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第六話 面会

 こんにちは。作者の「野生の書生」です。


 本作は無断転載をテーマとしていますが、無断転載を擁護・許可するものではありません。

 作者も異世界を含めて無断転載を行ったことはありません。


 この物語はフィクションです。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。

 アランの事務所で一通りの資料を読んだ俺は、夕方遅くに騎士団の事務所を訪れていた。

 騎士団に出頭して拘束されたヴィトと面会するためである。

 ヴィトの弁護人助手ということで、一度は手配された身ではあるが、面会室に通してもらうことができた。


 そもそも、なぜヴィトは手配された当初、素直に連行されずに逃亡したのかというと、ヴィトは自分の研究が国から目をつけられていたこともあり、ここで拘束されれば研究成果もすべて押収される不安があったからだという。

 で、その研究成果にかかる資料は、今は現世の——俺のアパートの一階の部屋に置いてあるというわけだ。


 まあ、俺の世界で転移魔法の研究をした資料が見つかっても、中二病か何かと思われるだけだろう。


 俺は面会室でヴィトを待っている間、そんなことを考えていた。


 ほどなくして、立ち合いの刑務官に連れられて、ヴィトが面会室に入ってきた。


    ◇


 「で、どうだった。」

 ヴィトは俺に向かって聞いてきた。


 「今のところは何も。」

 俺はありのままの答えを返していた。


 あれからいろいろな資料にも目を通してみたが、転移魔法というジョーカーがあれば、誰だってヴィトを疑いたくなる状況という以外になかった。


 ヴィトは初めからそこまで期待していなかったのだろう、さして落胆した様子もなく俺の方を見ていた。


 「屋敷の人間の聴取記録は読んだか?」

 ヴィトが俺に聞いてきた。


 この世界では弁護人が決まると、捜査資料は騎士団・弁護人の相互間でオープンに共有されるらしく、騎士団がもつ事件に関する資料にもアクセスすることができた。


 屋敷の人たちの証言に大きな矛盾点はなく、時系列で出来事を並べるとこんな感じだ。


   ◆


1 10月6日(事件発生前日)午後3時


 ヴィトがアルフレッド侯爵邸に訪問した。

 どうやら転移魔法の研究の進捗と今後の方針についてを執務室で話しているようだったが、その場には二人しかいなかったため具体的なやり取りは不明。

 ただ、一度お茶を出しに来た使用人A<アリス>曰く、なにやら穏やかではない雰囲気だったそうだ。


 アルフレッド侯爵は、何やら寝室で保管していた本について話しているらしく、ヴィトと二人で一度寝室に行ったそうだ。

 その後、ヴィトは午後5時過ぎに侯爵邸を後にしたが、ヴィトのその後についてはアリバイを証明するものはいなかった。



2 同日午後7時


 アルフレッド侯爵が夕食をとる間、使用人B<シーナ>が寝室に着替えを置くために入室した。

 その際、部屋には特に異常はなかったそうだ。

 ただし使用人B<シーナ>もベッドの下まで調べたわけではないから、寝室に誰も潜んでいなかったとは断言できないと言っていた。

 机の上の灰皿については、中身があれば回収しているはずだから空だったと思う、とのことだった。


3 同日午後9時

 アルフレッド侯爵が就寝するため、寝室に入った。

 その後、使用人A<アリス>が就寝前の薬と水を届けに部屋に入ったが、その際も特に異常はなかったとのことだ。

 使用人A<アリス>は午後10時以降に他の使用人や執事とも顔合わせをしていることから、寝室に隠れていたことはなさそうだった。

 机の上の灰皿については、薬を届けたときにはすでに部屋の明かりは消されていて、ベッド横の読書灯だけがつけられている状態だったため、詳細は不明とのことだった。


   ◆


 俺はヴィトの証言に関する記録も読んでいた。


 だが、本人の口から確認しておきたいと思い、俺はこの場を借りていくつか質問させてもらうことにした。


 「アルフレッド侯爵と何があったのか、一応もう一度聞かせてくれないか?」


 「あの日、俺は自分の転移魔法が、ほぼ確実にお前の世界と行き来できるレベルにまで完成したことを伝えに言ったんだ。..........ところが、これまで金銭面で応援してくれていたアルフレッド侯爵は突然研究をやめるように言ってきたんだ。それで、言い争いみたいになっちまったんだ。」

 

 ヴィトは少々決まりが悪そうな口調で言っていた。


 ——これは、記録にある通りだ。


 「アルフレッド侯爵はなんで研究をやめるように言ってきたんだ?」

 俺は続けて聞いた。


 「わからない。俺が理由を聞くと、アルフレッド侯爵は俺を寝室に案内した。そこで驚いたんだが、寝室にはお前の世界の”段ボール箱”とかいうものが置いてあった。」


 突然出てきたなじみのある言葉に俺も驚いた。

 この世界には”段ボール箱”は存在しないはずだ。


 「侯爵閣下は俺に、『中身を見せることはできないが、これが私が君に研究をやめるように言う理由だ。あちらの世界に行くことができた君なら、この箱の存在が意味することは分かるだろう?』と言ってきた。」

 ヴィトはそう続けていた。


 俺は事件の真相とは異なるベクトルの疑問に頭を占領されていた。


 アルフレッド侯爵が段ボール箱を持っていたということは、ヴィト以外にもこの世界と俺の世界を行き来した人間が存在するということだ。

 その時の出来事が、この国が転移魔法の研究をタブー視する理由とつながっているのかもしれない。


 「アルフレッド侯爵の段ボール箱は今どこにあるんだ?」

 俺は当初聞こうと思っていた質問にはなかった問いをヴィトにぶつけていた。


 「分からない。少なくとも俺が寝室を出た時には、段ボール箱はベッドの横に置いてあった。現場には段ボール箱はなかったのか?」


 事件の現場を記録した資料に”段ボール箱”を連想させるものはなかった。

 となると、アルフレッド侯爵が生前保管場所を移したか、もしくは——。


 「真犯人が持ち去った?」


 俺とヴィトは顔を見合わせて、そうつぶやいた。


 第七話は2026年10月20日21時10分公開予定です。


 この作品が面白いと思っていただけた方は是非、無断転載ではなく高評価・感想・ブックマーク等で応援していただけたらと思います。

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