↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/25

第七話 現場入り

 こんにちは。作者の「野生の書生」です。


 本作は無断転載をテーマとしていますが、無断転載を擁護・許可するものではありません。

 作者も異世界を含めて無断転載を行ったことはありません。


 この物語はフィクションです。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。

 翌日、俺はアランと一緒に侯爵邸を訪れていた。

 騎士団立会いの下で、実際の現場を見て調査をするためだ。


    ◇


 ——ここに来る前、ヴィトと会って浮上した”段ボール箱”のくだりをアランに話した。

 アランはヴィトの研究も、俺が異世界からきたことも知っているから、特に驚きもせずにその話を受け入れてくれた。


 「たしかに。現場にはそんな奇妙な箱があったなんて話はなかったからね。」

 アランはそう言っていた。


 ヴィトが犯人でないとすると、屋敷の関係者の誰かが真犯人かと思っていたが、もしかするともっと大きな陰謀が背後にあるのかもしれない。

 

 アランもなにか思うところがあるのか、あごに手を当ててしばらく何か考えているようだったが、結局具体的な推理は口にせず、侯爵邸に向けて出発していた。


    ◇


 侯爵邸に着くと、俺たちは早速事件現場である寝室から調査を始めた。


 この世界では指紋やDNA鑑定はないが、今回の事件ではヴィトも寝室に入ったことは認めているから問題にはならない。


 それに代わって、残留魔力鑑定(人がいた場所に残る、その人特有の魔力の波長を調べるもの)が行われたらしいが、発見されたのは侯爵本人と、ヴィトと使用人A<アリス>、使用人B<シーナ>の四人分だった。


 この部屋は外部からの魔力を遮断する造りになっているから、物理的にこの部屋に入ったのはこの四人と見て間違いない。


 部屋の備品も死体発見時の状態にしてあった。


 よく刑事ドラマでは現場保全は非常にデリケートに行われていたが、俺はここに入っていろんなものを手にして大丈夫なのか?


 俺はそんな不安を覚えながら、現場の扱いには慣れているようであるアランに従って、部屋の中を調べ始めた。


    ◇


 寝室は十畳ほどの広さがあり、壁際にベッドがあり、真向かいの壁には細長い机が置かれていた。


 ——俺の世界のビジネスホテルの部屋みたいな造りだな、というのが最初の印象だった。


 ただし、置いてある家具や備品の高級感ゆえか、気軽に立ち入ることを許されない荘厳さを部屋全体が纏っていた。


 机に向かって左側に採光用の大きな窓があり、その下には机より若干背の高い本棚が置かれていた。


 この世界の住人らしく、アルフレッド侯爵も読書家だったのだろう。

 本棚には大小さまざまな本が置いてあった。


 侯爵が倒れていた場所は白い線が引かれ、よく見る「事件現場」の光景となっていた。


 侯爵はやはり、灰皿から煙が出ているのを見つけて、あわてて花瓶の水をかけて火を消したものの、それがトリガーとなって、毒を含んだ水蒸気を吸ってしまったようである。


 それを裏付けるように、侯爵は机の側で倒れており、右手近くには息絶える寸前まで持っていたのであろうガラスの花瓶が転がっていて、花が散らばっていた。


 透明で、ゆがみのない完璧な球形で成形された花瓶は俺の世界では100円で買えるレベルだが、この世界では高級品なのだろう。

 ヒビが入った花瓶を見て騎士団の人たちは「もったいない」という顔をしていた。


 ”じゃあ、俺が100円で仕入れたものをこっちに持ち込めば大金持ちになれるんじゃね?”


 ——俺は無断転載で懲りたはずなのに頭の片隅でそんなことを考えていた。


   ◇


 次に、この寝室の中で隠れられそうな場所を俺は物色し始めた。


 まずはベッドの下だが、ここなら息を殺して数時間くらいなら、隠れることはできそうだった。


 次にクローゼットの中だが、ここなら大人の一人や二人隠れることはできるだろう。

 だが、万一侯爵がここを開けることがあれば一発でバレる。

 ——ここはないな。


 あとは、天井裏や隠し通路だけど、ファンタジーでおなじみのギミックはこの部屋にはなさそうだった。


   ◇


 次に、この部屋が魔力を通さないかどうかの確認だ。


 俺は騎士団の中から魔法が使える人に協力を依頼して実験してみた。


 初めに、寝室のドアの前から中に向けて、火魔法は危ないので水魔法を使えるか試してもらった。


 結果はドアの素材に魔力が遮断されて、部屋の内側に水を生成することはできなかった。


 次に隣接する部屋からも試してもらったが、結果は同じだった。


 最後に、庭から窓越しに魔法を使えるか試してもらったが、冷たいコップを置いた後にできるような水たまりができただけだった。


 これでは、強力な火魔法を用いたとしても、机の上の灰皿まで、その火を届けることは不可能だった。


 ——やはり、この部屋は物理的にも魔法的にも、密室だったということらしい。


    ◇


 次に、屋敷の関係者への聞き込みも行ってみた。


 使用人A<アリス>も使用人B<シーナ>も、資料で読んだ内容と同じことをいうだけだった。


 段ボール箱についても聞いてみたが、確かに不思議な箱が置いてあったのは知っているが、死体発見時にそれがどこに行ったかは考えたこともなかった、ということだった。


    ◇


 日没の空気が漂い始めたころ、俺たちは侯爵邸を後にしていた。


 俺は結局、現場まで足を運んでみたものの、調査資料以上の成果は得ることができなかった。

 そのことに俺は少し気を落としていたが、アランは特に気にも留めていない様子であった。



 「もし、時間があるようだったらヴィト君のところにも報告に行ってくれないかね。」 

 アランは俺にそう言ってきた。


 「でも、報告できるような成果は何も.........。」


 「いいんだよ。彼も退屈しているだろうからね。本の一冊でも差し入れに持っていくといい。」


 アランはそういうと、なにか意味ありげな笑顔を俺に向けてきていた。


 第八話は2026年10月21日21時10分公開予定です。


 この作品が面白いと思っていただけた方は是非、無断転載ではなく高評価・感想・ブックマーク等で応援していただけたらと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。