日前にここを確認した時には、こんな根はなかった」


「三日で、こんなに?」


 ミミナの声からも明るさが消える。


「成長速度が異常です」


 ノアが低い声で続ける。


「《夜棘》そのものが変質している可能性も考えた方がよさそうですね」


 その時、後ろにいた鉱殻獣が低く唸った。


「クロイ……シタ」


 俺が振り返る。


「この根と同じものを、地下で見たのか?」


「オナジ……モット、オオキイ」


「これより大きい?」


 鉱殻獣は何度も頷く。


「シタ……ネ、オオキイ」


 地下には、目の前の根よりさらに巨大なものがあるらしい。


 もしそれが魔力の異常や魔物達の移動に関わっているのなら、俺達が考えていたより問題はずっと深い。


「まずは出口を開けよう」


 俺は三人へ顔を向けた。


「ここで勢いだけで地下まで調べるのは危なすぎる。一度リベルタへ戻って、分かったことを整理した方がいい」


「私も賛成です」


 リリアが頷く。


「これ以上は調査というより、未知の危険へ踏み込むことになります。必要なら増援を求めるべきでしょう」


「珍しくユウトが安全側の判断ですね」


 ノアが言う。


「ノアさん、俺を何だと思ってるんですか?」


「誰かが困っていると危険度の計算を忘れる人です」


 「くっ!」


 全く。コイツらは俺をなんだと思ってるんだ。


 最後の大岩を慎重に動かすと、山の東斜面へ続く細い出口が開いた。


 鉱殻獣はしばらく俺達を見ていたが、やがてゆっくりと出口へ向かっていく。


「人間の道には行かないでくれよ。向こうの山側へ行けば、たぶん余計な争いにはならない」


「ヒト、イカナイ」


「約束だぞ」


「ヤクソク」


 巨大な体が外へ出る直前、胸の奥にわずかな温かさが広がった。


『《縁 -enishi-》――接続対象を確認』


 視界へ文字が浮かんだものの、光は完全につながる前に静かに消えていく。


 一度助けただけで、すぐに深い信頼関係ができるわけではない。


 むしろ、それくらいの方が《縁》という名前には合っている気がした。


 鉱殻獣が山の奥へ姿を消すと、黒い服の人物が俺へ顔を向けた。


「お前、魔物を相手にいつもこんなことをしているのか?」


「いつもってほどじゃないけど」


「本当ですか?」


 リリアがすぐ横から確認してくる。


「なんでリリアまで疑うんだよ」


「グランドボア、フォレストウルフ、ゴブリン、そして今の鉱殻獣ですね」


 ノアが淡々と数える。


「……思ってたより多いな」


「ほぼ毎回じゃん!」


 ミミナが笑う。


「いや、俺だって好きで魔物と話してるわけじゃないからな!?」


 黒い服の人物が小さく息を吐いた。


「変な冒険者だ」


「その評価、今後何回くらい聞くことになるんだろうな」


「かなり多いと思います」


 リリアが真顔で答えた。


「はぁ…」


 黒い服の人物の口元が、ほんの少しだけ緩んだように見えた。


「そういえば、まだ名前を聞いてなかったな」


 俺が尋ねると、相手は少しだけ迷った。


 それでも、やがて静かに口を開く。


「セイルだ」


「セイルか。俺は――」


「ユウトだろう。何度も聞いた」


「そういえば、みんな俺の名前呼びすぎだな」


「主に注意されていましたからね」


 ノアの一言に、ミミナがまた笑う。


「セイルは何をしてる人なんだ?」


「魔力異常を追っている。それ以上は、まだ話せない」


「名前を教えてもらったのに、怪しさはほとんど減らないな」


「信用してもらうつもりはない」


「じゃあ一つだけ。少なくとも、今の俺達とは敵じゃないんだよな?」


 セイルはすぐには答えず、少しだけ目を細めた。


「今のところはな」


「安心させる気、全然ないだろ」


「嘘を言うよりマシだ」


「まあ、それはそうか……」


 最初に会った時よりは、ほんの少しだけ相手の輪郭が見えてきた気がする。


 俺がもう一つ質問しようとしたところで、セイルが突然足元へ視線を落とした。


「待て」


「今度は何か見つけたのか?」


 排気坑を塞いでいた岩の下から、小さな黒い金属片が覗いている。


 セイルがしゃがみ込み、それを拾い上げた。


 指先ほどの大きさしかない徽章(きしょう)で、中央には見覚えのない紋章が刻まれていた。


「その反応、見覚えがあるみたいだな」


 俺が尋ねると、セイルはすぐには答えなかった。


 ただ、徽章を握る指へ明らかに力が入っている。


「……ありえない」


「何がそんなにおかしいんだ?」


「この紋章を持つ者が、ここにいるはずがない」


 声の調子が、それまでとは明らかに違った。


「誰の紋章なんだ?」


 俺がさらに聞こうとした、その時だった。


 鉱山の深部から、地面を這うような低い振動が伝わってくる。


 セイルは地下へ視線を向けたあと、黒い徽章を強く握りしめた。


「もし本当にこいつらが関わっているなら、問題は《夜棘》だけでは済まない」


 その言葉を聞いた瞬間、ようやく本当のスタート地点に辿り着いただけなのかもしれないと感じた。


          ――第十六話 終

最後までお読みいただきありがとうございます!


地下から現れたのは、《夜棘》に傷つけられた大型魔物《鉱殻獣》でした。


ユウト達は討伐するのではなく、治療し、人間の街道とは別の出口を作ることで鉱殻獣を山へ逃がすことに成功します。


ミミナも自分で付与の強さや時間を考えられるようになり、4人の連携も少しずつ形になってきました。


そして、これまで「黒い服の人物」と呼ばれていた男の名前はセイルと判明。


しかし、旧鉱山で発見された謎の徽章を見たセイルは、


「問題は《夜棘》だけでは済まない」


と告げます。


この紋章を持つ者達は何者なのか。

地下では一体何が起きているのか。


旧鉱山の謎は、さらに深い場所へつながっていきます。


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― 新着の感想 ―
鉱殻獣…また会いそうですね…巨体で恐ろしい姿かもですが、主人公達とのやり取りは可愛かったので、シェルとかシェリーとか名前を付けて呼んであげたいですね。
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