第三話 虚構の栄光
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
本作は無断転載をテーマとしていますが、無断転載を擁護・許可するものではありません。
作者も異世界を含めて無断転載を行ったことはありません。
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
三日後、俺は瞬く間に”売れっ子小説家”の地位を獲得していた。
街を行く人々の魔導書籍にはほぼ例外なく、「俺の」小説がダウンロードされていた。
市場に出した本も、次々と売れていき、時にはコレクター品としてサインを求められることもあった。
俺は生まれて初めて、作家としての栄光の舞台に上がった気分を味わっていた。
——もっとも、この舞台は他人様のフィクションに支えられた、二重の意味で”虚構”なわけだが。
そのことに良心を痛めつつも、現実問題としてあと数日で野宿をせざるを得なかったこともあり、「仕方がないことだ。」と自分に言い聞かせていた。
だが、無断転載した”野ざらしの猫車”先生の作品は飛ぶように売れているのだが、自分のオリジナル作品はほとんど変化がないのが不思議だった。
あわよくばこれが起爆剤になって自分の作品も、と思っていたのに俺はまたしても現実を突きつけられた格好だった。
とりあえずはギルドに納める分を除いても、俺の手元には再び当面の生活資金が残った。
これで、創作活動を続けることができる。
いつかは、本当に俺のオリジナル作品でこの栄光の舞台にもう一度上がって見せる。
俺は心の中でそう誓い、自分の行いを正当化していた。
◇
「ちょっといいかね。」
市場で本を売っていた時に、数人の男から声を掛けられた。
「いらっしゃい!」
俺は声を弾ませて、「俺の」小説を求めにきたお客様を歓迎した。
——だが、男の手にはすでに俺の小説が握られていた。
<もしかして、サインを求めに来てくれたのか?>
そんなことを考えて、俺は飛び切りの笑顔をもって彼らを迎えていた。
が、来店した男たちの反応は冷淡だった。
「この本を執筆したのは、君かね?」
男は俺の本を片手で掲げて聞いてきた。
「はい......。そうですが。」
俺の目は若干泳いでいた。
「聞きたいことがある。騎士団事務所まで来てもらおうか。」
そう言うと、男たちは俺の腕をつかもうとしてきた。
「ちょっと......!なんなんですか、一体!」
俺は、自分にやましいことがあるため、本気で抵抗することができなかった。
周囲の人々が、なんだなんだと好奇の目を向けてくる中、俺は連行されそうになっていた。
——その瞬間だった。
突如として、俺の前に何かが飛んできて地面に落ちた。
それは大量の煙を発して俺たちの視界を覆い隠していた。
「うわっ!なんだこれ..........。」
俺を連行しようとしていた男たちが、一様にむせ返りながら立ち往生している。
俺も訳が分からないまま立ち尽くしていたら、煙の中で突然誰かに手を握られた。
その人物は何も言わぬまま走り出して、俺を煙の中から連れ出していた。
——なんだ。
まさか、俺の異世界転移の物語についにヒロインが登場したのか!?
走り出した俺は、頭の片隅で自分の手を握りながら走る人物に、そんな幻想を抱いていた。
だが、煙幕の中を完全に抜けて視界が戻るとその幻想は一瞬で打ち砕かれた。
俺の手を握って走っていたのは俺より若干年上の、体格のいい男だった。
とはいえ、危なそうなところを助けてくれたわけだから無下にするのもどうかと思い、そのままついて行くことにした。
◇
市場を離れて、表通りからも外れたところで、さらに一本路地裏に入る。
俺は、その路地裏で、俺をここまで連れ出してきた男と向き合っていた。
<あーあ。これが、アニメなら美少女が登場するはずなのに。>
俺は前後の状況も忘れて、おめでたくもそんなことを考えていた。
目前の男は、俺の鼻先に本を突きつけてきた。
「これを書いたのはお前か?」
「はい。そうですが.......。」
つい先ほども、同じようなことを聞かれたが、俺は本当のことを言うわけにもいかず、そう返した。
すると、男は俺のことを睨みつけ、怒りを押し殺した声で続けた。
「お前............。俺の小説をパクりやがったな!?」
俺は心臓が口から飛び出るような感覚を味わった。
俺はおそるおそる、男の方に顔を向けた。
その男の顔は、自分の作品が無断で模倣されたことに対する憤怒の色で染まっていた。
第四話は2026年10月18日11時40分公開予定です。
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